真帆の目から涙がこぼれた。
今となっては何の涙かは分からなかった。
KENちゃんと不倫をしていたときの真帆は命がけだった。
世間は真帆を必要としていたが
KENちゃんはもう真帆を必要としていなかった。
TAKAとの離婚もとん挫している状態で
やたら自伝レディースコミック漫画だけがうけていた。
赤坂のクラブの裏売春でお弁当と呼ばれて配達されながら
TAKAに貢いだ日々。
きょうだいで2人でかかってきた客。
ダークな思い出がすべて売り上げに結び付いた。
それが恥ずかしくて本当に愛したKENちゃんは
一切漫画に描けなかった。
KENちゃんと同棲した頃
KENちゃんがメジャーデビューした頃
真帆が漫画家になったころ。
若い頃は何もなかった。
でも一生懸命な
愛がいっぱいあった。