16個以上取れると卵子の質は下がるか? | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

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採卵数が20個などとかなり多い場合に新鮮胚移植を行うと早産のリスクや低出生体重になるとの報告があります。また前置胎盤との関与も示唆されています。

しかしこれらは新鮮胚移植の場合で、凍結した場合はどうなるかはよくわかっていません。今回「たくさん取れると卵子の質が下がるのか?」という問いに対して「たくさん取れた場合に全胚凍結をして一度刺激の影響を除き卵子の質やその後の臨床成績には関係がないか?」を調べています。

 

中国で2006-2017年にかけて全胚凍結した場合を後方視的に調べています。

採卵数により1群:1-3個、2群:4-9個、3群:10-15個、4群:16-20個、5群:20個以上。

 

この下の表はaは採卵数の患者分布 bは早産率 cは低出生体重児 dは早産率

 

この下の表はそれぞれの群での臨床結果を比較していますが差は認められないことがわかります。卵子がたくさん取れても臨床結果(早産、体重など)には影響を与えないことがわかります。

 

この表は採卵数と新生児の臨床の関係(巨大児、低出生体重、奇形など)を示しています。採卵数により影響を与えていないことがわかります。つまり採卵数と卵子の質は関係ないと言えます。凍結した場合には取れても取れなくても卵子の質は同じです。

 

この表は採卵数別に見た先天奇形(口蓋裂、循環器系、筋骨格系など)との関係を示しています。特に採卵数が増えた多い群で奇形は増えないことがわかります。

 

このグラフは採卵数と早産の検討をしています。採卵数が10個くらいの時に少し早産率が低下することがわかります。ただ統計的な有意差はありません。

 

この結論から言えることとして

この論文は「採卵数と臨床結果」を調べているとても参考になるエビデンスです。

余りたくさん取れるとその卵子の質は低下すると説明することはエビデンスが無いと言えます。

この様な結果を元に日頃の診療を行うべきと言えます。

 

Hum Reprod. 2019 Oct 2;34(10):1937-1947.

Association between the number of oocytes retrieved and neonatal outcomes after freeze-all IVF cycles