職場におかしな電話がきた


私はそれをはじめ

苦情電話だと思って聞いていた


だって、始まりが

「店長さん、いらっしゃいますか?ちょっと申し上げたいことがあるのですけど」だったから


だけど生憎その時は店長不在で

キャリアの長い私が承ることになった


電話をして来たのは

恐らく50代か60代の男性だと思われる


彼の言葉のまま、掲載する


「いえね、うちの娘が今朝お宅に買い物に出たんですよ

買い物を済ませて、車に乗り込んだ時にですね

20代後半の、身長は180はあろうかというガタイの良い男性が

娘の車の横まで歩いてきたそうなんですよ


でね、その男性がおもむろにズボンのジッパーをおろしてね

アレ、を出したと・・・すみませんね、こんな話で

うちの娘もね、もう30過ぎてるからそんなに驚く歳じゃないんですけどね

とにかく、その出したモノが、とても大きかった、と


でね、それは明らかに皮を被っていなくてね、

これってつまり勃起状態ですよね?

でね、その先端からたらーっと白い液体が垂れたと言うんですよ


で、店員さんはお幾つですか?」



それまでの間

事細かにお話内容のメモを取っていた私は

自分の歳を答えた


「ああ、まだお若いね。あのね、私も娘が言うのは恥ずかしいと言うので

こうしてお電話している訳なんですけれどね、

今も妻も横にいるのですが、こういうのって、どうなんですかね?

私達老夫婦には良く分からなくて・・・


店員さん、その先端から出てたモノって

何だと思います??」



ん??



この時点で、疑問を持った



ただの苦情の電話なら

「ちゃんと見回ってくれ」だとか

「どうにかしてくれ」と言うものだろうと思うのだが


先端から出たものが何か、などと

関係なくなくないですか??



だけど、私は店員

相手はお客様


「それは正確には、何時頃の出来事ですか?駐車場にも監視カメラは設置していますので

もしかしたら写っているかも知れません」


私はそう言って

時刻とその男の身体的特徴を書き留める


「私どもも店舗内でしたら対応出来るのですけれど、駐車場となると毎時間見回りをしている訳では御座いませんので・・・」


「そりゃ、そうだとは思いますけどね・・・剝けたおちん○んから白い液体が出たんですよ!

店員さん、何だと思いますか?」


こう聞かれて



ああー



これって、わいせつ電話?



最も卑猥なのは、その男ではなくアンタだよ、

と思ったのは間違いない



「何でしょうね、私には分かり兼ねますが、とにかく店長にはそのように報告しておきます。

もしも必要でしたなら警察への通報をお願い致します」


私はあくまでも「店員」としての対応をした


だけど彼は追ってきた


「その歳で分からないってことないでしょう?店員さん、何が出てたと思います?」



精液だろ?

ピュッて出たんだろ?

そんなの、何が面白いの?


それを言わせたくて、電話してんだろ?

もしかして、犯人はお前か??



「どうにも申し上げられません。とにかくこのことは上の者に伝えた上、監視カメラも確認致します。わざわざお電話頂き、有難う御座いました」


そう言って電話を切った


日中の夕暮れ近い時刻だった




もうひとりの従業員に、そんな電話があったと伝える


すると


「で?真面目にメモったの?それあからさまにあなたに卑猥なこと言わせたいだけじゃん」

「もしかして、今も近くにいて店長がいないことも知ってるのかも知れないよ?」



なるほど


携帯があれば、そうかも知れない



誰が訪れるのか分からないのが店舗の怖いところだ


良い人もいれば、もしかしたら犯罪者も変質者もいるかも知れない


それを見分けることは困難で


それを見分けて差別することを販売員は許されない





暖かくなると、こういう輩が湧いてくる


どうしちまったんですかね?



恐らく

普段は普通の人、人の親、会社員

そういう肩書きを持っているであろう人が

誰にも分からないと思う場面では

格別下品なことを、平気な顔をしてしたりする



その電話も、非通知だった




エッチな気分なら、そんな女性に発散したらいいのに


真面目に仕事をしている者に向けられるのは

大概、迷惑、だ