会社での話。

オフィスをでて3階の御手洗いにいこうと、エレベータにのった。

このところクレームの電話をとることがおおく、おもわず深いため息をついた。

ふぅう。

すると、たまたまエレベータに乗り合わせた25歳くらいの青年(名波っぽいかんじ)が「くすっ」とわらった。そして、

「逃げちゃいますよ^^」と声をかけてきた。

「あ、そうだよね、溜息の数だけしあわせが逃げて行くっていうよね。わたし、いま大分にがしちゃったみたいだわ」

「くすっ」と再び笑い、青年はすこしかがみ、わたしと青年の間の空間の空気をかき集めるようなジェスチャーをした。そして、50センチくらいのおおきあ空気の玉をつくるようなしぐさをしたあと、その玉をわたしに差し出して、

「はい、これで大丈夫。もうなくさないでくださいねっ」と言った。

「ありがとう!」

エレベータは丁度3階につき、わたしは青年に一礼をして目的地に向かった。


同じ会社であることは確かだが、名前はおろかどこの部署かも知らない青年のナチュラルな心配りは、秋風のように爽やかだった。重かった心は軽くなり、一日爽やかな気分で仕事をすることができた。

 

いつもわたしが気にかけている☆は、時にとても深いため息をする。

今日のこの爽やかな体験を心に刻み、いつか、☆が深いため息をついたとき、今度はわたしがこの爽やかな風を彼にとどけて癒してあげたいと思った。