パグとの裁判が終了し、あとは出産を待つのみとなりました。

切迫早産も悪化することなく何とか臨月を迎えることができ、
先生からももういつ産まれても大丈夫と、安静も解除されて一安心しつつ、
もうすぐ我が子に会えるのが楽しみで、残り少ないマタニティライフを穏やかに過ごしていました。


夫は心を入れ替えたように見え、パグとの関係を清算し、両親へも謝罪し、
赤ちゃんのことも以前より積極的、協力的に行ってくれており、
「やり直したい」という言葉通り、再構築に向けて努力しているように見えました。


赤ちゃんが分かってからは、周りには再構築を勧められることが増えました。
両親、義両親共に、2人で協力していい環境で赤ちゃんを迎えて欲しいと言いました。

色々と相談にのってもらっていたゴトー先輩も、ずっと離婚推進派でしたが、
妊娠後は一転して再構築派に変わりました。
男は少しずつ覚悟や実感が出てくるから、家族が出来るならもう少し頑張れと言いました。

他の友人たちも、離婚を止めることはしませんでしたが、
夫が大人になるのを長い目で見てもいいのでは、
夫が変わるかもしれないから様子を見ては、などと言いました。


私は数々の裏切りで傷ついていたこともあり、再構築へと迷う気持ちはありつつも、
夫が以前の優しい夫に戻って、やり直したいという思いを行動で示すようになっていたため、
生まれてくる赤ちゃんのためにはどうしたらいいのか、自問する日々が続きました。

夫には結論を出すことはせずに、とりあえず落ち着いて出産に臨みたいと伝えました。


しかしそんな出産を間近に控え、いつ産まれてもおかしくない状況の中で、
夫から神妙な顔で「話がある」と切り出されました。

こういう時はあまりいい話じゃないと思いつつ話を聞くと、
その話は私が思っていた以上に衝撃的な内容でした。


「花音も子供がどうなっても構わないし、子供が生まれることを受け入れられない」
「この先花音と子供と3人では暮らせない。ずっと里帰りしていてもらうことは出来ないか?」


出産2日前のことです。


久しぶりに夫に対して怒りを覚えました。
と同時に「やっぱりな」とも思いました。

どこまでこの人は自分のことしか考えられないのだろう。
子供を受け入れられないって、もうすぐ待ったなしで生まれてしまう事実は変えられないのに。


もう夫には今まで散々裏切られてきたので、信頼も失っていましたが、
責任感もなく、自分勝手で、都合が悪くなるとすぐ逃げる人だってわかってましたが、
反省したと見せかけて油断させてからの、この手のひら返しはなかなかキツかったです。

信じようと思わせておいて、裏切るこのやり方は、何度やられても慣れることはなく、
そういう人と諦めていても、期待してなくても、その都度傷ついてしまいます。

今までの妊娠中はずっと辛い思いをしたので、せめて残りの出産までは穏やかに過ごしたいと、
あれだけ伝えていても叶えることはなく、人の気持ちはどうでも良く踏みにじってきた。


一生かけて償うといった言葉や、やり直したいという言葉は嘘だったのか?と問いかけ、
出産が終わるまでは待って欲しいと伝えたはずと言ったのですが、
夫は考えは変わらないと頑として言い張り、こう言い放ちました。

「花音は俺へ復讐するための道具として子供を作ったんだろ。自分で責任を持ってくれ」


心底夫を軽蔑しました。


子供は復讐の道具でもなんでもない。
私にとっては唯一の希望であり、大事な宝物。


そこで私は、ずっと温めていたある物を、夫に渡すことにしました。