nag とは? 「かく」とは?
 
                                                                                   ◇まゆつば国語教室26
 
 
今回は、おなじみ「語源」に関するクイズを2つほど。
 
【1】
ak(明し、赤、あける……) kur(暗し、黒、暮れる……) har(春、晴れ、張る……)
「最後の母音の前までが、その語の本体」──と言いました。
では、
「nag」
という音は、どんな意味を表しているでしょうか。
最後に母音をいろいろつけて考えてみてください。
関係ありそうな言葉の群れから、意外な意味の世界が見えてきますよ。
 
 
【2】
物書きのみなさんの基本動作、「書く」。
なんで「かく」というんでしょう!
 
──というのは、「かく」というのは訓読みだから、古来の日本語と考えられる。
でも、漢字が伝わるまで日本には文字がなかった、というのが定説です。とするなら、文字を「かく」という動作も存在しなかったはず……。
「書」という中国語の動詞を知った時、「かく」という動作がそれまでなかったのなら、音読みのまま例えば「書す(しょす)」なんて動詞ができそうなもの。(愛という概念がなかったから、音読みのまま「アイ」という日本語にしてしまったようなもの)
あの動作、なぜ「かく」という日本語を当てたのか──という「?」です。
 
 
 
 
 
 ('◇')ゞ  (=^x^=)  (^^;)  (〃∇〃)  (;´Д`)
 
 
 
 
 
 
◆ヒント編◆
 
[1]
メインは、古い断定の助動詞(たぶん)だった「し」をつけて、「そのような様子だ」という意味の形容詞になったものです。
   ak→あかし  kur→くらし・くろし  har→ない?
「そのような様子」という形容詞があれば、どんな意味を表すのか見えますよね。
 
[2]
別の漢字を当てる「かく」を考えてみてください。writeと似たような動作を表す語はありませんか?
 
 
 
 
 
 ('◇')ゞ  (=^x^=)  (^^;)  (〃∇〃)  (;´Д`)
 
 
 
 
 
 
◆解答編◆
 
[1]
nag + ashi → ながし(長い)
nag + u   → なぐ(投げる・凪ぐ)
nag + aru → ながる(流れる)
nag + asu → ながす(流す)
nag + amu → ながむ(眺める=古語で「ぼんやりと景色などを見ること」)
nag + omu → なごむ(和む)
 
「和む」あたりは100%の自信はありませんが、たぶん、これらはすべて関連語だと思います。
 
「直線上に伸びていく感じ」がありませんか?
 
「ながむ」は女流文学や和歌によく出てくる重要語で、「物思いに耽る」と訳すことが多いですが、もとは、ずっと視線を外のひとところにとどめている状態をいう動詞です。
「凪ぐ」は水面が横から見ると直線上に長くなり、「和む」も心が揺れ動かずにまっすぐになっている状態です。
 
ちなみに、「ながる」「ながす」の語尾「る」と「す」は、自然な動きか、人為的な動作かを区別する言葉で、これは日本人の世界観にとって超重要な話なので、いずれまとめて……。
 
まっすぐ直線上に伸びていく感じを、古代日本人はnagという言葉で表した。
別の観点でいうと、「まっすぐ直線上に伸びていく感じ」が、古代日本人にとっては、世界を区別するための大事な要素だったということですね。
そのことも面白いと思います。
 
 
[2]
めんどくさくなってきた、もとい、しんどくなってきたので、簡潔に(笑)
 
漢字でいうと「掻く」が一番近いかな。
伸ばした手を、手前の方に引き寄せる動作。
 
引っ掻く。
田んぼに水を入れ、土をかき混ぜるために引っ掻く「代掻き(しろかき)」。
引っ掻いた結果、地面などが「欠ける」。
後段の引き寄せることより、手を伸ばして触れる前段の方に重きを置いた「~をかける」(ほんとかな。これは自信ありません(;´Д`))。
 
中国人が毛筆でさらさらと文字を書いているのを見て、「伸ばした手を、手前の方に引き寄せる動作」じゃないか! じゃあ「かく」だよな。
──昔の日本人たち、そう思ったんじゃないでしょうか。
まゆつばですが(^^;)