平手友梨奈side

長濱さんが守屋茜さんとお墓参りの事について話した日から三日が経った。

平:まさか、長濱さんと守屋茜さんに共通の友達がいたなんてね、、、

長:私も想像したことなかったかな...それにもしかしたら幼稚園の頃に守屋さんとは会ってたのかもね...

私と長濱さんはいつものように図書室で話している、
事は落ち着き私は改めて自分の気持ちを伝える事を決めた。

平:そうかもしれないね...あのさ長濱さん?

長:ん?

平:この前、変な場面だったからもう一度言っていいかな?

長:何を...?

平:私の気持ち。

長:気持ち...?

平:うん...。私、長濱さんのことが好き...これからはずっと側で長濱さんの事守りたいんだ、、

緊張と不安で心臓がバクバクと動く中、私は長濱さんの目を見て気持ちを伝えた。

長:平手さん、ありがとう...!

長濱さんはそう言ってニコッと笑った、
私はこの時の笑顔を見て更に長濱さんとずっと一緒にいたいし守りたいと心に強く思った。




...
 時間はどんどん流れ、ついに今日は卒業式だ。
あれからどうなったかと言うと、あの日を境に守屋茜さん達がSHRの後に誰かをどこかへ連れて行ったり、誰かを殴ったりなどイジメをすることはなくなった。

同じクラスのまま三年生に上がったが、二年生の時よりクラスのみんなはこの一年間、生き生きとしていた気がする。

守屋茜さん達は相変わらずほとんど教室には居なくて早退ばかりだったが、なんとか卒業はできるそうで
クラス全員での卒業式を迎えたんだ。

この先、私たちが選んだ道は輝くのだろうか?






二年後...


私は遂に成人した、
今日は高校のみんなとの同窓会がある。
実際、長濱さん以外に会うのは卒業式以来だから皆はどんな道を選んだのか気になった。


ガラガラ

集合場所へ向かうと既にみんな居て、ワイワイと楽しそうに呑んでいた。

理:はぁ?愛佳が幼稚園の先生とか柄じゃないだろ!

愛:いやいや!花屋の理佐に言われたくねーわ!

守:二人共ほんと意外!

理:おい!

愛:警察学校行く茜には、一番言われたくはないし!


どうやら、守屋茜さんはこれから警察学校、渡邉理佐さんは花屋に就職、志田愛佳さんは幼稚園の先生を目指すそうだ。

トントンッ

周りを見回していたら後ろから肩を叩かれた、
振り向くとほんのりと頬が赤い長濱さんが首をかしげて立っていた。

長:入口で何してんの??ほら行こうよ!!

平:あっ、うん!

長濱さんに手を引かれて守屋茜さん達のテーブルへと連れていかれた。

守:平手さん...

平:久しぶりですね、、

守:うん...傷、残っちゃったね...

そう言って守屋茜さんは私の首の傷を見つめた

平:だいじょ

長:いいのー!!

大丈夫です。と言おうとしていたのに長濱さんの大声によって遮られてしまった。

長:この傷は彼女守った証なんだもんね!!

長濱さんはそう言って私の腕にピタリとくっついてきた。

平:ちょっと、長濱さん?酔ってんの?

長:ンーむにゃむにゃ...

平:もう寝てるし...

長濱さんは早くも私の腕の中でスヤスヤと眠りについていた
そんな私たちを守屋茜さんはニコニコと微笑み眺めていたが、その時の笑顔は高校二年生だった時の、あの微笑みとは違って
恐怖なんて一つも感じないような素敵な笑顔だった。

守:平手さんはなんの道選んだの?

ジョッキを片手にそう呟いた

平:私は長濱さんと一緒に教育の方へ進みます...!

守:そっか!いい先生になってね...!

守屋茜さんはそう言ってお酒をグイッと口に運んだ。

今、私と長濱さんは一緒の大学に通い教員免許を取るために必死に勉強中だ...

あれ?そう言えば

平:渡辺梨加さんはなんの道に...?

近くにいた渡辺梨加さんへそう聞くと

梨:この前20社目の面接落ちたばかり...

平:えぇ!!!あっ、ごめん...

驚きからつい声が大きくなってしまった

梨:ううん...!絶対受かるからね!

そう言ってお酒が呑めないのか烏龍茶をゴクゴクと飲み干していた。

久しぶりの会話だったため、話は弾んでとても楽しい時間を過ごせた。
だけど終電が近くなると次第に皆帰っていって私と眠る長濱さんだけになってしまった。

平:長濱さん起きて?

長:ンー

平:ほらお水!

長濱さんは私が差し出したお水を飲んでゆっくりと立ち上がった

平:ほら手!

長:うん...

危ないから手を差し出して暗い道を歩く
だけど駅が遠くに見え始めた頃、長濱さんが突然足を止めた。

平:長濱さん...?

長:ねぇ、ほんとに良かったの...?私のこと恨みたくないの...?
もし先生になれたとしてもその傷で生徒にからかわれるかもしれないよ?

長濱さんは目を潤ませて私の首元の傷を優しく撫でた。
お店にいた時は『彼女守った証だもんね』とか言ってたのに急に不安そうになってる長濱さんが愛おしくてしょうがない、
だから私はその手を掴んで両手でギュッと握った

平:恨むわけないじゃん、からかわれたらこう言うよ

『これは意志を持った証』ってね!

ほら帰ろう?

そう言って手を差し伸べたら、長濱さんは何故か少し拗ねた表情で私の手を握った。








...
  きっとスクールカーストは今もこの世界のどこかで、たくさん存在しているだろう。


テレビでよく目にする、『いじめが原因で自殺』というニュースを見ると今でも自分の過去を思い出す。

もしあの時長濱さんを助けることが出来なかったら...
そう考えるだけで首の古傷がヒリヒリと痛む気がした。

だけどあの時、私が自分に嘘をつき見て見ぬふりをしていたら





きっと輝く今や未来は存在しなかったんだろう。