東京都医師会会長FB 『軽い風邪だと思っている人…若くて元気な方…もう飽きちゃった人…

 

もう少し我慢して下さい。 少なくともあと3週間、生きていることだけでも幸せと思い、欧米みたいになったら大変だと思い、密集、密閉、密接のところへ絶対行かない様、約束して下さい』 facebook.com/10000329867488

 

【感染拡大防止】東京都、桜が見られる園路など通行止めに https://news.livedoor.com/article/detail/18029248/… 

上野恩賜、井の頭恩賜、代々木の三つの都立公園で実施。通行止めは27日中に実施し、お花見シーズンが終わるまで続けるという。

 

>知事はやるべきことをやりました、聞く気がない人にはどんな警告しても聞かない、

聞く人にはこれ以上言わなくても考えて行動取る、もう二言無用。

後は個人個人に任す。他人事と思えば、明日自分の身にかも。

 

この機会に、ウィルスを取っかかりに、サイエンス、科学系の知識がもっと普及してくれれば、

今後の感染症にも気を付けられるし、医療人だけしか知らないで、なかなか言うこと聞いてもらえないとかも減ると思う。

どうせ閉じこもりで時間があるなら、こういう記事が読まれて欲しい。

歴史でも理科でも公衆衛生でもいいけど、義務教育でやらないと。

 

日本の状況「世界が当惑」 感染増を回避、理由分からず 

【ニューヨーク共同】米紙ニューヨーク・タイムズ電子版は26日、新型コロナウイルスの日本での感染状況について「厳しい外出制限をしていないのに、イタリアやニューヨークのようなひどい状況を回避している」と指摘、世界中の疫学者は理由が分からず「当惑している」と伝えた。

 日本が医療崩壊を避けるため、意図的に検査を制限しているとの見方を紹介。米コロンビア大の専門家は、日本のやり方は「ばくち」であり「事態が水面下で悪化し、手遅れになるまで気付かない恐れがある」と警鐘を鳴らした。

感染を抑えることで「ウイルス」は弱毒化に向かって進化する

3/27(金) 6:01配信 ダイヤモンド・オンライン

 生物とは何か、生物のシンギュラリティ、動く植物、大きな欠点のある人類の歩き方、遺伝のしくみ、がんは進化する、一気飲みしてはいけない、花粉症はなぜ起きる、iPS細胞とは何か…。分子古生物学者である著者が、身近な話題も盛り込んだ講義スタイルで、生物学の最新の知見を親切に、ユーモアたっぷりに、ロマンティックに語る『若い読者に贈る美しい生物学講義』が発刊。5刷、3万部突破のベストセラーになっている。

 養老孟司氏「面白くてためになる。生物学に興味がある人はまず本書を読んだほうがいいと思います。」、竹内薫氏「めっちゃ面白い! こんな本を高校生の頃に読みたかった!!」、山口周氏「変化の時代、“生き残りの秘訣”は生物から学びましょう。」、佐藤優氏「人間について深く知るための必読書。」、ヤンデル先生(@Dr_yandel)「『若い読者に贈る美しい生物学講義』は読む前と読んだあとでぜんぜん印象が違う。印象は「子ども電話相談室が好きな大人が読む本」。科学の子から大人になった人向け!  相談員がどんどん突っ走っていく感じがほほえましい。『こわいもの知らずの病理学講義』が好きな人にもおすすめ。」、長谷川眞理子氏「高校までの生物の授業がつまらなかった大人たちも、今、つまらないと思っている生徒たちも、本書を読めば生命の美しさに感動し、もっと知りたいと思うと、私は確信する。」(朝日新聞2020/2/15 書評より)と各氏から絶賛されている。

 
新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大が、世界中で深刻化しつつある中、「そもそもウイルスとは何か」について、著者が緊急寄稿した(全2回)。

● ウイルスの進化速度は速い

 新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大が、世界中で深刻化しつつある。この感染拡大を抑えるために、
水際対策や大規模な集会の禁止などの対策が取られてきた。おそらく、これらの対策には一定の効果があり、感染が広がるスピードが抑えられたと考えられる。
 
 しかし、スピードは抑えられても、感染自体はゆっくりと広がり続けている。そのため、こんな意見を耳にするようになった。

 「どうせ最終的にはウイルスが広がってしまうのであれば、感染拡大を防ごうとする努力なんか無駄ではないのか」

 いや、そんなことはないのである。感染症の拡大が遅くなれば収束も遅れるけれど、一定の期間で区切って考えれば、患者の数は少なくなる。そのため、医療機関がパンクすることを防ぐ意味がある。しかも、それだけではない。ここでは進化の観点から、感染拡大を防ぐ意味について考えてみよう。

 たとえば、ヒトにウイルスAが感染すると、風邪の症状が出るとしよう。このウイルスAが、社会に広がりつつあるとする。ここで重要なことは、ウイルスの進化速度はとても速いということだ。そのため、感染が拡大しているあいだにも、ウイルスは進化する。

 ウイルスAが進化して、毒性の強いウイルスBと、毒性の弱いウイルスCに分かれたとしよう。ウイルスBは毒性が強いので、感染した人は3日で死んでしまう。一方、ウイルスCは毒性が弱いので、感染しても死ぬことはない。

 さて、もし感染拡大について何も対策をしなければ、感染した人は、毎日1人ずつウイルスをうつしていくとする。その場合の、毒性の強いウイルスBの感染者数と死亡者数がどうなるかを、1週間だけ考えてみよう。

 1日目は、ウイルスBに感染した人が1人。2日目は、2人。3日目は、4人。

4日目には、1日目に感染した人が死ぬので、残った3人がそれぞれ1人ずつに感染させて6人(1人死亡)。

5日目には、2日目に感染した人が死ぬので、

残った5人がそれぞれ1人ずつに感染させて10人(計2人死亡)。

6日目には、3日目に感染した2人が死ぬので、残った8人がそれぞれ1人ずつに感染させて16人(計4人死亡)。

7日目には、4日目に感染した3人が死ぬので、残った13人がそれぞれ1人ずつに感染させて26人(計7人死亡)。

そして、1週間後(8日目)には、5日目に感染した5人が死ぬので、

残った21人がそれぞれ1人ずつに感染させて42人(計12人死亡)。

 

● 感染拡大を防ぐ対策をした場合

 次に、感染拡大を防ぐ対策をした場合を考えよう。この場合は感染が遅くなるので、感染した1週間後に、1人にうつすことにしよう。

 1日目は、ウイルスBに感染した人が1人。2日目も、1人。3日目も、1人。4日目に、1人死亡。そして、ウイルスBは絶滅する。


 つまり、1週間だけ考えた場合、感染拡大の対策をしなければ、ウイルスBの感染者は42人で、そのうち死亡者は12人。対策をした場合は、感染者は1人でそのうち死亡者は1人、しかもウイルスBは絶滅することになる。
 
 一方、毒性の弱いウイルスCの場合は簡単だ。対策をしなければ、1日目が1人、2日目が2人、3日目が4人と、毎日2倍に増えていくので、1週間後には感染者は128人で、死亡者はゼロ。対策をした場合は、感染者は2人で、死亡者はゼロになる。

 つまり、感染拡大を防ぐ対策をしない場合は、合計で感染者が170人、そのうち死亡者が12人になり、対策をした場合は、合計で感染者が3人、そのうち死亡者が1人になる。ここで重要なことが2つある。

 1つは、死亡者の数だ。ここでは1週間しか考えなかったけれど、対策をしなかった場合は、この後もどんどん死亡者が増えていく。一方、対策をした場合は、もう死亡者は増えない。死亡者の数に大きな差がでてくるのである。

 もう1つは、毒性の強いウイルスBについてだ。対策をしなかった場合は、ウイルスBは絶滅しない。しかし、対策をした場合は、ウイルスBは絶滅したのである。
 
 このたとえは単純すぎるけれど、一般的な傾向として、感染速度が遅くなればなるほど、毒性の強いウイルスは、(
他の人にうつる前に感染者を殺してしまうので)広がりにくいのだ。毒性が強ければ強いほど、この効果は強くなるので、感染拡大を防ぐ対策は、ウイルスを弱毒化して、死亡者を減らす効果があるといえる。

 もちろん、ウイルスの進化は偶然にも左右されるので、感染を防ぐ対策をしても万全ではない。強毒化してしまう可能性もゼロではない。ゼロではないけれど、それでも対策をすれば、ウイルスを弱毒化する可能性が高くなるのは確かだ。感染拡大を防ぐ対策はした方がよいのである。 

更科功

 

>なるほど。非常にシンプルで分かりやすい。
強毒性ウィルスは感染拡大しにくい、が、より早期に終息させるためには防止対策はするべき、なのですね。
新型コロナは大抵の人にとっては弱毒性ウィルス。
しかし、新型コロナで重篤になる人にとっては毒性の強いウィルスということになるので、やはり拡大防止はするべき。
ウィルスの進化による弱毒化を促すためにも拡大防止するべき、と。

 

宿主を殺してしまう強毒ウィルスは、宿主の体ごと死ぬ。大抵は遺体は焼かれるからだ。

武漢では病院に入れなかった15000人ほどの遺体を一気に焼いたようで、大気組成がその時だけ変わっていた。

しかし、今の欧米では、若年層にも強毒であるようなウィルスに変異しているかもと恐れられている。

身近に死者が出ないと、人間は危機感を持てないままだけれど、全世代共通のリスクがあるほうが、社会全体で同じ方向を向きやすいだろう。

ウィルスの突然変異なんて、偶然でしかなくて、コントロールとか意思とかはまるで関係ない。

モノとしての動態を示すだけ。

 

動物は手段がないので、自分の体や感覚を進化させて、絶滅を防ぐ能力を持っている。

人間は手段に頼りすぎて危機感を持てないでいる。

しかし、社会的距離を取れば、感染拡大は防げるのは、動物どうしとしては共通だ。

人間は動物なのだから。

ただ、手と頭でモノを作れるぶん、何かを工夫することができる。

すぐには無理だけれど、少しづつ工夫を重ねて、予防や治療を開発してきて、今に至っている。ただ、それには長い時間がかかるのだ。

 

 

 

驚きの特殊能力、「社会的距離」で感染を防ぐ動物たち、

だが人間も負けていない

3/27(金) 7:11配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

 

自ら“死のフェロモン”を発するミツバチや、発症前に察知するイセエビも

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行が深刻になるなか、多くの人々が他者との接触を避けたり、自宅にとどまったりすることを余儀なくされている。米国でも、感染の拡大を減速させるため、人と人とが「社会的距離」をとるようにという指針が発表されている。

ギャラリー:新型コロナ、都市封鎖したイタリア、ミラノの隔離生活 写真12点

 しかし、感染症が当たり前の自然界では、「社会的距離」をとる戦略はとりたてて新しい概念ではない。事実、いくつかの社会的な種は、病原体に感染した仲間をコミュニティーから追放する。

 それは決して簡単なことではない、と自然保護団体ザ・ネイチャー・コンサーバンシーの首席研究員ジョセフ・キーセッカー氏は言う。感染症にかかった個体は必ずしも「見てわかりやすい」わけではないからだ。

 しかし、動物たちのなかには、特殊な感覚によって特定の病気を発見し、病気にならないように行動を変えるものがいる。しかも、明らかな症状が現れる前に気付ける場合すらある。

 例えば、ミツバチは病気の個体を容赦なく追い払う。

 ミツバチの場合、アメリカ腐蛆病(ふそびょう)のような細菌性疾患は特に破壊的で、コロニーの幼虫が感染すると体内から液化してしまう。「アメリカ腐蛆病はその名の通り、幼虫が腐る病気です。死亡した幼虫は茶色く糸を引き、ひどい悪臭を放ちます」と、米ノースカロライナ州立大学昆虫学植物病理学部の博士研究員アリソン・マカフィー氏は説明する。

 氏の研究によれば、感染した幼虫は、オレイン酸、ベータオシメンといった“死のフェロモン”を放出するという。成虫たちはそのにおいに気付くと、文字通り、病気の個体を巣から放り出すとマカフィー氏は話す。

 この進化的適応によって、コロニーの健康が守られているため、養蜂家や研究者は数十年にわたり、この行動が受け継がれるよう品種改良を行ってきた。現在の米国を飛び回っているのは、品種改良された「衛生的」なミツバチだ。

ポリオにかかったチンパンジーの悲劇

 霊長類学者のジェーン・グドール氏は1966年、タンザニアのゴンベ国立公園でチンパンジーを研究していたとき、ポリオ(小児まひ)になったマクレガーという個体を観察した。感染力の強いポリオウイルスによる感染症だ。

 仲間たちはマクレガーを攻撃し、群れから追放した。あるとき、体の一部がまひしたマクレガーが、樹上でグルーミングしている仲間たちに近付いた。マクレガーは社会的接触を求め、あいさつしようと手を伸ばした。しかし、仲間たちは立ち去り、振り返ることすらなかった。

 グドール氏は1971年に出版した著書『森の隣人―チンパンジーと私』のなかで、「年老いたチンパンジー(マクレガー)は2分間にわたり、じっと彼らを見つめていました」と振り返っている。

 1985年、氏は米国のサン・センチネル紙の取材に対し、「このような悲劇に対する反応は、現代の人間社会とそれほど変わりません」と述べた。

 グドール氏は研究の過程で、ポリオに感染し追放されたチンパンジーの事例をほかにも記録している。ただし、感染した個体が再び群れに迎え入れられたケースもあると補足している。

 人間と同様、チンパンジーは視覚に頼る生き物だ。ポリオに感染した個体が汚名を着せられるのは、外見が損なわれることへの恐怖と嫌悪が原因だと示唆する研究もある。恐怖や嫌悪という感情はそれ自体、奇形を催す病気を回避する戦略の一部だ。

アメリカイセエビは感染力が生じる前に避けられる

 すべての動物が病気の仲間を攻撃するわけではない。病気をうつされないよう、ただ避けるだけの場合もある。

 キーセッカー氏が1990年代後半にウシガエルのオタマジャクシの研究を開始する前、野生の群れにおける病気の拡大を予測するモデルは、感染した個体との接触は偶然によるものだと仮定していた。

 つまり、病気に感染する確率はどの個体も同じということだ。

「しかし、間違いなく、動物はもっと賢い生き物です」とキーセッカー氏は言う。

 キーセッカー氏の実験では、オタマジャクシは致命的なカンジダ菌への感染を見抜けただけでなく、健康な個体は感染した個体を積極的に避けていた。オタマジャクシはミツバチと同様、化学的な信号によって病気の個体を判断する。

 社会的な動物であるアメリカイセエビも、病気の仲間を避ける。しかも、まだ病気をうつす段階にない個体まで判別できる。

 アメリカイセエビに感染するある致死性のウイルスが、病気をうつすようになるまでの期間は通常約8週間だ。だが、病気の個体は早ければ感染の4週間後には避けることができる。病気の個体から放出される特定の化学物質を嗅ぎ分けられるようになるためだ。

 

寄生虫のいないパートナー求む

 多くの種は繁殖の際、健康な相手を選択する。

 例えば、ハツカネズミのメスは、パートナーの候補が病気に感染していないかどうかをにおいで判断できる。カナダ、ウェスタンオンタリオ大学の研究チームによれば、オスの尿から寄生虫に感染しているにおいがした場合、メスは別の健康なオスに乗り換える可能性が高いという。

 グッピーのオスもお相手から同様の探りを入れられる。グッピーのメスは圧倒的に、寄生虫のいないパートナーを好む。ひれをたたむ、体の色が薄いといった視覚的なヒントと、感染した皮膚から放出される化学物質を手掛かりに、メスは病気のオスを遠ざける。

 このように、様々な動物に社会的距離戦略があるわけだが、重要なことが1つある。動物は私たちと異なり、「自宅にとどまれば、感染率が下がる」ことに気付いていないと、キーセッカー氏は説明する。「私たち人にはその能力があります。そこが大きな違いです」

文=SYDNEY COMBS/訳=米井香織

 

 

元祖スーパースプレッダー「腸チフスのメアリー」が残した教訓

本人は無症状のまま51人が感染、3人が死亡
2020.03.23 ナショナル ジオグラフィック日本版
 

ジョージ・ソーパーはいわゆる探偵ではなかった。彼は土木技師だったが、公衆衛生の専門家のような存在になっていた。そのため1906年、米国ニューヨーク州ロングアイランドの家主が腸チフスの発生源の追跡に苦労していたとき、ソーパーに声がかかった。その夏、家主はある銀行家の家族と使用人にロングアイランドの家を貸していた。8月後半までに、この家に暮らす11人のうち6人が腸チフスに感染したのだ。

 ソーパーは以前、ニューヨーク州の職員として感染症の調査を行っていた。「『エピデミック・ファイター』と呼ばれていました」とソーパーは後に記している。腸チフスの場合、1人の保菌者から感染が広がることもあると、ソーパーは考えていた。ロングアイランドを訪れたソーパーはメアリー・マローンという料理人に目を付けた。1人目の感染者が出る3週間前、マローンはこの家にやって来ていた。(参考記事:「新型コロナと闘うイタリア、ベネチアで今何が起きている?」

 ソーパーのこの発見は、無自覚な保菌者がいかにして感染症の発生源になるかを実証した。そして後に、公衆衛生と個人の権利を巡る論争を引き起こすことにもなった。

 ソーパーは1900〜1907年に夏の別荘でマローンを雇ったニューヨークの富裕層をくまなく調査し、22人の感染者を突き止めた。腸チフスは細菌性の感染症で、通常、チフス菌に汚染された食物や水を通じて感染する。感染すると高熱、下痢などの症状が現れ、抗菌薬が開発される前は、せん妄が見られることや死に至ることもあった。(参考記事:「アステカ人の大量死、原因はサルモネラ菌か」

 当時は公衆衛生の慣行を定めた法律が存在しなかったため、腸チフスはありふれた病気で、ニューヨークは何度も集団発生を経験していた。ソーパーが調査を開始した1906年、ニューヨークでは腸チフスの死者が639人報告されている。しかし、集団発生の感染源を追跡し、1人の保菌者に行き着いた前例はなかった。もちろん、無症状の保菌者を突き止めた前例もない。

 ソーパーによる調査の結果、マローンは日曜日になるとしばしば、生の桃を添えたアイスクリームを出していたことがわかった。加熱した料理に比べると「料理人にできるのは細菌が付着した手を洗うことくらいしかなく、家族へ感染してしまったのでしょう」とソーパーは推測している。(参考記事:「感染の原因、私たちはなぜ知らない人と握手するのか?」

ついに感染源を突き止める

 調査の開始から4カ月後、ソーパーはパーク・アベニューの富豪の家で働くマローンを発見した。ソーパーは後に、マローンはアイルランド生まれの37歳の料理人で、「身長は約168センチ。金髪、真っ青な目、健康的な肌色。口と顎に強い意志を感じる」と詳述している。マローンは証拠を突き付けられ、尿と便のサンプル提供を求められたとき、ソーパーにカービングフォーク(肉料理を切り分ける時に使う大型のフォーク)を向けて追い返した。

 続いて気鋭のS・ジョセフィン・ベイカー博士が派遣され、マローンの説得にあたったが、やはり追い払われてしまった。父親を腸チフスで亡くしたベイカーはその後、自身の使命として予防医学の推進に取り組んだ(そして、女性として初めて公衆衛生の博士号を取得した)。「私たちを信じることができなかったのは、メアリーにとって悲劇でした」とベイカーは振り返っている。

 最終的に、マローンはベイカーと5人の警官によって病院に連れて行かれた。マローンは脱走を試み、成功しかけたが、検査の結果、腸チフスの原因菌であるチフス菌が検出された。そしてブロンクスの川に浮かぶ小島ノース・ブラザー島にあるリバーサイド病院の敷地内の小さな家に隔離された。

 マローン自身は腸チフスの症状はなく、自分が感染を広げていることを信じなかった。自身に症状が見られなかったこともあり、保菌者の意味を理解していなかった可能性が高い。医師たちはマローンに、唯一の治療方法は胆のうの摘出だと伝えたが、マローンは拒絶した。1909年、「ニューヨーク・アメリカン」紙で「腸チフスのメアリー」と報じられ、マローンはその後もこの名前で呼ばれた。(参考記事:「ペスト医師、奇妙な「くちばしマスク」の理由」

 1909年6月、マローンは弁護士に手紙を書き、「まるでのぞき見されているような気分です。研修医たちもわざわざやって来て、すでに全世界が知っている事実について私に尋ねます。結核の男性たちにも『彼女だ。さらわれた女性だよ』と言われます」と不満を口にしている。「ウィリアム・H・パーク博士はシカゴで私の事例を紹介しました。パーク博士自身が侮辱され、新聞で報道され、彼や彼の妻が『腸チフスのパーク』と呼ばれたらどう感じるでしょうか」

 1909年、マローンはニューヨーク市衛生局を訴え、この裁判は最高裁判所で争われた。世論という法廷でも、マローンは個人の自主性や、公衆衛生の危機における州の責任を巡る論争を巻き起こした。実際の裁判では、マローンの弁護士が、マローンは適正な手続きなしに拘束されたと主張した。

 裁判所は「社会を感染症拡大から守らなければならない」と説明し、マローンの釈放を認めなかった。しかし1910年の初めに衛生局のトップが変わり、マローンは自由の身になった。釈放の条件は料理人の仕事を辞めることだった。

 それでも、ほかに得意なことがなく、自分の状態が危険だという意識もなかったため、マローンは料理人の仕事に戻り、ニューヨーク州やニュージャージー州で働いた。勤務先はホテル、ブロードウェイのレストラン、スパ、下宿など。ところが1915年、スローン産科病院で25人が腸チフスに感染し、ソーパーが再び調査を依頼された。そこで働く料理人の「ブラウンさん」がマローンだった。

四半世紀に及ぶ隔離生活

 マローンは再びノース・ブラザー島に送られ、二度と出ることはなかった。彼女は本を読んだり、研究室で医学検査の準備の仕事をしたりして毎日を過ごした。1938年、マローンは脳卒中で死去。四半世紀に及ぶ隔離生活だった。マローンは腸チフスの保菌者であることを決して認めず、おそらく理解に必要な教育を受けていなかったため、実際に信じていなかった。ブロンクスのセント・ルークス教会で葬儀が行われ、9人が参列した。(参考記事:「新型コロナ、都市の封鎖や移動制限はどうすべき?」

 マローンを感染源とする2度の集団発生で、少なくとも51人が腸チフスに感染し、3人が死亡した。おそらく実際の感染者ははるかに多い。「『腸チフスのメアリー』の物語は、他者への感染を防ぐよう感染者に教えることがいかに難しいかを示しています」とソーパーは警告している。

 マローンが死去したころには、当局はそうしたスーパースプレッダーへの対応を見直していた。当時、ニューヨークの当局は腸チフスの健康保菌者(菌を保有していることが確認されているが、菌による症状を発症していない者)を400人以上特定していたが、強制的に隔離されている保菌者は一人もいなかった。(参考記事:「新型コロナウイルスに感染するとこうなる」

「腸チフスのメアリー」が無症状の感染源として残した教訓は、「スーパースプレッダー(多くの人への感染拡大の感染源となった患者)」の理論へとつながった。そうして感染症が集団発生するたび、その存在が取り沙汰される。ソーパーは1913年の講演で、「『腸チフスのメアリー』が発見されて以降、感染症と保菌者の問題が計り知れないほどの重要性を持つようになりました」と述べている。「効果的な公衆衛生対策が行われているすべての国、感染病がコントロールされているすべての軍で、この重要性は認識されています」

文=NINA STROCHLIC/訳=米井香織