GHOST 第1話 | 色即是空。虚構による化身でしかないのなら、せめて今を楽しくEnjoy your life

色即是空。虚構による化身でしかないのなら、せめて今を楽しくEnjoy your life

たとえ明日が見えて来なくても歩いて行きます。どこまでも。

俺、熊田 洪成 34歳 妻 有子 29歳 そして2歳になる息子の承(しょう)。

 

仕事は今、流行りのIT企業に勤めるサラリーマン。

 

どこにでもあるフツ―の家族である。

 

只今、物件物色中。

 

10年ほどになるが住んできたこの賃貸にもそろそろ飽き飽きしてきて

 

まもなく一戸建てをと考えている。

 

よく10年もの間、このボロい住居に住んできたと思う。

 

1階に建設会社を経営している大家が住んでいて

 

家が壊れた場合のメンテナンスがばっちりだったため、

 

10年もの間、文句ひとつなく住んできたともいえる。

 

4階建ての建物の一番上。

 

天空に近い4階に我が家がある。エレベーターなし。

 

独身の頃から住んでいて当時ではあるが破格の安い家賃に目を奪われ

 

栃木県から愛知県に移り住むようになった。

 

後悔したのは引っ越しの時である。

 

引っ越し業者に全て任せればいいのだが

 

あらゆるものを他人の手によって触られるのが嫌で

 

こまごましたものは自分で運ぼうと決めてしまった。

 

それがよくなかった。

 

4階まで何度行ったり来たりしたことか。

 

全て運び終えるころには足がパンパンになっていた。

 

それからというもの来る日も来る日も仕事との往復でこの賃貸のマンションには

 

毎日寝るためだけに帰ってきてるようなものだった。

 

やがてこんな俺にも生涯の伴侶が見つかり1男を設けることが出来た。

 

絵に描いたような幸せが慎ましくではあるが俺にもつかむことが出来たのである。

 

 

 

つづく

 

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