2016年お初SSは一葉らしく長いです(#⌒∇⌒#)ゞ
少しでも楽しんで頂けたら嬉しいです。
…うん?一葉だからやっぱり原作沿い両片想い蓮キョなんだろうって?
そうですね。原作沿いはともかく、両片想いからのスタートなのは確かですよ。あはははは。
■ 初夢が見せた正夢 ■
今年、最初に見た夢は、敦賀さんが出てきてくれた。
逢いたい…と思っていた人と
たとえ夢の中であっても逢えたのはとても倖せなことで
甘い笑顔で私を見つめてくれた敦賀さんのそれが
自分の願望が如実に表れたものだと判っていても、夢から目覚めた私を包んでくれていたのは超絶な幸福感だった。
今年一年、これを思い出すだけで乗り切れる気がするほど…。
「 ぎゃー!!見てるだけでさぶいー!! 」
「 本当に寒いですね。暖冬とか言っても寒い時はやっぱり寒いですよね 」
「 ねー!もう私なんか冷え性だから大変よー。京子ちゃんは平気な人? 」
年明け早々スタジオ内でドラマの撮影をしていた私は、休憩時間のたびに寒風吹きすさぶ外の様子を、同じく撮影でご一緒させていただいている女優さんたちとざわめきながら眺めていた。
寒々とした景色ではあったけど、同じ年頃の女の子との雑談は京都にいた頃には無かったことだから素直に楽しい。
「 普通だと思いますよ。…あ、少し太陽が出て来たみたいです 」
「 わ、本当だー。少しはマシになるかもー 」
すでに室内での撮りは終わっていて
いつになるのかとソワソワしていたところで
誰の口からも良かった、と声が漏れた。
ようやく太陽が出てきましたよ、と敦賀さんに報告をすべく、私は元気よく踵を返す。
メンズコレクションのファッションショーを控えていると言っていた敦賀さんは、いつの間にそれを始めていたのかスタジオの隅でウォーキングをしていて、私は声をかけることも忘れ足を止めたその場で息を呑んだ。
「 …う、わ…すご… 」
こういう姿を見ると改めて実感する。
敦賀さんは、役者としてだけではなくモデルとしても超一流の、本気で雲の上の人なのだと。
実際、敦賀さんのウォーキングは本気で凄かった。
練習だとは判っていても、私の視線はもちろんこれ以上ないほど敦賀さんに釘付けで
華麗で優美なのに
どこか勇ましく潔く歩を進める姿はどこから見ても凛々しくて、熱い溜息しか出てこない。
この世にこんなにもカッコいい人がいるのか、と
改めて惚れ惚れとしながら私は心の中でひたすら感嘆を繰り返していた。
「 うわ…。やっぱりカッコいいわよね、敦賀さん 」
「 …ええ、そうですね 」
「 ね。衣裳のスーツなのにコレクションの一つみたいに着こなしているし… 」
「 ほんと、なんであんなにキマルんですかね 」
「 実際、同性から見てもカッコいいっすよ!敦賀さん、さすがです 」
「 あ、撮影開始はもうちょっと後になるそうですー 」
「 はーい 」
立ち止まった私に気付いた何人かのスタッフさんも
同じように敦賀さんに視線を移すとそこであの人に釘付けとなった。
その口からこぼれるのは感嘆の溜息ばかり。
「 ヤバイ!やばいぐらいカッコいいっす!! 」
「 一つ一つの動作が…なんていうか見る者を惹きつけるって言うか… 」
「 こんな所で敦賀さんのこういう姿を見られるなんて、私たちラッキーよね 」
「 うん!本当に。ドラマ衣装だけど… 」
「 それでも充分じゃない? 」
「 京子ちゃんはいいなー。敦賀さんと同じ事務所だもんね 」
「 そんな…。私だってみなさまと同じ心境ですよ。ラッキーって、それしか… 」
称賛の声は、けれど敦賀さんの気を散らさない様にひっそりと交わされていた。
誰もが遠巻きに敦賀さんを見つめていて、私は会話に混ざりながらもただ敦賀さんに視線を注いだ。
―――――― 敦賀さん。あなたは本当にすごい人です
役者としてだけじゃなく
モデルとしての仕事もこなしている敦賀さんは
自分がどうすれば素敵に見えるのかをきっと把握しているのだと思う。
人を惹きつける魅力を持った人。
並外れた才能をその身に溢れさせたあなたは、きっと誰よりも自由にこの世界を泳いでいるのでしょうね。
焦がれてやまない、愛しい人。あなたの凄さを見つけるたびに、私は懸命にならざるを得ない。
追いつくことは出来なくても、せめて、置いて行かれないようにと…。
複雑な感情を織り交ぜて敦賀さんを見つめていた私は
かなり大胆に大先輩を凝視していたに違いない。
舞台に見立てた一線を歩き終え、くるりと振り向いた敦賀さんと視線がかち合ったのは、もしかしたら敦賀さんが私の視線を感じたからかも知れなくて、敦賀さんはその場でピタリと立ち止まるとファンサービスよろしくニッコリと笑ってみせた。
「 きゃー!!敦賀さん、かっこいいですー 」
「 もっとやってくださーい 」
途端に撮影現場には黄色い声が飛び交う。そんな中、なぜか誘うような魅惑の笑顔を浮かべた敦賀さんが無言で私を手招きした。
「 ……え…? 」
気のせいかとも思ったけど
そこにいた誰もが敦賀さんから視線を移すと、その視線は私に集中する。
「 京子ちゃん。敦賀さん、呼んでいるみたいよ? 」
やっぱり、呼ばれているのは私よね。
文句を言われたりはしない気もするけど
浮かんでいる得体の知れない紳士スマイルを上目づかいで見守りながら一体なんだろうと恐る恐る近づく。
そばに寄った私を見ながら敦賀さんはもう一度ニッコリと笑って私の顔に近づいた。
「 最上さん、前にウォーキング教えたの、覚えてる? 」
「 はい。もちろん覚えていますよ。あれでナッちゃんを自分のものに出来たんですから… 」
そうよ。忘れる訳がない。
深夜だったのにそんなことなんてまるで無視して敦賀さんのお宅に押し掛けたことも
そんな私に敦賀さんが温かいコーヒーを淹れてくれたことも
そして明け方までずっと、敦賀さんに指導して頂いたことも…。
「 うん、じゃあね、今ここで俺と一緒に歩いてみようか? 」
「 え?ええっ!!???そんなことして敦賀さんが不調になったら嫌ですし、それにこんな人前でど素人の私がプロの方と並んで歩く…なんて恐れ多いです。私、いいです。辞退します! 」
それに、敦賀さんみたいなオーラのある人と私じゃ
ぜんぜん釣りあいそうにないですもん…
「 うん?じゃあ君はもし俺とドラマでそういうシーンがあったら、やっぱり出来ないって言うつもり? 」
あっ!ある意味、正当な切り返しをしてきました、この大先輩!
そんなことを言われたら立ち向かうしか手がありません。
そうよね。
出来ないって、自分で決めつけたら出来るわけないわよね。
よく考えたら、敦賀さんと私が釣り合っていないことなんて百も承知だったわ。
「 いえ、すみません。やっぱりやります!やらせて下さい 」
「 よし。ウォーキングにはいろいろなパターンがあるんだ。コレクションもね、男女で一緒に歩くのもあるんだよ 」
「 へぇ…。そうなんですか… 」
「 数は少ないけどね。これは遊びだから構える必要はないけど、でもウォーキングを学んでおくのは将来、君の役に立つかもしれないよ? 」
「 へ?将来? 」
「 そう。君は大女優になりたいんだろ?もしかしたらいつか、レッドカーペットを歩くことになるかもしれないだろ? 」
「 なるほど。備えあれば憂いなしですね。だったら遊びなんてとんでもないです。私、真剣にやらせて頂きます 」
「 ぷっ!…うん。君の前向きな所、すごくいいと思う 」
これはお遊びだから…と敦賀さんは言ったけれど、敦賀さんのそれはどれも本気で
だから私はそれこそ必死に食らいついた。
ドラマで使う小物をとっかえひっかえしながら
時折混ざる拍手に気を良くしてみたりして…。
スタジオ内の隅っこで繰り広げていたにも拘わらず、いつの間にか一定の間隔を隔てた場所に人だかりが出来ていたことにも気づかないほど真剣に。
「 京子ちゃん、うまーい! 」
「 ほんと。本当のモデルさんみたいよー 」
「 かっわいいー。素敵~ 」
ウォーキングを何度か繰り返し、思わぬ好反響に面食らった私は、思わずその場で立ち止まってしまった。
優雅に歩を進めて追いついてきた敦賀さんが
クスリ…と笑みを漏らして私の手を取り上げる。
持ち上げた手で器用に私を操った敦賀さんは、そこで私をくるりと一回転させた。
「 わ…!可愛い動き 」
「 ね。京子ちゃんがいま穿いているスカート、冬生地だから軽やかさはないけど 」
「 うん!それが逆にバルーンみたいに膨らんで可愛い 」
「 京子ちゃん、かわいいー! 」
「 敦賀さんもカッコいいー!!二人とも素敵ー 」
「 ほんと、お似合い~! 」
「 もっと見せてー 」
わ…。なんだかうれしい。
それにこの雰囲気、少しだけ初夢に似ているのよね。
初夢の中の敦賀さんは、とても穏やかに笑顔を浮かべていた。
そう…こんな風に。
優しく小首をかしげて
私の手を取ったまま、熱い瞳で私を見つめて
まるで王子様のように軽やかにひざまずいてくれて…
「 …え…?敦賀さん…? 」
どうしてそこであなたが私の足元に跪くんですか。
まるで
初夢の再現のように…
「 最上さん… 」
「 は…い? 」
これは夢とは違うわよね?
だったらどうして私の心臓はこんなにも激しく鼓動を刻むのかしら。
あの初夢は私の願望が見せた夢だったの。
だから正夢になんてなるはずがない…
「 俺、今年、初夢を見たんだ 」
「 は…つゆめ…? 」
「 そう。君とこうして向き合っている夢だった 」
「 …ふ…えぇぇ?そ、れは偶然、ですね。実は私も、そんな夢を見て… 」
さすがにセリフはまるで違うわって
私は頭の中でそう呟いていた。
だってそうでもなきゃ
変わらず注がれる敦賀さんからの熱視線に焼かれて倒れてしまいそうだったから。
「 そうなの?俺の夢は、ちょうどこんな感じだったんだ。
誰もが君を熱く見つめて、誰もが君をほめちぎっていて…。だから俺、こんな風に我慢がきかなくなってね… 」
「 ……がまん?…… 」
「 気付いたらもう、夢の中で君にプロポーズしてた 」
「 は?………はいぃぃぃぃ!??? 」
叫ぶと同時に傍観者たちがざわめいた。
どうやら私たちの会話は聞こえていないようで
これ自体が演出のように見えているらしいのが判ったけど
最上キョーコはいま、もうそれどころではありません。
「 最上さん。俺と結婚しよう? 」
ああああああぁぁぁぁぁ…!!
あり得ない!
それは夢の中のあなたのセリフですよ?!
でもいまのこれは現実でしょう!??
夢の中で私は敦賀さんを見つめながら
驚いて
でも嬉しくて
喜びに溢れた胸を抱えて、目を潤ませてしまったんですよ。
でもこれは現実!
現実のはずです!!
だからダメよ。目を潤ませてしまったら絶対、だめ!
「 ……つるがさん… 」
「 ん? 」
名を呼んで、返ってきたのは夢と同じ甘い笑顔で
これを思い出すだけで
今年一年、無事に乗り切れると信じられるほどそれは倖せな初夢だった。
でも…
「 いきなり結婚は嫌です 」
なぜか私は夢の中でそう言っていた。
すると敦賀さんはプッと吹き出して、ごめんね、と言って笑ったの。
そのまま魔法のデジャヴは続いてゆく…
「 ごめんね。だって俺、もう我慢できないんだ 」
「 だけど普通、順番を踏みますよね? 」
「 君は恐ろしく夢の通りのことを言うんだね?結婚してからのスタートはダメ? 」
あなたこそ。
夢の中のあれがまるで台本だったみたいに、夢の通りの切り返しをするんですねって言ってやりたい。
「 ダメな訳じゃないですけど、良くも無いって言うか… 」
「 ダメじゃないならOKってことじゃないか 」
「 そもそも、我慢できないって何が… 」
「 そうだな。君を名前で呼べないこととか、君と別々の場所に帰らなきゃならないこととか、君の食事を毎日食べられないこととか、自分が好きな時に俺が君を抱きしめられないこととか。
でも一番なのは、今のままだと俺が君を一人占め出来ないこと…かな 」
なに言ってるの、この人!!
その言葉、そっくりそのまま!!
あなたにそれをお返しします。
こんなにもスーパースターなあなたを独り占めなんて
私がそれを出来るはずがないもの!
「 最上さん…?返事、もらいたいんだけど…。
まさか、こんなに人目があるのに俺に恥をかかせたりとか、君、しないよな? 」
なに…それ。それって脅しにも聞こえますよ?
でも、そうだとしたら
なんてズルくて、なんて優しい脅し文句なんだろう。
どうしよう…。どうしたらいいの、私…
まさかこんな事が起こるなんて思ってもいなかったから
このままだと
この目に溜まり始めた涙が嬉しさを伝えてしまう…
「 …う… 」
「 夢の中の君はね、やっぱり、こんな風にダダをこねていたけど… 」
「 ダ…ダなんて、こねてませんよ… 」
「 こねてないの?じゃあ、夢と同じようにYESって言ってくれる?俺が思うにあれ、初夢じゃなくて正夢だと思うんだ 」
―――――― もう、信じられない。なんですか、その大きな自信は。
私はこの夢を見たとき
なんて幸せな初夢だったんだろう…で終わらせたっていうのに。
だけど本当に信じられないのは、いまここで繰り広げられている夢の中と同じ出来事。
それを敦賀さんも見たという。
それはなんて不思議な奇跡的偶然。
「 敦賀さん。私も…見たんですよ。正夢みたいな初夢を… 」
「 そうなんだ。その話はあとで聞かせて?いまは返事が欲しい。君からのイエスを… 」
夢の中の私は
あなたのその熱い視線と言葉に胸を締め付けられて
堪え切れずに、OKしていましたよ…
「 敦賀さん… 」
だから
私の答えは当然
YESしか有り得ない。
E N D
舞台の上でカッコよくプロポーズ♡とか思ったけど、現実的に(人様のコレクション舞台上でなんて)無理だろ…と思ってこんな風にしてみました。
初夢見て勇気もらってレッツゴー!って、どんだけなのだろうか、蓮君ったら。
でも、お年玉気分で読んで頂けたら…と思いました。今年も幸せ蓮キョ妄想で行きますよー!
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