酒に酔うのもコツがいる


ちまちま飲めば

頭が痛くなったり、白けたりして

冷静になって、もっと辛い


かと言って

若い男の子のように流し込めば

楽しむ間もなく泥酔する



丁度良く酔ったその時に

私は色んなものから解放され

新しいひらめきや、感覚を得る


ギリギリの淵を歩いて

危なげな夢を見る




これは

恋に、似ている




恋をするのもコツがいる


飛び込むタイミングを逃せば

厄介になったり、重くなったりして

相手を気遣うばかりで、もっと息苦しい


かと言って

何も考えずに溺れれば

周りに迷惑を掛ける



丁度良く恋をしたその時に

私は

丁度良い女に成り下がり

丁度良い




大人になってこの方


「丁度良い」塩梅を覚えた



人付き合いも

恋愛も

世間での振る舞いも


丁度良いところを保とうとしている



色んな鎧を付けたのに

それは思う程頑丈ではなくて

傷付く痛みを

もう十分に知っているから



無難にやり過ごせば何事も

「丁度良い」ことを知っている




同じく


死ぬことにもコツがいる


ためらえば生き恥を晒すだけだし

面目ないわ、情けないわで

更に生きるのが辛くなる


かと言って

無責任に何もかも放り出せる程

無知でも恩知らずでも、ない



丁度良く生きることは出来ても

丁度良く死ぬのはとても難しい




そもそも

コツって、何だ?




何回もやっったことに対して

慣れたから掴む

経験のことだろう




私はこの人生を生きるのは

これが初めてで

恋愛も

その相手とするのは初めてだ

死ぬことも、

つまり生きてるってことは

一度も成功したことがない訳で



何から何まで

いつまで経っても

私は初心者



年齢や今までの経験など

何も役に立たない




丁度良いところにいるから

正解が見えない





年齢を重ねるごとに

また

色んなものを背負うごとに

怖くなる


私だけの人生ではないと思うから



だけど

慎重になることと

臆病になることは違う



守るものが多いなら

私は他者より強くなれる筈




まだ到達していない空白の部分に

きっと正解が、ある



今はいない先人達が教えてくれなかった正解が

きっと

そこにあるような気がして




「丁度良い」を脱ぎ捨てれば

そこへ行けますか?




それは

社会から逸脱することじゃありませんか?

よくTVのニュースで見るような




紙一重とは、このことだ




私は

この違いが


良く分からない





分からないから



明日は我が身だと思っている







皆が正当と思うことが

私にとっての正当とは限らない