数年前のことですが、担当の患者さんが検査の結果妊娠できないことがわかりました。
その方には数年おつき合いしていた婚約者がいたのですが、その話を聞いて相手の男性から「それならば今後結婚はできない」と言われたとのことで、今後の治療に関して白紙にしたいとのことでした。
長年診療をしていると「妊娠できない女性とは結婚できない」、この様に考えている男性がいることは事実であり、この方だけではなく、何名かの方が同じ思いをしています。
私はこの様な話を聞く度にとても違和感を感じます。
確かに妊娠や出産は二人の人生の中で一つの大きなことであることは間違いないですが、それ以前の問題として、二人で生きて行くために結婚をするわけで、決して妊娠や出産がマストではないというのが大前提かと私は思います。
同じ事が男性にも当てはまることで、もし自分が不妊とわかった時に、愛する女性から、「あなたは私を妊娠させることができないから結婚できない」、そう言われたらどの様に感じるかぜひ想像して欲しいと思います。
子供ができないことを知りとても辛い思いをしている中、その理由のために愛する人が離れていくことがどれだけの思いかを。どんなに酷い事を言っているのか自分に置き換えて考えて欲しいと思います。
結婚への価値観、そして後継ぎや色々な問題があるのかもしれませんが、私はこの様な男性とは結婚しなくて逆に良かったのではないかと思います。
これからの二人の人生で病気や介護など様々な困難がある訳で、まさにここで相手の人間性や価値観が問われてくると思います。
苦難を共に乗り越え、人生を共に歩んでいく相手としてふさわしくないと思います。