それからどれぐらい経っただろうか

いつからか空を覆っていた雲は切れ、雨は止んでいた
三日月が闇夜をほんのりと照らしている

 

楼閣も先程までの賑やかな喧騒はいつの間にか無く、静けさだけが残っていた

 

二人はずっとシウの帰りを待っていた

苛々と部屋を動き回るナリは椅子に座ったまま微動だにしない楼主を睨み付けた

 

 

「ねぇ!シウはまだ戻らないの!?」

「...少し落ち着け、ナリ

さっき下男を医仙様のもとへ送っただろ

そろそろ知らせが来る筈だ」

 

 

そう言って苛々と床を足で鳴らしながらも、楼主自身も苛立ちが募り思いっきり頭を掻き毟った

「ちっ」と舌打ちをするナリに怒りが込み上げたものの、それを押し殺す 

暫くすると、扉を叩く音がして直ぐに下男が入ってきた

 

 

「如何だった?」

「侍医様の菩提寺へ向かってからその後は戻られた様子も無いようです

もしシウ様を見つけたら教えて欲しいと伝えました」

「そうか...........分かった、下がっていい」

「はい」

 

 

下男は頭を下げ部屋から出て行った

それを見届けると、二人は大きな溜め息をついた

 

 

「まだ戻らないっていい加減おかしいわ」

「あゝ後から向かった下男と行き違いにならなかったということは、何処か別の場所に向かったか……」

「或いはまだ先生のところに居るのかもしれないわね」

「はぁぁぁ......やっぱり行かせるべきではなかったのかもしれない」

「そんなこと今更だわ」

 

 

ナリはシウのあの表情の無い顔を思い浮かべ、くしゃりと顔を歪めた

そして無言で部屋を出て行こうとしたところを楼主は呼び止める

 

 

「何処へ行く?」

「先生のところへ行ってみるわ

きっとシウはまだ其処に居る筈よ」

「なれば私も一緒に行こう」

「え?」

「こんな夜遅くにお前一人を行かせられない」

 

 

そう言った楼主を黙って見つめながら、ナリはぽつりと言った

 

 

「.................心配なのね」

「?当たり前じゃないか、夜更けにお前を」

「違う、シウのこと」

「!!!私はただ............」

 

 

その先の言葉は出てこなかった

そう、本当は下男になど任せず、我先に探しに行きたかった

シウの顔が頭から離れないのだ

後悔が先に立ち、焦りと苛立ちが湧き上がる

そんな心情を付かれ、楼主は思わず視線を彷徨わせた

 

 

「分かってる、そんな顔しないで」

「すまない」

「急ぎましょう、先生の菩提寺は知ってるんでしょう?」

「あゝ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※注釈

シウが来たのはサミルチャンの3日目、出棺後の話です。

ウンスは侍医が亡くなったショックもあり、埋葬までついて行けず、ヨンは本来なら一緒に行かなければいけないのでしょうが、そのまま残りウンスに付き添っています。

 
あちらのお話の時間軸としては大体、茉莉花に誘われて16茉莉花に誘われて17の辺りです。
 
 
 

 

 

 

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