僕は決して不動明王ではないのですが、
ちょっとだけ関係があるんです。

 

僕が生まれる前の昔の話です。

 


若い頃から事業を行なっていた祖父の姉で、
「シズ」さんという方がいました。


生まれながらの知恵遅れで、

数字の計算は全くできない人でした。


仕事といえば、朝早くから畑仕事をやるくらいなもんで、
文字の読み書きもろくにできなかったようです。

 

ある日のまだ太陽の登らない早朝、シズさんはいきなり、
「ギャーッ!」と言って飛び起きました。

 


家族は「何事が…」と驚き、シズさんの方を見ました。

 

すると、布団の上で半身を起していたシズさんは、
肩でぜいぜい息をしながら、目を丸くして、
全身汗びっしょりだったそうです。

 

 

「一体どうしたんだ?」と家族がシズさんに聞くと、
『・・・鬼を見た』と一言、言いました。

 

 

家族は、
「鬼?・・・何だ夢か、朝っぱらから驚かすなよ」

 


そう一笑に伏しながらまた皆は床に入りました。

 

けどシズさんはまだその興奮が収まらない様子。

 


朝になっても食事もせず、畑仕事にも行こうとしません。


布団の中に入ったまま、

ただブルブル震えているだけです。

 

昼頃になって、
村の住職が道を通りかかりました。

 

 

弟である祖父は何か心に引っかかるものがあったのでしょうか、
その住職を呼び止め、
「姉の話を聞いて欲しい」…と頼みました。

 

 

住職は、シズさんを日当たりの良い縁側に呼び、
持っていた紙と筆を渡しました。

 


「その鬼の姿を書いてみなさい」

 

シズさんは絵だけは上手でした。

 

 

器用に墨の付いた筆を使い、
サラサラと鬼の姿を書き始めました。

 

 

住職は、
「何だこれは!不動明王じゃないか!」

 

 

全身が火で燃え盛り、
目は吊り上って恐ろしい顔をしています。

 

 

しかし住職は、首をひねりました。

 


「おや?不動明王は短剣を持ってるはずだが、
もう一つの手で長剣も持っている・・・?」

 

シズさんは、その夢の話を流暢にしゃべり始めました。

 

 

「お坊さん、実はこの鬼、
私に、『長剣を飲むか短剣を飲むか?』と聞いたんです。

 

そこで私は、『長剣は長くて痛そうだから、

短剣の方がいい』と言ったのです。
そしたら鬼が、『口を開け!』と言ったので、
大きく口を開けたら、

その短剣を口からグサッとお腹まで刺したんです。
それでビックリして…」

 

それ以来シズさんは、
人の耳では聞こえない、

いろんな指示が心に響くようになりました。


『この汽車に乗ってどこそこまで行くと、
小さな神社があるからそこでお参りをしてきなさい』


『どこそこの山に行くと滝があるから、
そこで滝行をしなさい』


『この庵の中に入って、ただひたすら座ってなさい』・・・

 

シズさんは汽車の乗り方さえ知らなかったのに、
週に1回、必ず出かけるようになりました。

 

 

すると、不思議とどんどん智恵が付き始め、
今まで開きもしなかった弟の昔の教科書や週刊誌など、
あらゆる本という本を読み漁るようになりました。

 

 

誰も教えてもいないのに、
数字の計算もスラスラ解き始め、
いつの間にかどんな難解な計算でも、
暗算で瞬時に答えを出せるようになりました。

 

 

速読もできたようです。

 

 

近所の人たちがそれを面白がり、
物珍しそうに続々と集まって来ました。

 

 

『物当て』もやり始めました。

 


箱の中に隠した物を、当て始めたのです。

(※透視能力)

 

財布の中身もピタリ当てたそうです。

 


病気の人には、
「こういう草を煎じて飲むと治るよ」と言って、
その通りに飲むと治ってしまう人が続出しました。
(※リモートビューイングによる体内透視)

 

噂が噂を呼び、

多くの人が遠くから相談に見えるようになり、
恋愛相談や事業のアドバイス、
人の寿命まで言い当てました。

 

しかも、

一銭もお金は受け取りません。

 

※まるで今回の、
能力開発の創始者の体験と瓜二つです。

 

これもシンクロ…?

 

その頃には、

 

弟である祖父の事業も手伝っていました。


新潟市内にあるお客の会社に向かっている道すがら、
『あれ?この人、もう死んでる…』

とつぶやきました。


祖父が「えっ?」と聞き直しても、
『この人も死んでる、あっ、この人もだ…』


すれ違う人を次々と指をさし、
『死んでる、死んでる…』を連呼し始めたのです。

 

それから数週間後、新潟市内では大洪水が起き、
多くの人が死んでしまったのです。
(※予知能力)

 

 

それからしばらくして、
祖父の長男に嫁が来ました。

 


シズさんの予言でもあったそうです。


長男とは僕の父です。


父はその頃17歳でした。


当然ながら嫁とは僕の母(当時23歳)ですが、
貴族の下の華族の出身で、

当時は電電公社の交換手をしていて、
社内でも一番人気の女性だったようです。

 

父より6歳も年上で、

しかも相手の男性は17歳…、
母は祖父からしつこく頼まれて見合いはしたものの、
全く母にとっては対象外の相手でした。

 

いくら先祖が上杉謙信の家老

蔵が3つもある家柄と言えども、
市内のブルジョア女性と、
過疎の田舎っぺの少年とは品が違いすぎました。


会っても話が全くはずむはずがありません。

 

けれども事件が起きました。

 


市内の万代橋を二人で歩いてデートしている時に、
「結婚してくれなければ僕は今すぐここから飛び込む!」
と父が言い放ったのです。

 

今で言えば臭い話だと笑ってしまいそうですが、
母はその言葉に打たれて、

こんなド田舎に嫁に来たと言う訳です。

 

実はこの言葉、
シズさんのアドバイスだったそうです。

 


「こう言えばこの人は優しい人だから、

必ずお前のものになる」と(笑)。

 

父が18歳になるのを待って籍に入りました。

 

 

その後、

シズさんは母に対してとても厳しかったようですが、
反面、とても可愛がられたようです。

 

それからいろんなことがあって、
僕が生まれる1年前、

 

シズさんが危篤状態になりました。

 

亡くなる直前に母を呼び付けて
「今度生まれる子は不動明王の化身だ!」

と言ってから息を引き取りました。


しかし母は、男、女、女と子供が生まれて

家業も忙しかったものですから、
今度子供ができたら堕ろすつもりだったようです。


しかも母は不動明王と聞いて、

なおさら気持ち悪がって、
僕を身ごもったとき、

自分の判断で堕ろそうとしました。


母はクリスチャン系の家で育ったものですから、
不動明王と聞くと、
「鬼か魔物の一種じゃないか」と思っていたようなのですね。


それを祖父が気付いて、
「絶対に産め」ってことで、

とうとう僕が生まれてしまったのです。(笑)

 

※母は僕が幼い時に、

「あなたは運命に勝った人だ…」とよく言っていたが、

そういうことだったのか。。

 

 

しかもこの話以外に、
後日、また不動明王の話が出てくるんです。

 

 


実は僕がまだ幼稚園の頃、
ふらりと霊能者が家に訪れました。


祖父は元々占いとか霊能者が大好きで、
良く占い者とか霊能者を家に招いていたので、
その中のお一人だったかと思います。


その霊能者は、
戦争で目の前に爆弾が破裂して、
以来、耳も聞こえないし口も利けません。


それ以来、霊感が冴えるようになって、
占い者として生計を立てていたようです。


家に入るなり僕を手招きして、
膝の上に乗せて頭を撫で始めました。

 

彼は僕の顔をじっと見ていきなり、
笑いながら藁半紙に文字を書き出しました。

 


要約すると、
「とても面白い大器晩成型の子だ。
大人になったら髭を生やして、

風を切って歩くようになるだろう。」

 

家族は、

 

「え~っ?この子が…」

 

霊能者は続けて藁半紙に書きました。

 

 

『ただ惜しいかな、
この子は12歳で死んでしまうかも…』

 

 

なんだよそれ…!

 

 

 

 

風切る前に死んでしまうんじゃ…ってことで、
祖父が慌てて、
「ではどうしたら助かるんですか!」と。

 

そしたら、
「この子の守り神は不動明王だから、
それを祭りなさい。
毎朝、それを拝むようにすれば

 

何とか助かるかもしれない」と。

 

家族一同、
『不動明王???ぞ、ぞ、ぞ~!』

 

 

よって僕は幼稚園児でありながら、
毎朝「オンアビラウンケンソワカ・・・」と

拝むことを強要されたのです。


そんな幼稚園児は、全国で僕くらいなもんでしょう(笑)。

 

その予言は当たってしまい、父が死んだ年(中学1年)、
自転車での通学途中で大変な交通事故にあいました。

 


でも「アビラウンケンソワカ」って、
大日如来じゃなかったっけ???

 

結構いい加減な話でした(笑)。