体外受精の培養液について | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療専門医の立場から不妊治療、体外受精、腹腔鏡手術について説明します。また最新の生殖医療の話題や情報を、文献を元に提供します。銀座のレストランやハワイ情報も書いてます。

培養液について

現在培養液には大きく分けて以下の2種類があります。

①Two-Step型培養液 (Sequential medium)

②One Step型培養液

この違いを簡単に説明すると、

①は3日目から培養液を変える事を意味します。

②は培養液を変えずに同じ培養液で最後まで培養する事を意味します。

以下その違いを少し細かくみていきます。少し難しい内容があるかもしれません。


Two-Step型培養液 (Sequential medium)

胚のアミノ酸要求性は時間特異的に変化します。人の胚は受精から4~8細胞期までは主に母性由来の遺伝子によりたんぱく質を合成しています。8細胞期以降は胚自身の遺伝子が活性化したんぱく質を合成するようになるので、それに伴い胚の栄養要求性は大きく変化します。

特に8細胞期まではピルビン酸や乳酸を必要として、グルコースを必要とはしませ。しかし8細胞期以降は逆にグルコースを必要として、ピルビン酸や乳酸は必要としませ。

そのためそのステージにあった培養液を使用する必要があると言う考えで、受精から3日目までと、3日目から胚盤胞までと分けて2種類の培養液で培養しています。


One Step型培養液

「胚自身が発育段階に応じて必要成分を選択的に摂取するため、生体内環境の変化に応じた培養組成の変更は必要ではない」、と言う考えがあります。

1種類の培養液で受精直後から胚盤胞までの全ステージで培養可能になります。

これによりランニングコストの軽減、品質管理の簡略化が可能になります。


どちらが有効かは報告により様々です。

現時点ではどちらが良いかは判断できません。今後更なる検討が必要と言えます。

One step型は最近人の体外受精に用いられるようになったことから、実績がそれほど多くはなく、今後の更なる検討の積み重ねが必要と言えます。

クリニックによっては「Split 培養」と言って両方の培養液を使用して、その人にあった培養液を使っている所もあります。


次回の培養に関する記事では、実際に報告されているデータを出して、両者の培養液をを比べてみたいと思います。