アンタゴニスト法で良い胚ができません | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

生殖医療専門医の立場から不妊治療、体外受精、腹腔鏡手術について説明します。また最新の生殖医療の話題や情報を、文献を元に提供します。銀座のレストランやハワイ情報も書いてます。

アンタゴニスト法で刺激をしましたが胚盤胞ができませんでした。医師からは次は別の刺激方法でと言われました。刺激方法で胚盤胞になる確率が変わるのでしょうか?

 

この様なご質問がありましたのでお答えします。

 

アンタゴニスト法は安全に良好胚ができる最も調節性に富む優れた刺激方法であり、この点に関しては多くの論文でも証明されているため、ある程度の卵巣機能がある方であればアンタゴニスト法を第一選択として刺激をすべきだと思います。

 

アンタゴニスト法で良い胚ができないということですが、次の刺激方法を別の方法にすることも一つの解決策になりますが、アンタゴニスト法を再度見直すことも同時に大切です。

 

他の刺激方法と異なり、アンタゴニスト法は実に奥が深く、いわゆるマニュアル運転みたいなものです。アンタゴニストという薬剤を上手に効果的に用いることで良好胚を多数作ることができます。

具体的には、どのタイミングでアンタゴニストを入れるか、また用いる量はどの程度か、どのタイミングでやめてトリガーをかけるか、この辺りを絶妙にかつ個別に反応を見ながら調節していきます。

機械的にとかマニュアルでとかは対応できない部分です。

 

ポイントとしてはギリギリのタイミングでアンタゴニストを用いることです。それにより卵胞の育ちが阻害されることなくより多くの良好胚が育ちます。

アンタゴニスト法に慣れていないと、LHサージがかかる前からアンタゴニストを入れながらHMGを用いますが、これは卵胞の育ちを悪くし、かつ余計なコストをかけているだけです。

またアンタゴニストの量も体重やホルモン値、卵胞の育ちを見ながら通常の半量まで下げていきます。全量用いることは日本人には多すぎて、これも育ちを悪くし、かつコストも無駄になります。

アンタゴニストを用いる間隔もメーカーからの推奨では24時間ごとですが、この間隔を30時間や36時間にあけても十分に効いています。クロミッドを併用している場合には間隔を40時間まであけてもLHサージがかかりません。

 

またトリガーの日にはアンタゴニストを用いないこともとても大切なことで、勢いをつけたまま採卵に入ることができます。

 

良好胚を多く作るために、要はできるだけアンタゴニストは使わない方が好ましく、理想的には採卵の3日前の夜に一度だけアンタゴニストを用いることがベストと言えます。特殊な場合を除きアンタゴニストは最大でも3回までとすべきです。

 

宜しければ過去の記事も参考にしてください。

アンタゴニストの問題点

アンタゴニストを使い始めるタイミング

アンタゴニストの間隔

アンタゴニストを打つのが早すぎたのでしょうか?