「恋する寄生虫」を読み切って

読後に何とも言えない気持ちになったのですが

 

恋愛ものといえば恋愛ものなのですけど

ちょっとひねりがあるストーリーで

こういう世界が苦手な人もいるだろうなと思われる小説でした

 

私には好きな世界観で

後半に進むにつれて

どんどん面白くなっていったんですけど

苦手な人には苦痛しかないと思います

 

ただ単純に

誰かが誰かに恋するだけじゃなくて

ちょっと病んだ人たちの恋愛

 

だから一筋縄ではいかず

行ったり来たりを繰り返して

結論すらもいろいろ考えられる

 

ここから先はネタバレしますので

まだ読んでない方

映画を観るまで内容を知りたくない方は

これ以上進まないで下さい

 

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誰かに恋する時

理由よりも先に

心が動かされているものだと思いますが

 

それがもしかしたら

自分の体に寄生する「虫」の仕業だったとしたら?

 

高坂はある日突然訪ねて来た男から

ある女子高生と友達になれと言われます

彼女は自分より10歳も年下の17歳

 

何よりも高坂は極度の潔癖症で

自分の部屋は常に消毒薬の匂いがし

手を何度も洗い

シャワーを何度も浴びるほど

病的な潔癖症です

 

他人と手をつなぐことすら絶対に無理

対人関係も上手く築けず

職を転々として結局無職になって引きこもっている彼が

友達になれと言われた少女は

金髪に短いスカート

ヘッドフォンをつけて煙草を吸っている

 

全てにおいて「無理」だと思えるその少女・佐薙に

「任務」として友達になろうと声を掛けます

 

すんなりは行かずとも

徐々に心を開く佐薙は

「フタゴムシ」のピアスをしていて

寄生虫に妙に詳しいという

容姿とは似つかない側面も持っている

 

高坂が佐薙と友達になる「任務」には

金銭が発生していますが

それ以上に彼が密かに企んでいた

マルウエアのばらまきをネタに取引させられたという

負い目もあるので

苦痛に思いながらも

佐薙との関係を続けるほか選択肢はない

 

ただ彼の中に少しずつ変化も現れる

 

二人である約束をするのですが

それを果たそうとした時に

自分の作ったマルウエアによって

自分が困るという状況を招いたり

 

二人が「寄生虫」に感染していることで

操られているという仮定で話はクライマックスへ進み

「この恋はほんものなのか」と

自問自答するあたりは

映像化された時に

楽しみな部分でもあります

 

遣都くんがどう表現しているのか

待ち遠しいですね

 

佐薙はある企みを持って

高坂にキスをしますが

それがもとで高坂は命を救われ

佐薙は命の危機に陥る

 

二人は自分の意思で相手を愛していると

考えるようになりますが

佐薙はまだ完全に命が助かっているわけではない

 

ある意味「自分の意思次第」で

明日にでもこの世を去ろうと考えている

 

一つだけ

二人が死を避けて生き続けることが出来る方法は

肉体的に結ばれるしかないのだろうと思います

(それが何故かは本編を読んだ方が面白いかと)

 

ラストはどうなるかを書いてはいません

どちらとも取れる書き方でしたが

私は二人が愛し合う世界を信じたい

 

生きづらい二人が

例え自分達だけの世界に籠ることになったとしても

それはそれで幸せなんじゃないかと

 

フタゴムシのように

引き離されてしまうと死んでしまう

そんな二人だからこそ

運命共同体として生きて行く選択をして欲しい

 

ただし一度交わってしまうと

二度と戻れないという恐怖もあるだろうし

どちらかがいなくなった時に

耐えられないほどのショックを受けるかもしれない

 

それでも二人で生きることを選んだ方が

いいんじゃないかと思いました

 

そもそも「恋愛」なんて

本人たちの世界の話で

外から見ている者にとっては

どうってことない他愛無いもの

 

惚気話も痴話げんかも

「ああそうですか、がんばれ」

と棒読みするくらい

周りの人間にとっては

どうでもいいことなんだと思います

 

それでも

自分すらも受け入れられない人間が

他人を受け入れようと思うようになるのは

世界がひっくり返るほどの大事件で

 

そのきっかけが例え

奇妙奇天烈なものだったとしても

知るきっかけとしては十分で

 

但し知る前と知った後では

違った感情も生まれてくるし

失う怖さを抱えなくてはいけなくなる

 

何も失いたくなければ

何も持たなければいい

 

でも生きていく上で

何も持たずにいるのは

ちょっと寂しい気もするし

社会と完全に遮断した状態では

生活などできるはずもなく

 

知らなくてもいい感情だったとしても

知った方がより幸せを感じるんじゃないか

 

私が二次創作で度々使う表現ですが

知らなくても生きて行けるけど

知った後は痛みも幸せも手に入れることになる

どちらがいいかはそれぞれですけど

知った方が人生の幅は広がるんじゃないか

そんな風に思いました