「では私は此れで

仲介料は後日、現主...ツァガーン様から届きます故...」

「何、御仁から?!」

 

 

楼主は驚きで目を向いた

蛍がさらっと口にした名は、我が商団の支援をした御仁の名だったからだ

 

 

「御仁が動いている、ということは............そうか、”そういうこと”か」

 

 

楼主は御仁...ツァガーンが”ある方”に執着していることは以前からの情報で掴んでいた

だからこそ松虫の動きを注視したいのだろう

恩は数えきれない程ある

従わないという選択肢はない

 

 

「分かった、直ぐに手配しよう............だが蛍」

「何でしょう」

「出来ればだな、あまり松虫の邪魔をしない様頼んで欲しいのだが」

「如何いうことでしょう?」

「手心を加えろとは言わん、然し松虫にも事情が」

「私の与り知らぬことです

松虫が本懐を遂げたいのであればご自分で何とかする筈

そんなことも出来ない程力がないわけではないことは貴方自身が分かっていることでしょう?」

「..............あゝそうだったな

そんな心配をすることの方が逆に松虫に悪いな

私が間違っていたよ、これ以上は何も言わぬ」

「それが正しい選択です」

 

 

そう言って肯くと蛍は踵を返す

そして戸を開く直前に「あゝそうだ」と言いながら振り返った

 

 

「不要かと思いましたが、花を送っておきました」

「花?」

 

――何のだ?

 

楼主の頭に疑問が浮かぶ

すると、表情を滅多に出すことのない天を指差し蛍が哀れむような笑みを漏らした

 

 

「貴方の女人に、です」

 

――私の?.........まさか、シウに...か?

 

 

楼主の目が大きく見開かれる

だが直ぐに違うと口を歪める

 

 

「違う、蛍........私のではない、私のではないんだ」

 

 

そうであったならどんなに良かったか

今更ながら後悔しても遅いのは分かっている

ユジに似ているからと歪んだ執着を押し付けるべきではなかった

もっとシウ自身を見るべきだったと

 

シウの笑顔も、仕草も、その相貌も、何もかもが違うのに

唯一似ていたのは一途に相手を想い過ぎることだけ

ただそれだけだったのに

たったそれだけのことでシウに対しあんなにも酷い扱いをしてきた

し続けた、最期まで

なのに

 

 

「それでも、貴方の女人は貴方の想い人であることには変わりません」

 

 

こんな自分を、誰も彼もそして自分自身も嫌悪していたというのに、

蛍は哀れんでくれるというのか

 

楼主の目から涙が零れた

 

 

「何れ開花時期になれば一面の花が咲き誇るでしょう

あの花は香りも強い

だからきっと、寂しくない筈です」

「あゝ、あゝそうだな、寂しくない............すまない蛍、礼を言う」

「いえ」

 

 

蛍は頭を下げると部屋を出て行った

薄暗い緑の灯りが静かに遠ざかり消えていった

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

花は咲く

何度も何度も

咲いては散り、咲いては散っていく

それは喩え咲く場所が変わっても同じこと

そしてまた新たな花が咲く

そうやって何度も繰り返しまた繰り返すことで花は新たな生を享ける

それほど花とは多種多様な存在なのだ

 

 

「Sword lilyね」

 

 

王宮を歩いているとウンスがふと足を止めぽつりと言った

偶にふいに出る天の言葉はチェ・ヨンに理解出来ないことばかりだ

そばに立ち美しい横顔を見つめながら、ヨンはウンスの言葉を繰り返そうとした

 

 

「そ、そー…?」

「ソード・リリー...剣の百合って意味よ」

「剣の...」

 

 

ウンスはヨンを見る事無くそう言った

ヨンはウンスがじっと見つめる先に視線を向ける

 

”其処”には見たことのない変わった花が咲いていた

すらりと伸びた花の茎に整然と並んだ房状の様な花弁は不思議な色彩を放っている

 

だがそれは他とは違う

異彩だった

 

――些事かもしれぬが………

 

何かが引っかかった

それは一種の勘の様なものだったが、そういう時の勘ほど当たったりする

ましてや普段此方が心配になるほど大らかで寛容なウンスが気にしているのだ

気にならないわけがない

 

 

「テマン」

「イェ、、、テジャン」

 

 

後ろから飛ぶようについて来ていたテマンが勢いよくそばに寄る

 

 

「”チュンソク”を呼んでくれ」

「プジャンを?...イ、イェ」

 

 

これが後に起こる事件に繋がることを二人はまだ知らなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヨンとウンスの会話、なんのこっちゃ?かもしれませんが、

終章で出てきた謀(はかりごと)とこの仲介人で花=女人に例えられている...ということを考えると?

(ΦωΦ)フフフ…これがまた別のお話に繋がります。←いつになるか分かりませんが...

 

 

長々とお付き合い下さりありがとうございました<(_ _)>

途中、不調が続きご迷惑をお掛けしました。

もしよろしければ感想等コメントやメッセージなどで頂けたら嬉しいです。

 

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