「俺、ねるの事が好き」



心地よい風が吹く中、俺はねるに告白をした。



「付き合って欲しい...」



少し震えた俺の声

ダサいけど、精一杯の想いを乗せた。

ねるはそんな告白を聞くと
俯き 顔に手を当てて、体を震わせていた。



「ねる?」


涙を流したのかと思い、ねるに手を伸ばそうとしたその時




「アハッ...あはは ──」




突然 吹き出したようにねるは笑い始め、その高笑いは屋上によく響いた。



「どうし」


「ちょっと、まさか本気にしたの?」



俺が声を掛けようとすれば、ねるは自分の手を叩きながら笑い続けた。




「おいおい、どうしたんだよ...」



状況が理解出来る訳もなく
俺もとりあえず笑顔を作って、ねるにもう一度手を伸ばした。


そしたら、今度はその俺の手を ねるは思い切りはたく。



「ちょっと、触らないでよ!」


彼女の顔から笑顔は消えて、冷ややかな鋭い視線が俺に突き刺さった。


それは拒絶を表していた。



「ねる?」



「ほんと笑いが止まらないんだけど...私があんたみたいな欠陥品なんか好きになるわけないじゃん、バカなの?」




「欠陥品...?」



「そうだよちょっといい顔したら、男はすぐ好きになったとか言う奴らばっか。ホント面白くて堪らないんだけど」


笑い声を殺しながらも、ねるは淡々と話していく


「でも俺は」


「あんたが私も好きでも、私はあんたなんて眼中に無いから」


「ッ...」


「その足でよく私に告白しようなんて思ったよね、釣り合うわけないじゃん」


止まらないねるの言葉一つ一つが、俺の心をえぐるように突き抜いていく。




「もういい、何も言わなくていい...!」


「アハッ、もしかして泣いてるの?」


「だまれ...黙れ!」



俺は怒りがこみあげ 自然に彼女を殴り掛かろうと右手を振り上げる、だけどその手はねるに掴まれて耳元でこう呟かれた。



「女の子に泣かされるなんて恥ずかしいよね、でも大丈夫だよ?あんたみたいな馬鹿いっぱい居たから。」




俺はそう言われて全身の力が一気に抜けた。


崩れ落ちてフェンスに背中が当たる



訳が分からない...でも立ち去るねるの背中を見て、悔しさと怒り そして胸の痛みだけは感じた。




「クソ...俺の人生、この足のせいで全部台無しだ...!」



ガシャン!


悔しさのあまり、俺は叫んで後ろのフェンスに力いっぱい拳をぶつけた。


呆然と俺を見る周りの傍観者は、ヒソヒソと話し出す。



「何なんだよほんとに...」



俺の中の怒りが、消えることなく生まれ続ける。


ここでジッとしている事もムカつきはじめ
俺は歯を食いしばりながら、建物を出た。

 





こういう時、海に行きたくなるのはホントらしい。

でもそんなことは
海が近くにないここでは不可能だ。

だから代わりに 近くにある河原へと足を運んだ。



河原に着いた俺は土手に座り空を見上げる。


さっきまで雲ひとつなかったのに
いつの間にか今にも雨が降りそうな、そんな曇り空に変わっていた。


さっきの出来事が俺の頭をよぎると、俺の目からはまた涙がチラつく。


「ほんと何してんだろ、俺...」



そう呟いて、バタンと背中から土手に寝そべった。




「志田くん...?」




そんな時、俺の名前を誰かが呼んだ...