治療をしていると周囲から色々な意見を聞く事があると思います。
例えば、
「体外受精で生まれた子供に障害が出た」
「漢方薬を使っていたら精子が増えた」
「あるサプリメントを使用していたら妊娠した」
成功体験も、失敗体験もどれも気になる事ばかりだと思います。
特に親戚や親しい友人からの意見であれば尚更影響が出てくると思います。
しかしそういった周囲の意見から治療方針を変える事は正しい判断ではないと思います。
たまたまその人に効いた事であって、他の人には効かない方法の可能性もあります。
大切な事はより多くのデータから出したエビデンスに基づく治療方針です。
1990年ころから医療には「evidence-based medicine:EBM」というのが確立されてきました。
つまり少数の成功体験や失敗体験に基づくものではなく、しっかりとした根拠に基づく医療をしていこうという考え方です。客観性の高い研究データから得られた結果を元に治療方針を決めていきます。
正確なデータを得るためには多数の患者を相手に臨床の治験を行う必要があります。患者を無作為に2群に分け、片方には治療薬を投与して、もう片方にはプラセボと言って偽薬を投与します。薬と偽薬は医師にも患者にも分からないようにします。
この結果得られたデータを元に統計処理を行い、有意差が出てきて初めてその治療が有効であるという根拠がでます。
統計的有意差を考える時に必ず出てくるものにP値と言うものがあります。大体8割の論文に出てきます。P値のPはprobabilityの略です。このブログにも度々出てきます。
以下P値について説明します。
P=0.5は50:50の事です。
P=0.05とは20回に1回であることを意味しています。この値(0.05)は統計学的に有意であるとされています。つまり20回に1回は偶然出によって出たとは考えにくくなります。
P=0.01とは100回に1回を意味して、高度に有意を意味します。
P=0.001とは1000回に1回を意味して、非常に高度に有意を意味します。
P値が低ければ低いほど偶然ではなくなり、得られた結果の有意性が高くなります。
EBMに関して、以下ウィキペディアから引用しました。参考にして下さい。
根拠に基づいた医療(EBM:evidence-based medicine)とは、
「良心的に、明確に、分別を持って、最新最良の医学知見を用いる」 医療のあり方をさす。エビデンスに基づく医療とも呼ぶ。
治療効果・副作用・予後の臨床結果に基づき医療を行うというもので、専門誌や学会で公表された過去の臨床結果や論文などを広く検索し、時には新たに臨床研究を行うことにより、なるべく客観的な疫学的観察や統計学による治療結果の比較に根拠を求めながら、患者とも共に方針を決めることを心がける。