年明けにはるきちの詳しい遺伝子検査を受けたいと主治医に伝えました。
実はつい最近まで遺伝子検査は必要ないと思っていました。
はるきちの原疾患である片側巨脳症は遺伝子の突然変異が原因と言われています。
「○○遺伝子のうんたらかんたらによる××変異により~」とか分かったところで
「はぁ・・・」って感じだろうし(←医療人らしからぬ発言)
病名は『片側巨脳症による大田原症候群』で十分だと思っていました。
遺伝子変異は私の中では交通事故のようなもの、という認識です。
誰の身にも起こりうる・・・というか遺伝子変異は誰でも数個は持っているそうです。
交通事故でかすり傷程度の人もいれば身体不自由になったり亡くなってしまう方もいる。
はるきちの遺伝子変異がたまたま大事故に繋がってしまうものだった・・・。
その『たまたま』がなんで我が子だったのか考えると腑に落ちないですが
自分の身には関係ないと思っていても誰の身にも起こり得ることで
世の中的には一定の確率で起こっていくもの。
話は変わりますが、職業柄文献をよく読みます。
時々驚くような情報を得られることがあります。
自分と同い年の大田原症候群の患者さんがご存命であるとか。
片側巨脳症の患者さんにはある種の癌は発生しないとか。
ほんの数年前までは原因不明のてんかんや脳性麻痺と言われていた子でも
近年の目覚ましい研究技術の向上により原因遺伝子が次々に発見されています。
はるきちのような脳形成異常の原因遺伝子も現在研究が進んでいる最中ですが
まだまだ未知の部分が多いと言われています。
すごいなー これからもっと研究が進むといいなー がんばってほしいなー
と色々な文献を読んで思ったのですが、ふとこんなに他人事でいいのか?と思ったのです。
私たちが今受けることができる恩恵、例えば最新の情報だったり新しい薬だったり。
それは先人の方が研究や治験の対象となってきて下さったおかげなのですよね。
そんなに患者数が多くないこの疾患。
症例を集めるのも大変だろうな。
症例がもっと集まったらもっと分かることがあるかもしれない。
将来研究がもっと進んで遺伝子に特化した薬の開発につながるかもしれない。
偉い先生に「ここまでひどい形成異常」と言わしめたはるきちの脳。もしかしたら新しい遺伝子変異が見つかったりして。
これからこの病気で生まれてくる子のためにお役に立てるかもしれない。
そういう思いがあり遺伝子検査をお願いすることにしました。
我が子を研究材料に使ってくださいと申し出る私はヘンなのでしょうか。。
ただずっと創薬に関わってきた父親の背中を見てきたし
今も仕事で治験に関わることもあるので研究者側の苦労が分かるのもあるし
普段福祉の恩恵に与っているのだから、はるきちにしかできないことがあるなら
それに参加し役立つことによって社会にお返しをするべきなのではないかという考えもあり。。
これがかなり苦痛を伴うものであったり安全が確保されないものになると話は別ですが
遺伝子検査に必要なのは子供と両親の血液と同意書だけです。
研究対象になり得るとみなされれば研究費の患者負担はありません。
検査に出したからと言って必ず遺伝子異常が判明するとは限らないのですが。。
「脳形成異常の研究ならこの大学のこの先生」というお方と面識があるとのことで
主治医を通してはるきちの脳は研究対象になるかどうか画像を見てもらったのですが
その回答がちょっと驚くものでした。
『片側巨脳症というよりは左右差のある多小脳回が疑われる所見だと思う。
研究に協力していただけるなら大変有難い。』
・・・え?
脳形成異常のオーソリティーが片側巨脳症でないとおっしゃる?( ̄_ ̄ i)
多小脳回ってなんぞや???
一瞬パニくりましたが、病名が変わったところで治療法は変わらないし。
多小脳回の確定診断には病理が必要みたいですがもちろんやるつもりはないし。
確かに両方の脳に異常があるはるきちには
片脳性である片側巨脳症という病名に違和感を感じることもあったけど
オペした病院や各地の先生たちがテレビ中継を介したカンファレンスで
満場一致で付けてくれた病名だし。
うーーーーーむ( ̄ー ̄;
話が思わぬ方向に行ってしまいましたが
もしかしたら遺伝子検査ではっきりした病名が分かるかもしれないと期待しつつ
私たち夫婦と検査ついでに採ったはるきちの血液をその先生のもとへ送ってもらいました。
脳形成異常の研究やこれから生まれてくる子供たちのお役にたてますように。