2+3=結婚、√2=抹殺…!? 悪魔の数学カルト組織「ピタゴラス教団」の狂気!!【前半】

 

■謎のピタゴラス教団とは!?

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画像は「Conscious Resonance」より

当時とては40を超えれば随分な高齢であったが、身長180センチを超え、己の思想に邁進するピタゴラスを啓蒙する弟子は多かった。その魅力は、講義を聞きにきた聴衆600人がその場で家族を捨て、教団に走ったという記録もあるほどである。「ピタゴラス教団」は、学問の研究もさることながら、厳格な宗教的生活が実行された。輪廻転生を解くピタゴラスは、あらゆる学問を用いて、そこからの解脱を説いたのである。

 今でいえば新興宗教に近いものがあったのかもしれない。厳格な宗教教団であったため、入団希望者は「どの程度まで真剣に道を求めているか」「心理を会得する力量、知力はあるのか」「教えを受け入れる純粋な心を持っているか」といったことを人相占いなどを用いて調べられた。入団試験に合格しても、正式な学問生になるには、聴聞生として2〜5年間、「沈黙」を守り、先輩の教えを聴いて理解することだけが課せられた。

 教団の3大原則は、「沈黙・秘密厳守・無条件の信仰」である。団員の朝は早く、まず魂を静めて、学問や真理に対しての観想能力を鋭敏にさせるために森の散歩から始まった。その後、グループに分かれ研究を行い、その後、健全な肉体を維持するためにレスリングなどの運動をした。元祖ベジタリアンのピタゴラスは、1日2食で、「果物、野菜、穀物、蜂蜜」だけで生活し、ほとんど肉を摂らなかったという。

 教団内では全ての財産が男女ともに等しく共有物とされ、いち早く男女の平等という理念があった反面、研究内容までも平等に扱ったために、ピタゴラスと他の門弟の研究を区別するのが困難にしてしまったのである。

 戒律を重んじ、世界の心理を追求する団体であったが、その強い信仰が思わぬ悲劇を招くこととなるのである…。


■「ある発見」をしてしまったがために教団に抹殺された、弟子・ヒッパソス

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画像は「Coopertoons」より

 それは「無理数」の発見であった。「無理数」とはルート2のように、分数で表すことができない数のことである。「無理数」が数学的に定義されるまでには、数学者・デデキントが登場する19世紀まで待たねばならないのだが、ピタゴラスの弟子・ヒッパソスは皮肉なことに、ピタゴラス自身が作った三平方の定理によってその「無理数」を発見してしまったといわれている。

 また一説には、校門にかかげてあった五角形を見ていたヒッパソスが偶然思いついたともいわれている。いずれにせよ、「全ての数は整数の比で表せる」と説いていたピタゴラスにとって、この発見は教団の教えを否定するものであった。しかし当時の知識ではどうすることもできず、無理数の存在を「他言してはならぬ秘密」として、ヒッパソスを溺死させてしまったのだ。

 
 

超能力者ピタゴラスにまつわる言い伝え

 数に取り憑かれ、悪魔になってしまったピタゴラスには、様々な信じがたい逸話が残っている。

・黄金比を好んだせいか、片方の腿が黄金色に光り、それを大勢の人の前で見せていた。
・超能力を使って、鳥や動物、そして川や大地と会話。瞬間移動を用いて同時に別の町に姿をあらわしたという記録も残っている。
・魔術師として、暴れ熊をおとなしくさせ、その場から退散させた、口笛で空飛ぶ鳥を落としたなど
・やって来る船の積み荷を透視して、中身に死体が入っていることを当てた

 晩年、60歳で弟子のひとりと結婚し、7人の子供を残したというからまさに超人である。ピタゴラスが生きた時代を考えれば、見えざる真理を見いだすのに、非科学的な点があっても責めることではない。ただ、歴史上の偉人とて光と闇があるということも、また真実なのである。