命をかけた男たち  後編
 
                                                       ◇まゆつば国語教室21
 
 
ふと気づけば、まゆ国、20回の大台を超えてる(〃∇〃)
たった20回で大台とはおこがましい!かたはら痛いわ\(*`∧´)/
と怒られそうですが、飽き性のわたくしとしてはこれ、すごいことなんです。
えらいぞ!(〃∇〃)
(たぶん、ある日突然いやになってしまいそうですが……)
 
ということで、続きです。
 
 
軻、咸陽に至る。
秦王・政、大いに喜び、之を見る。
軻、図を奉じて進む。
図、窮まりて、匕首見
(あらは)る。
 
簡潔に話が進みますね。日本の現代小説なら、これだけで数ページ書き込みそう。
 
秦の都・咸陽に着いた荊軻に対し、始皇帝・政は喜んで謁見を許します。
樊於期の首と、燕の地図を持参した──つまり、燕を裏切ってきた。これを手土産として秦に仕えたい、と申し出たんでしょうね。そういうことはいくらでもあった時代です。
 
(箱を開けて樊於期の首を見せた後)荊軻が地図をささげ持って、政の前に進み出る。
まさに、この距離を作るために、樊於期に自刎(じふん)までしてもらったんです。
 
巻物を広げるように地図を広げていく。広がった最後に、匕首(あいくち)が包んであった。
──謁見の前に身体検査されるので、こうしないと武器を持参できなかったんですね。
 
王の袖を把(と)りて、之を揕(さ)す。
(いま)だ身に及ばず。
王、驚き起ちて、袖を絶つ。
軻、之を逐
(お)ふ。
柱を環
(めぐ)りて走る。
 
迫力満点!
政の袖をつかまえて、匕首で刺す。
服の袖にかかったが、体には届かない、その瞬間、政は立ちあがって袖を破り捨てる。
逃げ出す政を、荊軻は追う。
柱の周りをめぐって走る。政が柱の陰に隠れるのを、鬼ごっこ状態で追いかける。
 
いやあ、ほんとに簡潔、的確。
 
秦の法に、群臣の殿上に侍(じ)する者は、尺寸(せきすん)の兵(武器)を操るを得ず。
左右、手を以て之を搏
(う)つ。
(か)つ曰はく
「王、剣を負へ。」と。
遂に剣を抜きて、其の左股を断つ。
軻、匕首を引きて王に擿
(なげう)つ。
(あ)たらず。
 
殿上にはべる者は、小さな武器も持てないきまり。
左右の従者は手で荊軻を殴りつけ、政に「剣を使ってください」と叫ぶ。
王様だけは剣を持っているんですね。
政は剣を抜いて、荊軻の左のももを切る。すぱっ( ̄□ ̄;)!!
これまでか、と思った荊軻、最後のチャンスに賭けて匕首を投げる。
 
中を「あたる」と読むのは、「中毒(毒にあたる)」の「中」です。
「不中」──この二文字に、荊軻の無念の思いが凝縮していますね。たった二文字で、この重み。
 
遂に体解して以て徇(とな)ふ。
秦王大いに怒り、益
(ますます)兵を発して燕を伐つ。
喜、丹を斬りて以て献ず。
後三年、秦兵、喜を虜にし、遂
(つい)に燕を滅ぼして郡と為(な)す。
 
体解=体を切り刻む。
徇=さらしものにする(という意味らしい)
すごいですね。中国の古典では、憎い相手の殺しかたが半端ない。
 
ちなみに、孔子の弟子の子路は、切り刻まれ、塩漬けにされ、敵兵たちに食べられたとか……"(-""-)"
 
始皇帝は、燕に討伐軍を派遣する。
あわてた燕王・喜は、首謀者である息子の丹を斬って、その首を始皇帝に献上した。
しかし三年後、始皇帝は燕をふたたび攻めて滅ぼし、秦のひとつの郡にしてしまいました。
 
前回、
時に白虹、日を貫く。
燕人、之を畏る。
とあったのは、まさに的中したんですね。(物語でも歴史書でも予言は必ず的中する)

いやいや。
男たちの激しい闘いのドラマ、何度読んでも圧倒されます。