童話の書き方(後)
 
                                                                  ◇まゆつば国語教室 37
 
 
もう一冊、近所の図書館(出張所)で借りた本。
「童話作家になる方法」(講談社、斉藤洋)
 
『ルドルフとイッパイアッテナ』で講談社児童文学新人賞を受賞した人です。
前回の寺村輝夫さんの本が、哲学や方法論をきちんと持った「童話論」であるのに対して、こちらは、自分のことをさらさらっと書いたエッセイ風のもの。
童話を書くための参考にするには今市かも、ですが(^^;)
 
 
◇大学の非常勤講師は先が見えない。不安に思っていた時、スポーツ紙に出ていた広告で児童文学新人賞の募集をしており、やってみようかと思った。「小説家になるのは大変だけど、児童文学なら何とかなるかも……」という謳い文句に惹かれた。ドイツの児童文学を専門にしていたので。
 
◇新人賞に応募する時、独創的なものを!とは考えなかった(むりだから)。過去のいろんなものを活用した。
 
【1】専門のドイツ文学の伝統である「教養小説」(少年がさまざまな試練を経て成長していく物語)の枠組み。
 
【2】専門のホフマンの代表作の一つから、「言葉を覚えた猫による自伝」の枠組み。
 
【3】審査員は日本人だから、日本の伝統を使おう。その中から「忠臣蔵」の枠組み。
 → 猫の少年が字を覚えるなどして成長し、教養を身につけ、自伝を書いて、忠臣蔵的行動をする──という枠組みを作った。
 
【4】肉付けの基本として、習った教授の言葉「文学はおもしろくなくちゃだめ」を大事に、プロットを練る。
 
【5】舞台は土地勘のある江戸川区京成線北小岩あたりにした。これなら失敗しない。
 → サブキャラクターを考えるなど、肉付けしていった。
 
◇この本の小見出し2つ。
「物語はテーマより、まずプロット」
「あなたが説教されるのが嫌いなら、少年少女はそれ以上に説教されるのが嫌いである」
 
◇動物園でシロクマを観察していて、首が長いことに気づいた。泳ぐためだ。これは重要なことだ。動物をキャラクターに使う場合、その動物の持っている特性を表現しなくては、だれが主人公でもいいお手軽な話になってしまう。ウサギがクッキーを焼くなら、長い耳でかすかな風を感じながら焼いて欲しい。
 
◇動物の目の高さ。道路を歩いている時、ネコは通りすぎる自動車の車内は見えないが、車体の下やその向こうの景色が見えている。「ルドルフ」で、商店街を逃げるネコを書くため、私はしゃがんでネコの視線に近づく努力をした。
 
◇「ルドルフ」を書く時、友情とか同胞愛とかのテーマは何も考えていなかった。「ワー、と来たらドンガラガッシャーン」というプロットがあっただけ。「猫の少年が字を覚えるなどして~」というのは物語の骨子であって、テーマではない。文学は娯楽。プロットが何よりも大切なのだ。
 
◇説教のために物語を書いても、子供は読みたくない。テーマ(なりたい自分になっていく)は、物語を進めていく中で自然に織り込まれていく。頭で作ったテーマなど、しょせん底が浅い。頭で作るのはプロットだ。
 
◇話を思いつくケース──。小見出しだけ。
「日常生活は空想の宝庫」 (もし~なら、といつも考える)
「夜、夢で会いたい相手なら、昼間、心に念じていなければならない」 (毎日ペンギンのことを考えていれば、数日後に必ずペンギンの夢を見る)
「会話から引っぱり出す、心の中にある何か」 (人との普段の会話を楽しむこと。楽しさが心の中の何かを引っぱり出す)
 
 
あれ?
書き出すべきことは、こんなもんかなあ。これだけ?
ファンには面白いであろう裏話がいっぱいですが、そうでない人にはあまり濃い内容ではない……かもな本でした。