動いている精子を顕微授精するとどうなるか? | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

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精子は動いていますが、顕微授精の場合精子が卵子の中で動き続けていてもきちんと受精できるのでしょうか?

 

この様なご質問がありましたのでお答えします。

 

これは質問の意図はわかりますが、受精できます。少し難しい説明が必要です。

 

通常の受精の場合には精子は卵子に入るために先体酵素を使い卵子に入り、入った瞬間に精子は動かなくなります。そのため卵子の内部では動いていません。

 

顕微授精の場合には動いている精子を針で入れるので中で動き続けると思うのは理解できますが、動いたままでは受精できずに終わります。そのため顕微授精の際には事前に精子を不動化という処理を行い動かなくしてから顕微授精を行います。

 

この不動化処理ですが具体的にどのようにして行うかというと、従来型の顕微授精の場合には精子の尾部を針でデッシュにこすりつけて精子のしっぽに傷をつけ動かなくします。そしてそのあとすぐに卵子内に注入します。この不動化処理がマストです。

一方ピエゾの場合にはピエゾパルスという衝撃波をかけて不動化処理を行います。

こすりつける方法とピエゾパルスのどちらが効果的かというと、熟練した培養士であればどちらも変わりなく行えますが、ピエゾパルスの場合にはより簡便なため培養士毎の差が出にくく安定して不動化処理を行えます。