TOBE「夢」は今回も安定の落選でした "(-""-)"
11,12月と続けて出さなかったんですが、アイデアが出ないだけじゃなくて、なんか意欲がなくなってきたんですよね。
ほかの公募もこのところ全然出してない。これだけは……と思っていたアンデルセンとキッズエクスプレスも結局、不戦敗でした。
TOBEを含めて、公募はしばらくだめそうです。
いちおう、今年1年は続けようかと思ってるんですが、気力体力がどうなることやら "(-""-)"
ということで、落選の「夢」をアメ限から再upしておきます。
夢のシステム
「え? 財務省のお役人なの、あんた。最近は役所もセールスをするのかい」
「いえ、今日はその左にある『夢の長寿』協会事務局として参りました。資産をお持ちの高齢者を対象に、人生でやり残した夢をラストステージでかなえていただこうという新規事業なんです」
「やり残した夢ねえ。まあ、ろくにつきあいのない甥や姪に遺産を残すのもなんだし、話だけ聞かせてもらうか」
「ありがとうございます。ではさっそく」
*
「ほう、作家ですか。それはすばらしい夢ですね」
「いや、大学が文学部でね。若気の至りで、いっときそんな夢を抱いていたんだ。会社勤めを後悔しているわけじゃないよ。安定した生活だったし、それなりに面白かった。重役にもなれたしね。まあ、もし作家になっていたらどうだったろうと、ちょっと興味があるだけだよ」
「それこそ、わが『夢の長寿』協会のコンセプトです。必ずや作家にさせていただきます」
「いくらくらいかかるのかね。作家になるの」
「作品はおありですか」
「作品? 学生時代に書いたショートショートが十くらい……捨てちゃったかなあ。やっぱり作品がないと話にならんよね」
「いやいや。ゴーストライターに書かせるという手があります。少しお高くなりますが」
「で、いくらくらいなの」
「出版費と広告宣伝費、マスコミに取り上げてもらうための接待費、ランキングに入るための大量買いの費用も入れて……」
「えっ、そんなに?」
「人気作家になったら、若い女の子にちやほやされますよ」
*
「さあさあ。店の外まで長蛇の列ですよ」
「サイン会なんて気恥ずかしいなあ。一応、練習はしてきたけどさ。若い女の子はいるのかね」
「おまかせください。私どもの仕事にぬかりはありません」
「て、それ、サクラを用意したってこと?」
「め、めっそうもない。作品を読んで感動した人たちですよ。さあさあ」
「げっ。ばあさんばかりじゃないか」
「あれ? それはちょっと認識を変えていただかないと。六十九歳までは若者と呼ぶって、このあいだ法律で決まったじゃないですか。昔の感覚でいたら、この超絶高齢社会は生きていけませんよ」
*
「売れた分は収入になるんだよね。ランキングにも入ったし」
「それは無理です。売れた分だけ費用もかかっていますから。作家になるのが夢だったんですよね。お金なんて、あの世まで持っていけるものじゃありません。作家としての喜びを満喫することに集中なさったほうがよろしいかと」
「しかし、なんか物足りないなあ。作家って、この程度のもんだったっけ」
「名誉ですね」
「名誉?」
「賞を取りましょう。芥川賞とか直木賞とか。まあ、ノーベル賞はさすがにお手持ちの資産では難しいですが」
「お金を出せば直木賞とか取れるの?」
「何とか頑張ってみます」
*
「ごめんなさい。残りの資産が足りなくなってしまったようです。『夢の長寿協会文学賞』で手を打っていただけますか」
「そんな賞があるの。うさん臭い名前だな」
「そんなことはありません。財務省が全面的にバックアップしている国家的な賞です」
「やっぱり直木賞がいいなあ。資産はまだ大分残っているはずなんだが」
「入院、葬儀、死後の手続き費用などをキープすると、これでほぼ終わりです」
「えっ、財産を全部使い果たしたってこと?」
「はい。財務省で把握している御資産データに沿って事業を進めましたので」
「死にたくなってきた」
「そんなに悲観なさらないで。高齢者の夢がマネーフローを活発にし、国家の景気を支える。まさに夢のシステムじゃないですか」
「あした、どっかから飛びおりるよ」
「良かった。ちょうどその日程で計算してあるんですよ。これだけピタリなのも珍しい」