企業とリハビリテーション | Y

Y

Y

リハビリの結果と責任―絶望につぐ絶望、そして再生へ/三輪書店

¥1,890
Amazon.co.jp


池ノ上寛太さんが執筆された著書『リハビリの結果と責任』を読みました。


先日、友人と2人で飲んでいて、漠然と「リハビリテーションって何や?」っていうテーマで延々と喋り続けていました。


そんな影響もあり、翌日たまたま大学図書館で発見した・・・というか発見してしまったのがこの本です。


帰りの電車でほとんど読み終えてしまうくらいで、医療・介護分野で働かれている方は一度読んでみたらよいと思います。


筆者自身が脳挫傷による四肢麻痺を患った方で、受傷以降に自分が受けてきたリハビリのこと、その時に感じた
リハビリへの嫌悪や希望のことを如実に書かれています。


筆者は貿易関係の仕事に勤めていた経験から、自分自身の仕事に対する姿勢と受けてきたリハビリ、またリハ職種の仕事意識を対比させて述べています。


ここからは私見も入ります。


病院におけるリハビリは治療者と患者(または利用者)の関係で成り立っていますが、治療者は当然ながら患者に治療を提供する立場にあります。そこからは与える者と与えられる者という図式が容易に想像でき、一方向性の働きかけがリハビリと捉えられる方が多いのではないでしょうか。


この本の中では、セラピストのエゴでしかないようなリハビリ内容も書かれております。治療に関して患者が納得できる説明がない、患者さんのmindを察知できない。治療者と患者の関係図からは逃れられず、ひたすら我慢し葛藤する日々を送る。


説明と同意、いわゆるインフォームド・コンセントですが、これが充分に実施された関係か否か、またその内容に納得されたか否かは非常に重要です。毎月提出している「リハビリテーション総合実施計画書」はまさしく説明と同意を得るための書類ですが、患者は本当に納得しているのでしょうか?


病院と患者が一方向性の関係性であれば納得せざるを得ないでしょう。


本にも書かれていますが、企業がある事業を展開していく上で重要なことがあります。「立案と計画」「契約」「推進と管理」「収支報告」。これらはすべて「責任」の上で成り立っています。事業展開する前に綿密な「立案と計画」を社内・部内でミーティングで行う。その上で「契約」を経て「推進と管理」がある。「推進と管理」はリスクマネージメントしながら検証作業を繰り返しながら実施されるべきものでもある。どこかに落とし穴はないか、前後左右を常に確認する作業が必要であり、メタ認知能力が重要になってくる。最後に重要なのが「収支報告」。つまりリハビリによりどのような結果になったか?


リハビリの世界は企業とは異なるため結果を数字だけで語ることはできません。しかし結果に至るまでのプロセスにおいて、どこまで治療側が「情熱」を持ち「責任」を持った言動と行動ができたのかが非常に重要ではないでしょうか。これらが欠落した場合、患者には疑心と不信が立ち上がってくるのは当然でしょう。


治療側と患者の関係性が双方向性に働かせることが大切だと感じます。患者の言動、行動、mindを汲み取り、どのような治療を提供できるのか、求めているのか。その治療の必要性を患者が得ていない場合に実施されるその治療は単なる一方向性です。双方向性とはその治療の必要性がしっかり理解できた上で実施される関係性です。それにより初めて信頼関係が構築されると思います。治療が実施されると治療の中で検証作業を繰り返す、それに伴い患者の言動、行動、mindもまた変化してくる。その変化(結果)に対し患者が満足しているか(またはそれに近いか)。


治療者としてのあり方。それを考えさせられた本でした。


それではよいお年をお迎え下さい。


リハビリの結果と責任―絶望につぐ絶望、そして再生へ/三輪書店




ペタしてね