理佐の後を必死について行ったけど、会話が生まれることは無かった。


そんな空気の中 着いた先は、小さな公園だった。


今まで、この辺りを通る事は何度かあった。

けどそんな私も、足を踏み入れたことのない公園。


ここには、私たちだけしか居ないし

午後なのに大きな木がたくさん並んでいて、太陽の光をふさいでいるから薄暗い。

そんな公園に 不気味だと感じながらも足を踏み入れた。


先に入っていた理佐は、既に 公園の端にポツンとある たった一つのベンチに座っていた。


志:理佐...?


名前を呼んで、理佐の隣に並んで座った。

理佐は返事をしないから、私の耳には沢山の蝉の鳴き声だけが聞こえた。



理:愛佳?


志:なに!?


しばらく静寂が続いた後、理佐が突然私の名前を呼んだ。

理佐から話し出すことは久しぶりだったから、喜びと驚きで少し声が大きくなってしまった。


理:私と付き合っていて楽しい?


志:当たり前じゃん!!


理佐の質問にすぐ答えたけど、理佐の表情はずっと曇っていた。


志:別れ話...?


自ら そんな話題を出すつもりはなかった。

でもその時の空気が、私に自然とその言葉を出させた。

理佐は驚いていたが、少し経つと静かに頷いた。


とても苦しかった。

頷いてなんか欲しくなった...。



理:愛佳は、付き合っていて楽しいって言ったよね?


志:うん...。


理:でも私は、愛佳が楽しそうには思えない。


志:...。



理佐には 私の不安が伝わっていたのだろうか。


理:ある日から愛佳は、私にわがままや要望を言わなくなった。
それが 悲しかったの...だからイライラして、愛佳に冷たい対応ばっかりしちゃった。
これ以上愛佳をしばれないよ...だから別れよう?


聞きたくなかった。

愛して欲しかっただけなのに、

それを伝える勇気がなかったからって、理佐を失うなんて耐えられない...。


志:別れたくない...。


理:?


志:別れたくない...!!


私はそう言って、理佐の首に腕を回した。


けどその腕は理佐にすぐ払われて、冷めた目で見られた。


その目はいつもの理佐や
不機嫌な時の 理佐の目じゃなくて、

今までに見たことないような、そんな冷酷な眼差しだった。



理:お互い新しい道に進もうね。ありがとう。


理佐は泣きそうな私にそう言って、立ち上がった。


志:待ってよ...!ただ愛して欲しかっただけ...。私を 愛してください...!!


大きな日陰の中、理佐の背中にそう叫んだけど

理佐が振り返ることはなかった。



愛してください 。

そう伝えるのが 遅すぎたんだ...。