65歳以上の高齢者は4割に!? 2022年4月から年金制度はどう変わる?

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◆高齢者人口は2024年にピークとなります

総務省統計局のデータ(2019年)によると65歳以上の高齢者人口は約3588万人であり、日本における総人口の28.4%を占めています。

65歳以上の高齢者は日本人口の28.4%です

▼年齢区分別人口の割合の推移

また国立社会保障・人口問題研究所が出している人口推計によると、高齢者人口は2024年にピークを迎え3935万人(総人口の36.1%)まで増加したのち減少に転じますが、一方で出生率の低下もあり比率としては36~38%のまま推移すると考えられています。

このような現状を踏まえ、国は老齢者が活躍できるよう働きやすい制度を整える一方で、年金についてもさまざまな見直しを行っています。

ここでは、高齢化社会におけるさまざまな改革をまとめてみました。

◆老齢者の働く環境の制度改革:70歳までの就業機会確保措置の導入

働く意欲のある高齢者がいつまでも活躍できるよう、努力義務ではありますが企業には70歳までの「高年齢者就業機会確保措置」が求められることになりました(2021年4月施行)。

これまでも企業には「定年制の廃止」「65歳までの定年引き上げ」「希望者全員の65歳までの継続雇用制度の導入」いずれかの「高年齢者雇用確保措置」が義務付けられていましたが、年齢の70歳への引き上げに加え、新たに「創業支援措置」を含めた措置が求められたわけです。

高年齢者就業確保措置には創業支援措置が新たに加わりました

▼創業支援措置

・フリーランスや自営業となる社員との業務委託契約を結ぶ
・社会貢献事業へ従事することへの支援

「創業支援措置」を新たに加えた今回の改正は、65歳以降の高齢者にとっては働き方の多様性を広げるとともに、企業にとっても雇用契約によらない措置を取ることが可能になるため、社会保険面などでのコストを抑えることができるのではないでしょうか。

《参考》厚生労働省「高年齢者雇用安定法改正の概要」

◆年金制度改革1:在職老齢年金制度の緩和

現在、老齢厚生年金をもらいながら働く場合、年金額と賃金の月額合計が60~64歳であれば28万円、65歳以上ならば47万円を超えてしまうと、その超えた全部または一部の年金が減らされる「在職老齢年金制度」というものがあります。

これが2022年4月からは60~64歳の方も47万円に緩和されることになりました。まだ気力も体力も十分なシニア層にとって、働くと年金がカットされてしまうのではモチベーションが下がるとの意見がありましたが、この緩和で60代前半の方も賃金をあまり気にせずに働くことが可能になるのではないでしょうか。

2022年度から在職定時改定制度が導入されます

◆年金制度改革2:在職定時改定の導入

現在の制度では65歳以上で老齢厚生年金をもらいながら働く方は、退職し厚生年金を脱退しなければ年金額の改定が行われませんでした。これが2022年4月以降は退職せずとも65歳以降に払い込んだ保険料は毎年10月分からの年金額に反映されることになります。

働きながら老齢厚生年金を受給する一方で年金保険料も払っている方にとっては、払い込んだ保険料が毎年の年金額に反映することはモチベーションアップにつながるのではないでしょうか。

年金受給開始年齢が75歳まで選択可能になります

◆年金制度改革3:年金受給開始年齢の拡大

年金受給開始年齢は本来65歳ですが、本人が希望すれば60~65歳の間で受給を開始できる「繰り上げ受給」もしくは66(注1)~70歳の間で受給を開始できる「繰り下げ受給」を選ぶことができます。

なお制度の利用にあたっては繰り上げ1カ月あたり年金額が0.5%減額、繰り下げ1カ月あたり年金額が0.7%増額されます。

2022年4月以降は繰り上げによる減額率が0.5%→0.4%(注2)と引き下げられる一方で、繰り下げの増額率は0.7%と変わりませんが受給開始可能年齢が75歳(注3)まで広がります。

老後の働き方や資金状況などにあわせて、より受給の繰り上げ、繰り下げの選択枝が広がると言えるでしょう。

(注1)65歳0カ月~65歳11カ月までの間は繰り上げできないことに注意が必要
(注2)2022年4月以降に60歳になる方から適応、現在繰り上げ受給者の減額率の変更はない
(注3)2022年4月以降に70歳になる方から選択可能

《参考》厚生労働省「年金制度改革法(令和2年法律第40号)」

◆まとめ

いかがでしたでしょうか。将来的に65歳以上の高齢者が人口の4割になることを踏まえ、国は高齢者に対する各種の制度改革を行っていることがおわかりになりましたでしょうか。

今後高齢者が増えていくにつれ、高齢者を対象とした施策は拡充していくと思われます。それを踏まえた上で、現役時代から老後のライフプランを考え準備しておけば、より充実した老後が送れるようになるのではないでしょうか。

文:川手 康義(マネーガイド)

あるじゃん(All About マネー)

老化は「治せる病」 最新研究が示す“最大寿命まで健康に若々しく生きる”可能性〈AERA〉

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老化に関する考え方が変わりつつある。最大寿命は変えられないが、老化はコントロールできる病であるという。一体、どういうことなのか。AERA 2022年1月17日号では、最新研究にもとに専門家が解説する。 *  *  * 

 竹取物語の昔から、不老は人の夢だ。いま、最新の研究はどうなっているのか。近畿大学奈良病院教授で同大学アンチエイジングセンター教授の山田秀和さんは、こう話す。 

「『老化』というものに対する考え方が、この10年弱で大きく変わり始めました」  

山田さんによると、「老化」と「寿命」は別問題だという。 「人間の平均寿命は延びる傾向にありますが、最大寿命は120年ほどで変わっていません。つまり、最大寿命は変えられない。けれども、老化はコントロールすることができる、治せる病であると私は考えています」

 ■「老化」の謎に迫る研究  

 

では、最大寿命は何が決めているのか。その謎に一歩近づくための概念の一つが、「エイジング・クロックス」(生物学的老化時計)だ。どのような因子が生物学的な老化に影響を与えているかを解析し、老化ペースを示す、生物学的な年齢指標だ。  

計測する項目(バイオマーカー)の対象となるのは代謝や免疫だけでなく、心血管、口腔、脳、視覚、聴覚、呼吸器、骨、筋肉、腸内細菌など多岐にわたる。現状、バイオマーカーの選択によってさまざまなエイジング・クロックスが乱立しているが、山田さんが注目するのは2013年に発表された「エピジェネティクス・クロック」という概念だ。  

遺伝子の情報は、DNAを構成するA(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)という4種類の塩基の並び方、すなわち塩基配列によって決まる、というのが従来の遺伝学(ジェネティクス)の考え方だ。 「ところが、DNAの塩基配列を変えることなく、遺伝子を調節しその働きを決める他の仕組みがありそうだということがわかってきた。これをエピジェネティクスと言います」

 

 たとえば、シトシンにつく水素がメチル基に代わる「DNAのメチル化」という変化は、遺伝子発現パターンを調節する。このDNAメチル化には、外部の環境因子の働きかけが関係し、結果的に老化を引き起こしているということがわかってきているという。 「メチル化を防ぐには、適切な『運動』や『食事』、睡眠やストレス対策などを含む『精神』、自身の腸内環境から光や水、大気、汚染までを含む『環境』の四つの要素が関わっています。この研究が進めば、いずれは健康寿命=最大寿命になり、若いときと同じクオリティーで生活できるようになるかもしれません」

 (編集部・小長光哲郎、ライター・羽根田真智) ※AERA 2022年1月17日号より抜粋

 

>何年か前、孫へ骨髄提供するために南米でテロメアを伸ばす手術した結果、

20代に若返った米国女性CEOの、オカルト系ニュースを見たことあるけど、

そんな感じで若返れるならともかく、
老眼や、体力・肌の衰えや、固有名詞がなかなか出てこない認知症の初期段階とか、

判断力や思考力の鈍化を抱えたまま寿命だけ伸びてもしんどいわ

 

「平均寿命」が全国上位のなぜ? 滋賀に元気なお年寄り多い秘けつとは

 大津市の民家の庭をせん定に訪れた、安土吉昌さん(80)=同市。冬の寒さの中でも手際よく松の枝を切り、形を整える。「外で体を動かす時間が好き。まだまだ地域の役に立ちたい」と笑顔を見せた。 【写真】元気に働く80代の男性 

 市シルバー人材センターに登録し、週3日程度のペースで作業している。近年、全国有数の長寿県となった滋賀県は、安土さんのように元気で働く高齢者が少なくない。  厚生労働省の2017年調査によると、滋賀の男性の平均寿命は全国で最も長い81・78歳、女性も87・57歳で4位と上位につける。その秘けつとは。  食塩摂取量が少ない、スポーツをする人が多い、酒の消費量が少ない―。「県民のさまざまな生活習慣や環境が相関していることが分かってきた」。県職員として約30年にわたって健康施策に携わり、県衛生科学センター所長も務めた梅花女子大(大阪府茨木市)教授の井下英二さん(66)は説明する。  減塩対策をはじめ、県民を挙げて健康づくりに取り組んだ。たばこ対策もその一つ。滋賀では特に男性の喫煙率が全国平均に比べて高く、井下さんは「喫煙習慣を減らすことが健康づくりに欠かせないと考えた」と振り返る。  県は01年、喫煙率の目標値を定めた健康増進計画をまとめ、公立学校の敷地や県タクシー協会加盟のタクシーの車内を禁煙に。結果、国が20歳以上の男性を対象とした16年の調査で、喫煙率は全国で最も低くなった。  飲食店を対象にした「受動喫煙ゼロのお店」認定制度も04年に設けた。登録するラーメン店「大津・天下ご麺」(大津市)は、制度開始と同時期の開店当初から店内禁煙だ。店長の村中正和さん(54)は「限られた時間や場所でも、喫煙しない習慣の積み重ねが健康や長寿につながれば」。  県は長寿県の要因の一つに、60歳以上に占めるシルバー人材センター会員登録数の多さがあると分析する。18年度の独自調査では全国2位だった。県シルバー人材センター連合会の中島克也事務局長(58)は「県内各センターが職種の拡大に力を入れ、会員のニーズにきめ細かく応えられていることが理由では」とみる。  生きがいや自己実現といった精神的な充足感も関わりがあるかもしれない。元教諭の伊澤治さん(64)=同市=は定年を待たずにいったん退職したが、「もう一度、社会とのつながりがほしい」との思いから、約4年前に市シルバー人材センターに登録。今は市内の児童クラブの支援員として働く。  「経験を生かしつつ老後も生き生きと働ける環境が、精神的な健康にとても大事だと感じる」。伊澤さんはそう言って、楽しそうに遊ぶ子どもたちに優しいまなざしを向けた。

 

>大津市民になって15年。
適度に都会で、適度に田舎で、そのバランスがええんやと思う。

 

>以前滋賀に住んでました。長生きの人が多いのが、何となくわかります。

まず都会みたいなストレスがありません。余分な誘惑もありません。滋賀でも都会的な街はともかく、平均的な都市在所の年寄りは、8割方の人が畑で野菜を作るなどをしてます。

昼は毎日のように畑にて農作業です。そして週に何日かは、みんなでグランドゴルフかゲートボールです。それが日々のルーティンです。都会みたいに、喫茶店やパチンコはしません。

季節を肌で感じ、適度の疲れで就寝です。実に健康的な暮らしです。

 

>最新版 都道府県健康寿命ランキング(厚労省調べ)
滋賀県 男性 72.30歳 16位
    女性 74.07歳 42位

 

>うちの父は70を超えてますが、雪が積もると町内中の雪かきをしています。
もう危ないし玄関近くだけにしたら?って声かけると、

若いもんがやらずにどうするって言われました。高齢化の現実です。

 

>田舎の若者が居つかない県です、年寄が巾利かしぎ。
山手の村に若者は本当に少ないですが、その若者は

車で30分位の新興住宅地に土地を買って世帯を持っています。

 

70代が「老い」の分かれ道、よぼよぼの80代にならないための過ごし方

 人生100年時代。現在の70代の日本人はかつての70代とは違います。若々しく、健康になった70代の10年間は、人生における「最後の活動期」とも言えます。70代の過ごし方が、その人がどう老いていくかを決めるとも言えます。要介護状態を遠ざけ、自立した80代以降の老いを迎えるためには、どう過ごせばいいしょうか。30年以上にわたって高齢者専門の精神科医として医療現場に携わってきた和田秀樹さんの『70歳が老化の分かれ道 若さを持続する人、一気に衰える人の違い』(詩想社新書)から抜粋します。 

 

● 平均寿命は延びたが 健康寿命は男女とも75歳に届かず  

人生100年時代ということが語られて久しくなりましたが、実際に人々、とくに女性は90代まで生きることが当たり前の時代になりました。おそらく今後も医学の進歩が進むでしょうから、100歳というのは夢物語ではなくなることでしょう。  ところが日常生活にまったく制限なく生きていられる健康寿命の延びは、平均寿命の延びに追いついておらず、男女とも75歳に届いていません。  要するに、70代をうまく生きないと、長生きはできてもよぼよぼとしたり、介護を受ける期間の長い高齢者になってしまうということです。  一方で、高齢者というのはとても個人差の大きい年代です。  2016年の時点で、男性の健康寿命の平均は72.14歳、女性は74.79歳ということになっていますが、これはあくまで平均値です。男性でも80歳を過ぎて矍鑠(かくしゃく)とした現役の経営者や学者、そしてフルマラソンを走るような人がいる一方で、60代から要介護状態に陥ってしまう人がいます。

 ただ、一般的には70歳の時点ではまだ頭も身体もしっかりしているという人が大多数であるはずです。ここで、どのような生き方をするかでいつまで元気で頭のしっかりした高齢者でいられるかが決まってくるのです。  私が長年高齢者とかかわってきて、痛感してきたことはいくつかあります。  気持ちが若く、いろいろなことを続けている人は、長い間若くいられる。  栄養状態のよしあしが、健康長寿でいられるかどうかを決める。  そして、それ以上に重要なのは、人々を長生きさせる医療と、健康でいさせてくれる医療は違うということです。  たとえば、コレステロールというものは長生きの敵のように言われていますが、コレステロールの高い人ほどうつ病になりにくいし、それが男性ホルモンの材料なので、男性ではコレステロールが高い人ほど元気で頭がしっかりしています。  血圧や血糖値にしても、高めのほうが頭がはっきりするので、薬でそれを下げると頭がぼんやりしがちです。また、高血圧や高血糖に対して塩分制限や食事制限が課されることが多いわけですが、生きる楽しみを奪われたり、味気ないものを食べることになるので、元気のないお年寄りになりがちです。  ところが、日本では大規模調査がほとんどなされておらず、この長生きのための医療にしても、それで本当に長生きできるのかははっきりしないのです。実際、コレステロールが高めの人や、太めの人のほうが高齢になってからの死亡率が低いことが明らかになっています。  高齢者をあまり診ていない人による旧来型の医療常識に縛られず、70代をどう生きるかで残りの人生が大きく違うというのが、私の30年以上の臨床経験からの実感です。

 

 ● いまの70代は、 かつての70代とはまったく違う  

私はこれまで30年以上にわたって、高齢者専門の医療現場に携わってきましたが、日本人にとっては今後、70代の生き方が、老後生活において非常に重要になってくると考えています。  70代の生き方が、その後、要介護となる時期を遅らせて、生き生きとした生活をどれだけ持続できるかということに、大きくかかわっているからです。

 

 なぜ、70代の生活がその人の晩年のあり方を左右するようになってきたのか、まずはそこから本書を始めようと思います。  

現在の70代の人たちは、戦前生まれの人が70代になった頃と比べて、格段に若々しく、元気になってきました。  戦後の大幅な出生人口増加期に生まれた団塊の世代(1947~1949年生まれ)の人たちも、2020年にはみな70代になっていますが、この団塊の世代に代表される現在の70代は、少し前までの70代の人とは、大きく違います。身体の健康度、若々しさがまったく違うのです。  たとえば1980年当時、60代後半、つまり65~69歳の人のおよそ10%近くの人が普通に歩行することができませんでした。しかし、2000年には、正常歩行できない人が2~3%に激減しています。 

 

● 第2次世界大戦後 元気な70代が増えた理由  

私も高齢者を長年診ていますが、かつての70代はそれなりによぼよぼしていましたが、いまの70代はまだまだ元気な人が多く、10歳くらい若返ったような印象です。  

このような元気な70代が増えた理由には、第2次世界大戦後の栄養状態の改善が挙げられます。戦後の食糧難にあえぐ日本に、アメリカから余った脱脂粉乳が大量に送り込まれましたが、このころから日本人の栄養状態が改善します。 

 成長期の栄養状態が改善したことで、日本人の寿命は延び、体格もよくなり、現在の若々しい元気な高齢者を出現させています。  戦後の結核の撲滅については、ストレプトマイシンという抗生物質のおかげだと考えている人も多くいますが、実際はタンパク質を多くとるような栄養状態の改善が、免疫力の向上をもたらしたことによって可能となったのが真相です。  そもそもストレプトマイシンは結核になってからの治療薬であって、それが結核を激減させた理由にはなりません。結核を予防するBCG接種も、開始されたのは1950年ころからです。赤ちゃんのときに接種して、その効果で結核が減るとしても、統計に現れてくるのは少なくとも赤ちゃんが成長した10年後くらい、1960年代くらいからになるはずです。  しかし、結核の減少は、1947年くらいから始まっています。

これは、アメリカからの支援物資による栄養状態の改善時期と一致します。  

戦前の日本人も摂取カロリーでいえば、それなりにとっていましたが、タンパク質は驚くほどとっていませんでした。そのため免疫力が低く、結核で亡くなる人が多かったのです。

 

 それが戦後の栄養状態改善で結核が減り、若いときに死ぬ人が激減しました。これによって平均寿命が一気に延びたのです。若くして亡くなる人を減らすことが、平均寿命を延ばす大きな要因になります。  また、それと同時に日本人の体格も向上していきます。男の平均身長が170センチを超えたのが、1970年前後です。昔は子どもの頃の栄養失調もあって、小さい高齢者がときどきいましたが、いまではほとんどいません。  戦後生まれの人たちはこうして平均寿命を延ばし、体格も立派になって、健康で若々しさを保つようになってきたのです。その先駆けが、いま、70代を迎えている人たちなのです。 

 

● もはや70代は現役時代の延長で いられる期間となった  日本よりも栄養状態のよかったアメリカでは、これまでの世代とは違った元気な70代が、日本よりも一足先に社会に登場します。  1974年、アメリカの老年学の権威であるシカゴ大学のベルニース・ニューガートンは、それまで65歳以上を高齢者とみなしていた社会に対して、75歳くらいまでは、体力的にも、知的機能的にも中高年とたいして変わらないと提起します。そして、その世代を「ヤング・オールド」と呼びました。  さらに、75歳を過ぎるころから、認知機能が落ちてきたり、病気などで介護が必要な人も出てくる世代ということで、「オールド・オールド」と定義しました。これはのちに、日本における前期高齢者、後期高齢者という考え方につながっていきました。 

 

 しかし、ニューガートンがこの考え方を提唱した1970年代当時の日本では、まだ、75歳の日本人たちは、若いころの栄養状態も悪く、身体も小さく、老いるのがいまより早かったのです。そのため、アメリカの高齢者のように元気と言える状況ではありませんでした。  

それが1990年代に入ったあたりから、日本でも元気な高齢者が増えてきました。私は1988年から浴風会という高齢者専門の総合病院に勤めていましたが、多くの高齢者を診てくるなかで、次第にニューガートンと同じ考えを持つようになりました。  1997年には、『75歳現役社会論』(NHK出版)という本を著し、そこで、75歳くらいまでは、知的機能や体力、内臓機能など、中高年のころと大差なく、現役時代同様の生活ができるということを説きました。

 

 そして、当時からさらに20年以上が経ったいま、医療はさらに進歩し、70代の人の要介護比率も改善してきています。その現実を踏まえれば、現在の日本では、75歳ではなく、80歳までは、多くの人が現役時代のような生活を送れる可能性がある社会になってきたと言えるでしょう。  これまでは70代ともなると、大病を患ったり、病院での生活を強いられたり、介護が必要となったりする人もそれなりにいましたが、今後は、自立して多くの人たちが70代を過ごすことになっていきます。70代の10年間は、ある意味、中高年の延長で生活できる期間となったのです。  それは、人生における「最後の活動期」と言ってもいいと思います。70代が活動期になったからこそ、その過ごし方が、80代以降の老いを大きく左右するようになったのです。  70代であれば、身体も動くし、頭もはっきりしていますから、日々の生活の心がけ次第で、80代以降の健やかな生活につながります。  ただ、70代には特有の脆弱さもありますから、放っておいたら衰えは進みます。だから意図的に、心がけることが大事になってきます。 

 

● 「人生100年時代」に 70代はターニングポイント  

現代の日本において、70代の過ごし方が重要性を増してきた理由には、超長寿化によって、老いの期間がこれまでより延長するようになってきたという点も挙げられます。  そもそも、前述したように、これまで日本人は、戦後の栄養状態の改善によって、大きく寿命を延ばし、前の世代よりも若々しくなってきました。  かつて漫画『サザエさん』の連載が始まったのは1947年ですが、父親の磯野波平は当時、54歳の設定でした。いまの私たちから見ると、どう見ても60代半ばに見えます。それくらい、現代の日本人は若返ってきたのです。

 しかし、この栄養状態の改善が、人々の若返りや寿命の延びに寄与してきたのも、1960年くらいに生まれた人たちまでで終わったと私は考えています。実際、日本人の平均身長の推移も、戦後、急速に伸びてきましたが、ここ20年くらいは伸びが止まっています。もはや栄養状態の改善は、日本全体に行きわたり、そのことが寿命の延びを牽引していくという時代は終わっているのです。  しかし実際にその後も、日本人の平均寿命は延び続け、これからも延びていくと予想されています。これは、医学の進歩がそうさせるのです。  日本人は戦後に劇的に若返ってきた体験をしているので、「人生100年時代」などと言われると、いまよりさらに若返りが可能になり、寿命が延びていくと考える人もいますが、それは正しい認識ではありません。  80歳や90歳になっても、いまの70代の人たちのように元気に活躍できるようになって、人生のゴールがどんどん後ろにずれていくというのは幻想でしかありません。  若返るのではなく、医学の進歩によって、「死なない」から超長寿になるというのが「人生100年時代」の実像です。

 

 ● 伸長した老いの期間を 左右するのが70代になる  80歳にもなれば、みな老いに直面することになります。しかし一方で、寿命だけは延びていく。これは、私たちの人生設計を大きく変えることになるかもしれません。これまではせいぜい10年ほどだった「老い」の期間が、15~20年に延長する人生が標準になっていくからです。  今後は、伸長した老いの期間をどう生きるかが重要な課題になっていくでしょう。そして、その延長した老いのあり方を左右するのが、人生終盤の活動期である70代ということになります。  寿命がますます延びていく「人生100年時代」だからこそ、70代はますます重要性を増してきているのです。  本書では、運転免許を返納してはいけない、肉を食べる習慣が「老い」を遠ざける、運動習慣などの「老いを遅らせる70代の生活」、70代の人のかしこい医師の選び方などの「知らないと寿命を縮める70代の医療との付き合い方」、趣味を働いているうちにつくろう、高齢者の「うつ」の見分け方などの「退職、介護、死別、うつ……『70代の危機』を乗り越える」について紹介しています。

和田秀樹

 

老後の生活費を稼ぎたい!高齢者の働き方にはどんなものがある?

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ファイナンシャルフィールド

少子高齢化社会といわれる日本の総人口は、令和2年10月1日時点において1億2571万人で、その中で65歳以上は3619万人と、総人口に占める割合は28.8%となっています(※1)。今回は高齢者の方の働き方について考えていきます。

今の高齢者は日々の暮らしに困っている?

内閣府が60歳以上の方を対象に行った調査(令和2年度)の結果を見ると、経済的な意味での日々の暮らしに対して「困っていない」が31%、「あまり困っていない」が32.6%と、全体の約6割(63.6%)の方が生活に困ることがないと回答しています(※2)。 一方で「少し困っている」が25.3%、「困っている」が8.5%となっており、全体の3割を超える33.8%の方が日々の生活が困難だと感じているようです。 老後の生活に困っている方は、毎月いくらくらい生活費が足りないのか把握することで、例えば働いてどのくらいの収入を得たらいいのか、老後の働き方について考える目安になります。

図表1

出典:内閣府 「令和3年版高齢社会白書(全体版)第1章 高齢化の状況 第2節 高齢期の暮らしの動向」

日本の労働力人口で高齢者は全体の何割?

総務省の「労働力調査」を基に内閣府が公表している労働力人口の推移では、令和2年の労働力人口は6868万人です。そのうち65歳~69歳が424万人、70歳以上が498万人で、労働力人口全体で65歳以上の高齢者が占める割合は13.4%となっています。

図表2

出典:内閣府 「令和3年版高齢社会白書(全体版)第1章 高齢化の状況 第2節 高齢期の暮らしの動向」

高齢者はどんな働き方をしている?

高齢者はどういった形態の働き方をしているのでしょうか。男女での年齢別の雇用者数と雇用形態、および非正規雇用者の割合は以下の図のようになっています。

図表3

出典:内閣府 「令和3年版高齢社会白書(全体版)第1章 高齢化の状況 第2節 高齢期の暮らしの動向」 男性の雇用者は、65歳~69歳が153万人、70歳~74歳が92万人、75歳以上が36万人です。一方、女性は65歳~69歳が126万人、70歳~74歳が73万人、75歳以上が30万人となっており、どの年齢でも男性より女性の方が雇用者数は少なくなっているのが分かりかります。 また、60歳を境に非正規雇用の割合が増えていく傾向となっています。

 

高齢者は何歳まで働きたいと思っている?

以下は、内閣府が全国の60歳以上の男女を対象に、何歳ごろまで収入を伴う仕事をしたいのか調査を行った結果です。

図表4

出典:内閣府 「令和3年版高齢社会白書(全体版)第1章 高齢化の状況 第2節 高齢期の暮らしの動向」 全体の回答のうち、「70歳くらいまで」から「働けるうちはいつまでも」を合計すると約6割となっており、多くの方が老後も生活のために働いて収入を得る必要があると考えているようです。 また、収入がある仕事をしている方では、約9割の方が65歳以降も働きたいと回答しています。

老後の働き方を考える場合は?

会社にお勤めの方は、再雇用制度を利用して同じ会社で働くという選択肢もあります。人間関係も同じ、仕事の内容も同じなら、今まで培ってきたスキルが生かせます。 高齢者も仕事が続けられるように以下のような雇用のルールが設けられており、事業主には継続雇用や就業機会の確保といった措置の実施が求められ、それに伴う支援なども行われています(※3)。 ●厚生労働省による高年齢者の雇用ルール 1.65歳までの雇用機会の確保 ●従業員の定年を定める場合、定年年齢は60歳以上とする必要がある。 ●定年年齢を65歳未満に定めている事業主は、65歳までの安定した雇用確保のため、以下の3つのいずれかの措置(高年齢者雇用確保措置)を実施する必要がある。 (1)「65歳までの定年の引き上げ」 (2)「65歳までの継続雇用制度の導入」 (3)「定年の廃止」 なお、「継続雇用制度」とは事業主が雇用している高齢者を、本人の希望により定年後も引き続き雇用する「再雇用制度」などをいい、平成25年度以降、希望者全員を対象とすることが必要となっています。 2.70歳までの就業機会の確保(令和3年4月1日施行) 定年年齢を65歳以上70歳未満に定めている事業主、または継続雇用制度(70歳以上まで引き続き雇用する制度を除く)を導入している事業主は、以下のいずれかの措置の実施に努める必要があります(※3)。 (1)70歳まで定年年齢を引き上げ (2)70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度など)を導入(ほかの事業主によるものを含む) (3)定年制を廃止 (4)70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入 (5)70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入 

●事業主が自ら実施する社会貢献事業 

●事業主が委託、出資(資金提供)などをする団体が行う社会貢献事業

 

 また、再雇用以外でも定年退職後に新しい仕事に就き、老後は違う経験をしてみたり、資格や技能を生かして自分がやってみたいことを仕事にするなど、生涯現役を目指すこともできるでしょう。以下、定年後に考えらえる働き方の一例です。 ・現役時代に士業の国家資格を取得して経験を積み、定年後に開業 税理士、行政書士、司法書士など ・事務作業 パソコンの入力作業(データ入力や書類作成) ・パートやアルバイトで勤務(派遣会社に登録) スーパーやコンビニの店員などは、相談により時間帯が決められます。 ・シルバー人材センターに登録 【資格などがなくてもできる】 農作業(ハウス作業、田畑作業)、駐車場管理、公園・墓地などの清掃、草刈り、福祉・家事援助サービス、空き家管理、広報などの配布、検針・集金など 【技能がある場合】 剪定(せんてい)、床・壁紙・障子張り、大工、左官、和洋裁など

 

まとめ

人生100年時代といわれていますが、例えば65歳で定年退職をしたとしても100歳までは35年あります。この35年間を公的年金と貯蓄だけで生活ができるならば、働くという選択は必要ないかもしれません。 しかし、老後も働くことを生きがいにすることができたらどうでしょう。元気なうちは働いて、健康寿命を延ばすという考え方も大切ではないでしょうか。 

出典 (※1)内閣府 令和3年版高齢社会白書(全体版) 第1章 高齢化の状況 第1節 高齢化の状況 (※2)内閣府 令和3年版高齢社会白書(全体版) 第1章 高齢化の状況 第2節 高齢期の暮らしの動向 (※3)厚生労働省 高年齢者の雇用 (※4)厚生労働省 高年齢者雇用安定法Q&A(高年齢者就業確保措置関係) 執筆者:上山由紀子 1級ファイナンシャルプランニング技能士 CFP(R)認定者