卵子には問題がない事が多いため卵子以外を検討していくべき | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療専門医の立場から不妊治療、体外受精、腹腔鏡手術について説明します。また最新の生殖医療の話題や情報を、文献を元に提供します。銀座のレストランやハワイ情報も書いてます。

35歳です。結婚して2年経ち妊娠しないため体外受精をしましたが4回移植しても結果につながりません。一度化学流産でした。主治医の先生からは最初にこの年ならすぐに妊娠すると言われ期待も大きく治療に望んだのでとても辛いです。同期や同級生などの周りは皆妊娠していて自分だけ取り残された感じです。医師は若いのだから自信を持ち移植を続ければ大丈夫というだけで何か変えることはしなくて良いと言います。私は不安です。今後どの様に考えたら良いでしょうか?

 

この様なご質問がありましたのでお答えします。

 

この様に考えている方は少なからずいるかと思います。若いからゆえの悩みだと思いますし、この様な悩みは当然のことだと思います。

 

実際に35歳で体外受精をすると1回か2回で多くの方が妊娠します。

インターネットなどの情報でそのことを知っているから尚更辛くなり、プレッシャーを感じるのだと思います。

 

ただ基本的に35歳であればこの後しっかりと取り組めばほとんどの方が授かります。

 

35歳の場合一般的に卵子には問題がない事が多いため卵子以外(男性、子宮、卵管、筋腫など)を検討していくべきです。

 

以下気をつける点です。

 

①泌尿器科医師による男性のスクリーニング検査

この検査をしていない場合には一度診察をお勧めします。ホルモン検査、睾丸の触診とエコー検査で異常がないか調べます。

精子の質が上がると胚の染色体異常が減る事がわかっています。

その他夫の生活習慣、体重、アルコール、喫煙などの改善もとても大切です。

 

②卵管水腫を調べる

良好胚を移植しても妊娠しない場合には卵管水腫がある事が多いです。腹腔鏡検査を行い卵管の治療をしてから移植をすると結果を出す事が可能になります。卵管造影検査で何もないと言われていても腹腔鏡検査をすると卵管に異常があることはよくあります。そして色々不育や着床障害の検査をしても何もなく、最後の最後で卵管水腫が見つかりオペをしたらその直後に妊娠したという方が多くいます。

 

③子宮内膜炎や内膜ポリープを調べる

反復不成功例の中に子宮内に慢性的な炎症がある事が分かっています。子宮内膜炎がないかどうかをCD138を調べて判断することをお勧めします。

また内膜にポリープがあると妊娠に悪い影響を与えます。

 

④子宮筋腫がないかどうか

子宮筋腫があると場所や大きさによっては着床に大きな影響を与えます。グレーゾーンの事もありシネMRIにより内膜の蠕動運動を見るのはオペをするかどうかの判断となります。もし迷う場合にはオペをする方が良い結果に繋がります。

 

これらを検査して問題がない場合には刺激方法を変更(低刺激だとしたらアンタゴニストやショート法やフェマーラへ変更)することや移植胚のステージを変更(胚盤胞であれば初期胚へ変更)すること、そして新鮮胚で移植することなどを検討する事も結果が出る事に繋がります。

また子宮収縮を抑えるダクチルを使用したり、子宮内膜のスクラッチを行ったり、移植直前にhCGの注入をしたり、胚盤胞移植の数日前にシート法を行ったりする事も効果があります。

 

大切なことは同じことを繰り返すのではなく、少しでも可能性が上がる様に体質や胚質に合わせて修正していくことなのだと思います。