フェリチンが低いと流産しやすいか? | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

生殖医療専門医の立場から不妊治療、体外受精、腹腔鏡手術について説明します。また最新の生殖医療の話題や情報を、文献を元に提供します。銀座のレストランやハワイ情報も書いてます。

貧血は妊娠中の合併症として最も多く見られるものです。

鉄は人など動物には欠くことができない大切な栄養素です。鉄は体内でDNAの合成、赤血球の生成、基礎エネルギー代謝の調整、脳神経の形成、各種コラーゲンの生成など数多くのことに関与しています。また妊娠した後さらにその必要量は増します。そして母体のみならず胎児にも不可欠な栄養素です。フェリチンが低いと早産や胎児発育遅延になるとの報告があります。

 

血液中のフェリチンの値が反復流産と関係があるかを調べている論文がありましたので紹介します。この論文はその他にもフェリチンが低いと妊孕性が低下するかどうかも調べています。

84名の反復流産の方と153名のコントロールの方が検査をしています。

 

反復流産のグループとコントロールのグループではフェリチンの値が以下の様になりました。39.9mg/L、62.2mg/L。

また反復流産の群ではフェリチンの値が 30 mg/L未満の割合が 35.7% とコントロール群の13.7%よりもかなり多くなりました。

 

 

フェリチンの値と妊娠までの時間は関連しているかどうかは不明でした。またフェリチンの値とその後の流産する可能性は相関しませんでした。

 

この結果から言えることとして

妊娠に備えて妊娠前から対策を立てておくことは好ましいと言えるのだと思います。特にフェリチンは通常の検査では行わないため意識して調べることが必要です。

ただこの結果からフェリチンと流産に関して断定的なことは言えないため、今後さらなる詳細な検討をした報告を待ちたいと思います。

 

Fertility and Sterility® Vol. 115, No. 2, February 2021

Serum ferritin level is inversely related to number of previous pregnancy losses in women with recurrent pregnancy loss