天日坊 | フーテンひぐらし

フーテンひぐらし

永遠の放課後。文化祭前夜のテンションで生きたい。なかなか大人になれない。



きのう、お誘い頂いて行ってきましたよ



広野ゆうなのフーテンひぐらし-天日坊


コクーン歌舞伎「天日坊」@シアターコクーン


とどまることなく進化を続けるシアターコクーンの看板公演、コクーン歌舞伎。
その第十三弾として2012年、2月に六代目を襲名した新・中村勘九郎が
タイトルロールを勤める「天日坊」を上演します。


原作は嘉永七年(1854年)に河竹黙阿弥によって書かれた「五十三次天日坊」。
なんと慶應三年(1867年)以来、実に145年ぶり!の上演本作を、もうひとりの
“カンクロウ”、人気脚本家・演出家・俳優である宮藤官九郎が新たに脚本化します。


ふとしたきっかけから将軍頼朝の落胤になりすまし鎌倉を目指す法策
(後に天日坊)。旅の途中で盗賊地雷太郎とその妻お六と出会い、
思いもよらぬ自分の運命を知る。思い描いた未来が夢なのか、
この現実が夢なのか・・・。(BunkamuraのHPより)




正統派歌舞伎が好きな母に声をかけたら
クドカンと聞いただけで「私はいいわ」と断られ(笑)
チケ取りもしなかったところにお誘いいただいたので
一も二もなく「行く!」と。



現在の勘三郎が始めたコクーン歌舞伎は、現代劇の要素も
かなり取り入れた見やすく斬新なものだと聞いてました。
今回はメインキャストが中村勘九郎、中村七之助、中村獅童と若い!
そしてクドカン脚本だし!というこでわくわくして出かけました。



のっけからいわゆる歌舞伎のセリフ回しだったので
「あれ、意外と正統派だね」と思ったのもつかの間、
あっという間にクドカンワールドなセリフが続出。
場内爆笑でした。


主人公(勘九郎)が「まじかよ!?」と連発したり
サンバを踊ったりするのもクドカンらしい。



それでもさすがです、押さえどころはちゃんと押さえ、
七五調のセリフも小気味よく、思わず「中村屋っ!」
声をかけたくなる正当歌舞伎的キメもとても多く、
でも軸には「俺はいったい誰なんだ?」という
現代の若者に通じる迷いと暴走と破滅があって
とても小劇場芝居的であり…。




激情するセリフ、悲劇の背後に鳴り響くトランペット(生演奏)などは
なんだかつかこうへいの舞台を観ているようでもありドラマチックでゾクゾクっ。



襲名披露公演を観たときは、勘九郎っていかにも
お行儀のいいしっかりした長男坊だなって感じだったけど
この「天日坊」での彼はものすごーーく魅力的でカッコよかった。

ヤンチャな役が、よく似合うのですね。


そして、現代セリフになるとその声がお父さんに
あまりにそっくりで驚きましたよ。



中村獅童はさすがのロックな存在感。
白波ものが激烈似合いますねえ。
そしてコミカルなことをやらせるとさすがにツッコミ上手。



しかし今回の舞台の出色は、勘九郎の弟で女形の中村七之助でした!


私がほとんど観た経験がないからかもしれないけど、
歌舞伎における女形は本当になよやか、おしとやか。
ちょっと影薄いな、物足りないなとも思ったりしてました。


でもこの「天日坊」での七之助の役どころは、
いっけん楚々とした美人、でもその実は街道筋に名が轟く
大盗賊の女親分なのです。



最初はものすごくかよわい女性、
そこから一気に鉄火肌な姐さんに変わっていく芝居が最高によかった。


もともとは男性だから、すごめば下手すると男が出ちゃう。
それを、高く細い女性の声→低く強い女性の声に変えられるってすごい。



とにかくどんな場でもすんげー色っぽくて、
どんな男もコロッといきそうだなあ…と惚れ惚れしてみてました。


この人の演る、男を手玉にとる女や強い女を、もっと観てみたい。




歌舞伎役者さんだけでなく、白井晃などのベテラン舞台俳優さんも
違和感なく舞台で混じりあえてましたね。
主役の勘九郎がすごく現代的なセリフ回しだったのも大きいと思うけど。



最後に、ものすごい大仰で重そうな衣装を着込んだ
勘九郎、七之助、獅童の3人が大立ち回りを演じるシーンは圧巻!



正当歌舞伎の様式的な殺陣ではなく、時代劇(しかも舞台だから動きでかい)の
早くアクロバティックな殺陣を、あの衣装で縦横無尽に駆け巡りながら
やるんですから、すごいです。


さすが、着物の裾や袖の取り回しや動きの型ができている歌舞伎役者。
素早くアクロバティックな殺陣をしても、どの瞬間も決まっている!
とくに勘九郎がちょーーー格好よかったです。



最後は何ともカタルシスに満ちた…。




いやあ、誘ってもらって本当によかった!!ありがとう!
もっかい観たいくらい。 (東京は今週土曜日で終わっちゃうけど…)


舞台はいいなあ。
やっぱりいい。



観ると、また自分で立ちたくなるよ。