ハイハイ禁止令【梶原しげるさんインタビュー後記】 | NO INTERVIEW, NO LIFE.

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Interviewr Yohei hayakawa's Blog
(インタビュアー早川洋平の取材ノート)

インタビューを生業としていると、
実にさまざまな世界の方々とお会いします。

大企業のトップ、政治家、作家、スポーツ選手、大学教授、医師……。
いうまでもなく、すべての出会いが僕にとってはとてつもなく大きな財産となっているのですが、
ことポッドキャスト(インターネットラジオ)番組のインタビュアーをつとめるうえで
学びが大きいのが話のプロへのインタビューです。

なかでも大きな影響を受けたのが、
今回の著者インタビューラジオ「人生を変える一冊」 107人目のゲストで
お招きした梶原しげるさん(フリーアナウンサー)。【下の写真右】


聞聴道(もんちょうどう)~著者インタビューとポッドキャスト配信の職人 キクタス早川洋平のブログ~



梶原さんは文化放送で約20年ラジオパーソナリティなどをつとめ、
その後フリーに転身。

現在もラジオ、テレビなどでご活躍のプロ中のプロでいらっしゃいます。
そんな梶原さんが番組に登場するのは、これで4回目。番組史上最多です。

今回番組でフォーカスしたのは、今月発売の最新刊。
『あぁ、残念な話し方!』

聞聴道(もんちょうどう)~著者インタビューとポッドキャスト配信の職人 キクタス早川洋平のブログ~


彼との出会いがなければ、おそらくいま僕は、
ポッドキャストのプロデュースをすることはあっても、
自らインタビューをつとめることはなかったと思います。


あれは、今からちょうど2年前の2009年1月。

ある方のご紹介により実現した初の梶原さんへの
インタビューでのことでした。収録場所は東京半蔵門にある某FM曲のスタジオ。

当時の僕は、ポッドキャスト番組ははじめたばかり。

もちろんラジオ局のスタジオで収録したことなんて
一度もありませんでした。

しかも相手は「聞く・話すの達人」。
あまりの緊張に、生まれて初めて財布を家に忘れてしまったほどです。

しかし、さすがは梶原さん。
そんな僕の緊張を見抜いてか、
「忘れもの」をキーワードにトークを広げるなど、
終始リラックスした雰囲気をつくりだし、
番組を〝進行して〝くださいました。

ゲストでご出演いただいたのに……。


公共の電波で数十年にわたり、
数々の著名人を番組に招き、番組として成立させてきた梶原さんは、
やはりレベルが違いました。

僕はそんな彼に、思い切って当時の悩みを告白しました。


「実は自分の番組リスナーからあるレビューを書き込まれたんです……」


それは、こんなレビューでした。

「せっかく立派な著者が出ているのに、インタビュアーのトークが拙い。もったいない」

このとき僕はポッドキャスト番組のパーソナリティを、はじめてわずか数ヶ月の素人。
トークのプロではないので、いつかこうした事態が起こることは覚悟していました。

けれど、そうは言っても人から「批判」されるのはやはりこたえます。
しかも匿名のだれかから。

そんな僕の悩みを聞くやいなや、
梶原さんは笑顔で言いました。

 「大丈夫。素人だってちょっとしたコツを知ればずいぶん変わるよ」

僕はおそるおそる聞きました。

「今日のインタビューでもすぐに改善できることがあれば教えていただけませんか……」

ここで梶原さんが挙げてくれた改善点を全部書くと、字数が足りなくなるので、
最大にして最高の効果をもたらしてくれたアドバイスをひとつだけ、ご紹介します。


それは、


「ハイハイ禁止令」。





指摘を受けるまで気づかなかったのですが、
僕はインタビュー中のあいづちとして

「ハイ、ハイ。そうなんですね、ハイ。ハイ」と連呼しまくっていたのです。

たしかにタイミングのいい相づちは、
相手に「あなたの話をきちんと聞いていますよ」という雰囲気をつくりだし、
トークのテンポを良くすることも少なくなありません。
梶原さん自身、相づちの効用はこの日のインタビューやご著書でも紹介されています。


しかし、です。

この「ハイハイ」は、ラジオ(音声)番組をつくるうえでは、
かなり注意が必要だったのです。

それは、聞き手とゲストにとっては何の問題もなくても、
聴き手(リスナー)にとってはひどく耳障りんなワードだったからです。

確かに過去の自分のインタビューや、
聞いていてストレスがたまる番組のパーソナリティの話し方を振り返ってみると、
「ハイハイ」を連発していることが非常に多い。

とはいえ、対面する相手を前に何もあいづちをうたないのも、
それこそ失礼。

ではどうすればいいか。


 「答えは簡単。ハイハイいわずに(声を出さずに)、うなづいてあげればいい。
もちろんたまにハイ、というのはOKだよ(笑)」


とてもシンプルなアドバイスでしたが、
僕にとってはまさに

人生を変えるひとこと。


さっそく以降のインタビューで実践すると不思議や不思議。
「ハイハイ」しなくても、ゲストの方とのコミュニケーションはうまくはかれるし、
リスナーさんからの話し方(聞き方)に関する批判は劇的に減りました。 

このエピソードで僕が痛切に感じたこと。
それは、インタビューには「聞くインタビュー」と
「聴かせるインタビュー」があるということ。


ポッドキャストを始める前の僕が実践していたのは、
まさにいい文章を書くための「聞くインタビュー」。
だから「聞く」ことに全力を尽くす。

対してポッドキャスト番組での僕の役割は、
リスナーさんに「聴かせるインタビュー」。

いくらプロのアナウンサーでない僕でも、
リスナーさんのことを思うなら
「ハイハイから卒業」する必要があったのでした。

たしかに、「聞くインタビュー」だって、読者に伝えるときには、
読みやすい文章にして発信します。

インタビューした文字を単純にテープ起こししたものでは、だれも読んでくれません。
これでは「読者」を無視しているのと一緒です。

しかし、僕が梶原さんの指摘を受ける前にやっていたのは、
まさに「リスナー」を無視している「聴くに堪えない」インタビューでした。

ポッドキャストは生放送ではないので、
編集で「ハイハイ」を削ろうと思えば削れます。

でも、「リスナーの聴き心地」を無視した空気感を削ることは、
絶対にできません。

音声は見えないからこそ、
リスナーの方も話し手やゲストの息づかいや言葉の裏側にある真意に敏感。
これはラジオ好きな方であれば、よくおわかり頂けると思います。

心のどこかに、
「いいインタビューをしているはずだ」というおごりがあった
僕の目を覚まさせてくれたあのリスナーさん、

そして僕を「ハイハイ」から卒業させてくれた梶原さん、
本当にありがとうございました。

これからも聞聴道は長く険しそうですが、頑張ります。

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聞聴道(もんちょうどう)~著者インタビューとポッドキャスト配信の職人 キクタス早川洋平のブログ~
●無料著者インタビューラジオ「人生を変える一冊」

Vol.107 梶原しげるさんインタビュー音声(mp3ファイル)

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■梶原しげるさんの著書

『あぁ、残念な話し方!』



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