少し経ち、トンウンは徐に顔を上げた

 

「大丈夫か?」
「はい」

「そうか」
 

ジイルがトンウンを促し家に入る

皆が一斉に振り返った

「寝たのか?」

柱に持たれていたムンチフがトンウンに声を掛ける

「はい、やはり気を張っていたようで…」
「だろうな ゆっくり寝かせてやれ」
「はい」

トンウンからメヒを受け取った
ジェファンが布団に寝かせユンファンが手の傷の処置をする

ゆるゆるになったままの布を見て、
ユンファンが首を振りながら大きくため息をついた


「プジャン(副隊長)、、いい加減、これくらい出来る様になりなよ」
「煩いな、早くやれ」
「へいへい」


二人が手早くメヒの世話をしている間
ダルユンはどかっと腰を下ろしたジイルに言った

「どうでした?例の妓楼は」
「ざっと見たけどやはりこんな小さな村には似つかわしくないくらいの豪勢なものだったよ
何処も彼処も豪華絢爛で女子供は勿論、男も着飾って…」
「好色の極みってやつですね」
「あゝ、本当に」

ジイルは大きく頷くとムンチフに向き直った

「トンウンの言う通りこの村は倭寇と繋がりを持つ為の拠点となっております
倭寇に禁じられた人参を主な取引とし、時には人身売買も行っているようで」
「そこまで巣食っていたとは…」

トンウンは苦しげに顔を歪めた

「それも全て件の官吏親子が己の私欲の為にしていること
この村の民達は、皆、奴等の犠牲になる為に生きているようなものです...糞っ!」

トンウンは拳を床に叩き付けた

「それとメヒを探している時に件の妓楼の地下で隠し蔵を見付けました
其処に取引で得た御禁制のものや武器、兵糧を隠しております」
「それは確かか?」
「間違いなく…この目で見ました」

ムンチフが目を閉じる


「それともう一つ

密かに舟着き場で探りを入れたところ今宵、例の官吏の父親との談議の為倭寇の舟が停泊するそうです」


しんと静まり返った部屋にはメヒの寝息だけが響いていた皆がムンチフを見ている


「糸を張り過ぎた蜘蛛は新たな糸を張る前に取り除かねばならない」
「イェ」


ムンチフは閉じていた瞳を開いた


「直ぐに首尾につけ」
「御意」




その夜
舟着き場にて突如、倭寇の舟が炎上した

舟に残っていた者達は忽然と姿を消し、積み荷は跡形もなく消えていた


そしてその場には
紅き月が描かれた帆が掲げられていた

 

 

 

 

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