次の日の夕方


「飲み過ぎには気をつけような〜」


先輩のそんな一言で、飲み会が始まる。


もちろん俺の隣は渡邉さんだ。


「理佐よろしくね」


「なんで名前知ってんの?」



「知りたくて他の人に聞いちゃった!」


「顔がちょっと良いからって、みんなあんたに騙されてるね」


「俺の事はまなきって呼んでよ」


「...」


せっかく隣に座ってるのに、全然話してくれないや...。

やっぱ嫌われてるのか、俺が何を言おうと理佐は睨みながら返答したり無視したりする。

落ち込んだ俺は一度トイレに行くため席を立った。





「渡邉さんまじ可愛くね?」


「俺狙っちゃお、お酒飲ませてお持ち帰りだわ〜」


「うーわ、お前サイテー!」


トイレから出てきたやつらの話が耳に入る。

多分先輩だと思う。

ゲラゲラと汚い笑い声。

完全に酔っているみたいだ。


数分後、席に戻ろうとすると理佐はさっきトイレで見かけた人達に囲まれていた。


「もっと飲みなって!」


「もう大丈夫です...」


理佐の事だからすぐに本性をだして追い払うと思い、俺は一度織田の所に移動したが

数分後戻ってくると、まだお酒を強要されていた。


だから俺は、慌てて理佐と先輩の間に割り込む


「理佐お酒苦手なんだよね?俺と一緒に外の空気でも吸いに行こっか。」



先輩を思い切り睨みつけて、理佐と一緒に1度お店を出た。

思ったより素直に立ち上がってくれたから、俺よりもアイツらの方が嫌だったのだろう。


「ごめん、俺がもっと早く止めれば良かった」



「ううん助かったありがとう...私お酒苦手だし、人がいっぱい居る所も苦手なの」


理佐も"ありがとう"ってちゃんと言うんだな...

お店の前にあった自販機で水を買って、理佐に渡してから少し話をした。




「苦手なのに飲み会に来たの?」


「あんたが来るって聞いたから」


「えっ?」


思いがけない言葉に驚いて、俺はペットボトルを思い切り握った。

パキパキッ そんな音が大きくなるにつれ、俺は緊張した。



「あんたが居るなら1回くらい行ってもいいかなって...」



「理佐、ガチ酔いじゃない?」


酔っているのは分かっていたけど、俺は理佐に確かめた。


「私が酔うわけないじゃん...!」



「俺、理佐の事本気だから...」


理佐の返答を聞き、俺は真剣にそう伝え理佐の首に手を添えて唇を重ねる。


「ちょっと...!」


僅か数秒で理佐は顔を引いてしまったが、続けて俺は話し続けた。


「俺と付き合ってよ、絶対幸せにするから」



「...」


「拒否しないなら、良いって捉えるけど...」


そう言っても理佐は黙ったまま。


ほんと、ツンデレなのか恥ずかしがり屋なのか...


「今日は帰ろっか?」


焦らなくたっていいか。

少しずつ進めばいいんだから...



「荷物取ってくるよ。」



そう伝えて俺は一度お店に戻り、織田にウインクを1つする。


それに対して織田は理解したよと、ウインクを返した。


「お待たせ」


理佐に荷物を渡して、歩き始める。


「手繋ご?」


「なんで?」


「繋ぎたいからだよ」


「...」


また黙り込んだ理佐の左手を俺は勝手に握る。


「理佐大好き」


「キモいこと言わないで...」



暗くてよく見えなかったが、理佐は言葉とは裏腹に笑っていた気がした。