楼主は然る国の良家の一人息子だった

それなりに裕福な生活を送っていたが、

ある事件が切っ掛けで両親が死去、家は呆気無く没落した

 

家は没落したった一人残されたものの、彼自身は落ちぶれることはなかった

彼には”人”を見る目があったのだ

相手をひと目見ただけでその人の”人となり”を見極める事ができた

 

彼は先ず、自身にとって信用に足る者達を募った

そして彼等を手中にしこの国のありとあらゆる情報を集めさせた

 

情報は命だ

時としてその情報が命の命運を分けることもある

彼はその事を十分に理解していた

 

また、安く買い叩かれていた他国との混ざり者と言われている女の奴婢達を買うと、

一から芸技を仕込んだ

その結果、国一と言われる程の傾国集団を生み出したのだ

 

その技量は他の知るところとなり、

それに目をつけた”ある御仁”の支援のもと、彼は商団を立ち上げた

 

そして数年後、この地に楼閣を開いた

それが蒼月閣だった

 

 

 

楼主は部屋から外を眺めた

朝から続いている雨は降ったり止んだりを繰り返し未だ止む気配もない

雨以外、今宵もいつもと変わらぬ日となるはずだった

 

 

顔を腫らし男に背負われて帰ってきたシウに思わず目を剥いた

 

『またかっ!』と怒りが湧きつつ、ちらりとシウを背負う男を見た瞬間、

あまりの驚きで声が出掛けた

 

――な...如何してこの方がこんなところに…?

 

それは、この様なところに決して足を踏み入れることは無いであろう御仁

静かな微笑みをその端麗な顔に絶やすことはない

 

王の主侍医、チャン・ビン

 

その佇まいは凛としており、シウを背負っても崩れることはない

 

チャン・ビンは頬を腫らし足を痛めたシウを休ませ、治療をさせるよう、

渋る楼主に巾着に入った銀を手渡した

それは相場の倍以上入っておりこれでは断る事もできない

 

それに、チャン・ビンの眼差しに男の欲望など一切感じなかった為、

純粋に治療の一環としてだと思っていた

 

だがその考えは間違っていた

人を見る目がある筈の楼主ですら気付かない、チャン・ビンの底知れぬ欲望

 

シウは絡めとられる様にチャン・ビンに身も心も虜になっていった








 

 

楼主と侍医の出会い編。

あの端正な美貌に楼主は騙されてしまった、という訳です。

 

 

 

 

 

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