希望の星(前篇)


2006年7月12日 午前7時の通信 本井秀定

 

今から約3億6千万年前、

 

地球より遥か10万光年離れたところに、

エルデラ(エルダーまたはベーエルダー・ベータ)星という星があった。


エルデラは、

「神の栄光を表す」という意味であり、

自然環境と科学の調和の取れた、

とても美しい星だった。


人々の心は宇宙信仰に基づき、

誰もが慈愛に満ちて、

文明も大いなる発展を遂げ、

犯罪も病気も争いもない星だった。


人々の心の中は常に安らぎに満ち溢れており、

全宇宙の大調和実現のために働いていた。


彼らの大きな使命のひとつに、

宇宙に新しい星が誕生するごとに、

統率官一人とその民が選ばれ、

その星に移住し、

宇宙全体の進化と発展を促すことにあった。

 

ある時、

 

エルデラ星の13カ国の統率官(大統領)全員に、

宇宙意識からの通信が同時に舞い降りた。


「宇宙にまた一つの光系団(太陽系惑星)を誕生させました。

新たな発展と進化をそこで遂げなさい。」


新たな使命が下ったと、

各国の統率官は皆喜んだ。


しかし、

エルデラ星の最高指導者である一人アガシアだけは、

浮かぬ顔をしていた。


アガシアはランティと魂の分霊であり、

ランティ、そしてランティが治める民に、

その役割があることを事前に察知していたからである。


そして、

やはり13名の統率官の中から最も若いランティが選ばれた。


ランティが治める民は全員が喜びと活気に満ちていた。


「私たちが神から選ばれた」と。


その後、民の中から6千名が選出された。

 

アガシアは意識でランティと交信した。

 


「私はあなたとあなたの民が選ばれることは知っていました。

神もそれをお望みです。

神は調和と発展を望むためにこの大宇宙を作られました。

しかし、今回の旅はかなり困難に満ちています。

一人が統率するには荷が重過ぎます。

あなたも知っているように、

私たちの力が届かないエリアだからです。

・・・ランティ、

今回は他の統率官との共同移住を考えられたら如何ですか?

もしあなたさえ良ければ、

私が一緒に行っても構わないのですよ。」と。


それに対しランティは答えた。


「ありがとうございます。

今回はかなり困難な旅であることは重々承知しています。

それは、なぜ神が私をお選びになられたのかが分かるからです。

私は以前から発展と調和について疑問を持っていました。

もっと別な発展と調和の道があるのではないかと。

それを神が私に臨んでおられるような気がするのです。

・・・私一人で大丈夫です。」


「あなたは、

どのような星が神の目指す調和と発展だと思われるのですか?」

 

ランティは答えた。

 


「それは希望です。

確かに神は愛によってこの大宇宙を、

全生命体を創造されました。

愛は創造の源です。進化と発展、そして真の調和は、

その愛を育む希望から生まれるものだと思います。

希望を持つことから人類の営みが始まるのです。」


「しかしあなたの言う希望は、

魔の跳梁に遭えばそれは捻じ曲げられ、

欲や闘争を生むきっかけにもなるのですよ。」


「いえ、私は違うと思うのです。

私の思う希望は、

闇を照らし生命を育む光であり、

のどを潤す清らかな水です。

生きる力と言っても良いでしょう。

これは闇から光へ、

過去から未来へと進化・発展を望む神からのメッセージだと思っております。

調和とはその進化と発展に向かう途上にあると思います。

進化と発展が螺旋状に上昇することが調和なのです。

大宇宙も常に進化・発展しています。

進化と発展が止まった調和は、神の望む調和ではありません。

私は私に降りた神の啓示を信じます。

その星を準備したと、そしてその星に向かえと。

そしてその通りに私が選ばれました。」

 

「しかし、あなたの向かう星は魔も狙っているのです。

 

人々の意識が彼らに傾いたら、

その星は闘争と破壊を生むことしかないように見えます。

・・・やはり、あなた一人ではとても危険です。」


「しかしそれらを経て、

民が一人ひとり大いなる気付きさえ持てば、

新たなる人類の進化と発展、

そして調和が得られるかもしれません。」


「それは万に一つの大きな賭けになります。

しかし、

人々の欲が『夢と希望』、

闘争が『互いに競い合う発展』と言う形になれば、

この大宇宙の進化にもつながります。

・・・ところで、魔へのバリアはどうされるつもりですか?

魔に対して全く無防備で調和を図ることなどできません。

容易に意識を侵略されてしまいます。

そうなったら大宇宙にも影響が出て、

取り返しの付かないことになってしまうのですよ。」

 

ランティは答えた。

 

魔も神から存在を許されているものです

これから向かう星が、

魔の跳梁による完全支配となったとき、

私の思いが間違っていたことになります。

しかし神は決して人類をそのように作っておられない。

私たち人類は、

全て神による因子で作られ、

この3次元の支配者として委ねられています。

そして、なぜ魔も神からその存在を認められているのか、

それを知るためにも私たちは向かうのです。

よって、

敢えてバリアは張りません。

私たち一人ひとりの意識の発展によって、

一人ひとりの自覚の元に乗り越えていきます。

彼らは大いなる発展を遂げるための反面教師、

または心を磨くための、

砥石として存在しているかどうかの確認の意味もあるのです。」

 

「とても危険な考えです。

 

その考えは傲慢であり、

神を試すことにも繋がります。

また、魔の跳梁をみすみす許すことにもなります。

失敗したらあなた方の意識も、

その星も、

一切消滅されるかもしれないのですよ。

なぜそのように自ら苦難の道を選ぼうとするのですか?

なぜせめてバリアを張ろうとしないのですか?」


神が、

真の喜びを私たちに与えたいと願うからです。

苦難の後の喜びを私たちに与えようとしているからです。

新しい発展の形を私たちに望んでおられるからです。

それが魔への浄化にも繋がり、

宇宙の進化へと繋がる予感がしてならないのです。」


「・・・分かりました。

そこまで思っているのなら仕方ありません。

私たちも最大限の協力は惜しみません。

私とあなたは元々がひとつから分かれた分霊です。

そのあなたがこの地から離れるのはとても辛い。

私たちもいつか、

その星の新しい発展と進化のために

肉体を持って生まれることを約束します。

神の許しがあるならば・・・」

 

そして、

 

ランティ率いる選ばれた若者男女は、

目指す星に「新たな進化と発展、

そして調和」を実現するために肉体を持って旅に出た。


その星のビジョンを見せられていたランティは、

それを「希望の星」と名づけた。


太陽の光と緑の大地、

そして清らかな水に溢れた地球である。


母船とその上に1つ、

左右各3つの7つに分かれた巨大船団の移住者は、

男女合わせて総勢約6千人。


地球時間で約40年間かけて地球に辿り着いた。


意識は絶えず天上の世界と通じ調和が取れていたが、

当時の地球環境は重力、気候、酸素濃度、

オゾン層、水質等、彼らの星と余りにも違い過ぎ、

肉体的にも厳しい環境であった。


一つに、

肉体を維持するには食物を摂取しなければならない。


しかし地球上では彼らの食する食物が育たなかった。

 

到着してからしばらくは、

 

宇宙船の動力エネルギーと培養液、

そして今で言うバイオテクノロジーの技術によって

一時的に食料は確保できたが、

遂にそのエネルギー源も底をつく。


彼らは原生する原始シダ類、コケ類、昆虫等を摂取し、

何とか地球での生活が可能となるよう様々な工夫を行なった。


しかし、

慣れない生活の中での疫病の蔓延、

そして環境変化による体力の消耗が追い討ちを掛け、

このままでは全員滅亡の危機に瀕する。


「神はなぜ我々を救おうとしないのか」


「神は私たちを見捨てたに違いない」


「目的地はこの星ではなかったのではないか」


次第に人々からは、

不協和音が出始めるようになった。


それもそのはず、

神からと思われる言葉は、

出発してから一度も聴くことができなかったのである。

 

非難が船団の統治者であったランティに集中する。

 


「我々が移住する計画は、

神の命(めい)ではなかったのではないか」


バリアを張らなかったため、

既に魔の跳梁が始まっていて、

疑心が不満と共に徐々に広がって行く。


何度もランティから発せられる光の拡声によって、

何とか民は魔の跳梁から防ぐことができた。


ランティは必死だった。


これほどまでに、

人類の意識は弱いものだとは思わなかったからである。

 

時には、

 

魔からのバリアを張らなかったことに対して後悔もした。


そして、

崩れかかる民の意識を何度も何度も光で支えた。


しかし、

ランティは希望だけは捨てなかった。


何回も何回も民と話す機会を設け、

疑心を取り払う努力を続けた。

 

話し合いで決定したことは、

 

この地球で肉体を伴って生き続け、

太陽系現象界(この世)における子孫を定着することである。


これは太陽系実在界(あの世)の創造と共に、

神の命(めい)の最低基準であった。


そのために耐え抜こうと。


そして、

我々の肉体自身が、

地球環境に慣れるための努力を続けることである。


しかし、

地球上で作った作物は彼らの肉体には合わず、

無理して食すれば、

嘔吐と下痢を繰り返し、

誰もが衰弱の一途を辿っていった。

 

当時の彼らは、

 

成人男性で身長250cm、女性は220cm、

平均寿命は160歳であったが、

免疫力のない老人や子供から徐々に死亡していった。

 

当時は霊域との交信も常に行われていたので、

 

さほど死に対しては忌み嫌うものでもなかった。


そして、

肉体が滅んでも彼らには仕事があった。


実在界における霊域を作る作業である。


磁場が違うために、

船内や目的地である地球上で亡くなった場合は、

地球の磁場で魂の住処を作る必要性があったからである。


幼い子供たちも病気で亡くなるために、

旅の途中で亡くなった霊と共に

地球磁場内での霊域作りを行なっていた。

 

現象界と同時に、

 

この地球磁場内で実在界4次元以降の創造の使命が、

神から与えられていたからである。


しかし、

次から次へと死亡者が続出し、

当時の乗組員は男女合わせて半数に激減してしまった。


食料以外に衣服にも問題があった。


彼らの皮膚は非常に繊細にできていた。


そのため、

肉体を包む衣服は特別な繊維で作られ、

様々な紫外線や害虫から逃れるための工夫が施されていた。

 

しかし、

 

この荒れた大地・地球で生活するには、

多くの危険が満ちていた。


裸で森林を歩こうものなら、

容赦なく紫外線が降り注ぎ、

アレルギーで皮膚がかぶれ、

高熱にうなされる者が続出した。


そこで彼らが最初に開発したものが、

抗アレルギー剤であった。


原生するシダ類の一種から抽出したエキスを、

毎日飲んで耐えた。


噴霧することで、

ある程度の魔から防御するのにも力を発揮した。


唯一、

かろうじて彼らにとって身体に馴染むものは、

水と空気のみであった。


それ以外は全て工夫せざるを得なかった。


実在界やエルデラ(エルダー)星からの応援や、

働きかけもあったが、

その交信にも限界があった。


実在界に戻ると、

過去世の記憶や元の星の霊人とも交信が可能となり、

より記憶が鮮明となるため、

ありとあらゆる過去の叡智も甦る。


その交信に基づき、

肉体を持つ彼らは様々な研究を行い、

生き続けるために必死に耐え抜いた。


余りにも壮絶な生への戦いである。

 

そして、

 

神を非難する行為に匹敵する、

生を放棄する者(自殺)まで現れるようになった。


実在界は彼らの魂の住処(病院のようなもの)の

準備にも負われるようになった。


現象界も実在界も悲壮感で押し潰されそうであった。

 

 

「神は我々に何をさせようとしているのか…」

 

 

 


そんな時、

 

ルシと呼ばれるリーダー格の者が、

現代の麻薬のようなものを発明した。


生きる苦しみから逃れさせる為である。


それを体内に入れると、

食物を摂取することによる嘔吐や下痢も収まった。


そしてそれは、

いつしか密かに蔓延した。


長らく忘れていた喜びも一時的に味わうことができた。


船団を率いたランティ指示の下、

ミーシャ、

ジブリ、

ラファ、

ウリ、

アズラーなどの6名のリーダー格たちは

即座にそれを禁止したが、

最終的には一人ひとりの意識に任されるために、

徐々に常習者が増え始め、

民の一部は肉体も魂もぼろぼろになって行った。

 

更にルシらは

 

居住区から少し離れたところで、

ある研究を密かに始めた。


厳しい地球環境に少しでも順応できるように、

自らの肉体の遺伝子を改変したのである。


また、

植物や果実、動物、魚にまで自らのヒト遺伝子を組み入れ、

半植物人、半獣人、半魚人を作り始めた。


そして自らの子供も地球環境に適応すべく、

生まれて来る前に男女の遺伝子操作を行ない始めた。


それによって、半獣半人が数多く生まれた。


ルシの言い分はこうであった、


「このままでは全員滅亡する。

それなら我々の遺伝子を組換えし、

未来の進化に賭けることで我々の使命を達することができる。

我々は神と同じ創造を行なう。

それが神の命なのだ」…と。

 

そして彼らは当時、

 

ディルモーナと呼ばれた居住区から追放された。


ディルモーナとは、

「苦労が報われる地」という意味であった。


この「ディルモーナ」が3億6千万年の間に、

「デルーン」「ダルーン」「パレーン」「ペディナ」

「エィディナ」「エリトン」「エデン」と呼び名が変わっていった。


ディルモーナ、

つまりエデンに残った者たちは神の言葉を信じ続け、

品種の改良と、自らの体質改善の努力によって、

徐々に地球環境にも慣れ始めてきた。


そんな頃である。


長老ランティに突然、神の声が下った。


地球に降り立って40年が経過していた。

 

 

ランティ・・・光の子らよ。

 

 


我はそなたたちの主である。


我がそなたに望みを託したものである。


ランティの民よ
よくぞここまで耐え忍んだ。

 

宇宙の本質は、調和と進化にある。

 


そして調和と進化の根本、

法則は我にある。


我が調和と進化であり法則である。


そのために太陽を創造し、

この地球を準備した。


新しき進化をここで遂げよ。


新しき発展をここで遂げよ。


この地球を宇宙の「希望の星」とせよ。


そのためにそなたたちを選んだ。

 

汝らの苦しみは我にあり。

 


汝らの悲しみは我にあり。


汝らの嘆きは我にあり。


そなたたちの親である我が

なぜ見捨てることがあろうか。

 


我は汝らの流す涙の一滴すら見逃さない。

 


 

汝らの中には

我が因子が組み込まれていることを知れ。


汝らの中に我が居ることを知れ。

 

全智全能の子らよ。

 


光の子らよ。


絶望などを信じてはならない。


限界などを信じてはならない。


暗黒の中で燦然と輝く太陽のように、

自らを輝かせ。

 

希望を持って生きよ。

 


希望こそが進化の基なのだ。


希望こそが発展の基なのだ。

 

次の後篇へと続く