人称代名詞について考える(二人称編) | 『Go ahead,Make my day ! 』

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とか言っておきながら、一人称編はかなり大昔の記事なのですが……。
 
さて、二人称。定義としましては、
 
二人称(ににんしょう)とは人称の一つで、受け手(聞き手や読み手)を指す。対称とも呼ぶ。一般に数の区別がある。日本語においては、文法的にはっきりと名詞と区別される代名詞を持たない点で特異である。

えー、分かったような分からんような定義(特に最後のとこ)ですが、その前に人称とは何かをハッキリさせておきましょう。

人称(にんしょう)とは、名詞の指事対象が話し手・聞き手・第三者のいずれであるかを区別するもの。また、それを元にして出来た文法範疇。話し手を一人称(自称)、聞き手を二人称(対称)、第三者を三人称(他称)という。また動作主がはっきりしない場合、これを不定称ということがあり、たいていは三人称のように扱われる。人称の区別は一般に人称代名詞で見分けられる。

ということで、その場面で言葉を発している人が一人称、その対象として話しかけられている人が二人称、話に直接関与しない人が三人称、ということでほぼ間違いないと思われます。

で、最初の定義の後段(文法的に云々のとこ)の意味は、日本語には英語の「You」のように人称代名詞としてしか使われることがない単語が存在しない、ということですね。(「あなた」を他の名詞として使う場面があるかな……。ちょっと思い浮かびませんが)
そして、それは様々な名詞を人称代名詞として使える、という日本語の特殊性の表れでもあるわけです。
(英語を始めとしたヨーロッパ系の言語においては、人称代名詞は文法でキチンと決まっております。ただし、例外的に人間ではないものに擬人的にheやsheを使うことがありますが。ちなみに日本語でたまにみかける自分の名前を一人称として使うケースは、あちらでは相当に特異なもの――ハッキリ言って、変人orおつむの足りない人扱いされるようです)

で、この日本語ならではの人称代名詞の特殊性は、創作をするときにはかなり悩ましいものです。

それは何故か。

一人称の種類の多さや使い分けの問題は以前に書いたので割愛しますが、二人称の場合、ある人物が他のある人物に対して使う人称代名詞は、直接的にその二人の関係性を表してしまうからなのですね。
そして、同時に人称代名詞の選択は――場合によってはどんな一人称を使うかよりも――その人物を表現してしまうことがあるのです。

たとえば拙作のシリーズの主人公である榊原真奈と、その相方である徳永由真のケースだと、

真奈の一人称は「アタシ」で、由真を呼ぶときの二人称は「あんた」なのですが、
 
由真の一人称は「あたし」で、真奈を呼ぶときの二人称は「真奈」なのです。

白状してしまいますと、これは特段の意図があってのことではなく、何となく「こんなイメージだよな~」という感覚でこうしてしまっているのですが、これは「真奈は由真に対して同等の相手としての目線を持っているが、由真は真奈に対して(やや)上から目線を持っている」という、二人の関係性を如実に表していますよね。

これとは少し違う話になりますが、一人称で語られる小説の場合、台詞ではない地の文における人称代名詞も割と迷いどころです。特に語り手から目上の人間をどう扱うかはかなり難しいですね。

そして、実作上では更に敬称の問題が絡んでくるわけで(「Double Imagination」の草薙氏はそらの母親のことを「母堂(または御母堂)」と呼ぶのですが、これ、現代口語としてはほぼ死語……)、たかが人称代名詞と軽く考えていると本当に足元を掬われかねません。

日本語って難しいなぁ……。


(↑ ウダウダ定義を並べておきながら、難しいで終わる論考ってなんだ?)
 
 
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えー、追記です。上で挙げてる「あなた」の人称代名詞以外での使用例ですが、「あなた」には「こなた(此方)」という名詞の対義語として「遠くにある様」という意味があるんだそうです。(「かなた(彼方)」は同義語)