捕まえて7 | お気楽ごくらく日記

お気楽ごくらく日記

白泉社の花とゆめ誌上において連載されている『スキップ・ビート』にハマったアラフォー女が、思いつくままに駄文を書き綴っています。

「」は日本語『』は英語です。

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『彼女に手を出すなっ!!』その言葉と同時に、ドカッと音がしたかと思うと、自分に馬乗りになっていた男が吹っ飛んで行くのが見えた。


服のボタンを引き千切られ、肌も露になっているキョーコを認め、もう一度リチャードに殴りにかかろうとした蓮だったが、それは叶わなかった。


キョーコが後ろから蓮に抱きついてきたからだ。しかもその細い腕は恐怖のためか小刻みに震えている。


蓮は自分のシャツを脱いで羽織らせ、キョーコを強く強く抱き締めた。「怪我とかない?」と聞くと、


頭を横にフルフル振って、蚊の鳴くような声でキョーコは「・・・大丈夫。何もされてないわ。久遠が助けに来てくれたから。」


「無事でよかった・・・」と更に力を込めて、蓮はキョーコを抱き締めた。


蓮の香りと温もりに包まれて、それまで気丈に振る舞っていたキョーコの涙腺が決壊した。「久遠、久遠、久遠、恐かった」と、自分の首にしがみついて泣きじゃくるキョーコの背中を優しくポンポン叩いて、蓮はあやした。


暫くそうしていると、男の呻く様な声が聞こえたので、二人でそちらを向くと、リチャードが口の端から滴る血を拭いながら、起き上がっていた。


その狂気に満ちた目を見た、蓮はキョーコを背に庇った。


『つぅ。そんなにヒーロー気取りでいたいのか、クオン。反吐が出るな。』


『俺は、ヒーローなんかじゃない。ただ、愛しい彼女を守るしか脳のないしがない男だ。』リチャードを睨み付けながら、蓮は答える。


『フン、どうだか。俺は昔から、お前のそんな所がムシズが走るぐらい嫌いだったんだ。』


『そうか、気が合うな。俺も、女性を自分の性欲の捌け口としか扱わないお前のことは嫌いだったよ。』


追っ付けやって来たミランダは、ひどい姿のキョーコと火花を散らす男二人を見て、息を飲んだ。


『流石、親子揃ってフェミニスト様の言う事は違うな。同じ二世なのに、あの見てくれ俳優とモデルのクーとジュリエナの一人息子だからってだけで、周囲からの扱いはお前の方がずっと良かった。女どももだ!少しばかり見てくれのいいお前の方に靡きやがって!!』


『・・・そんなの当たり前じゃない!』

チャードの余りに理不尽な言い種に、それまで青白い顔で黙って立っていたキョーコが口を挟んだ。


キョーコを止めようと振り向いた蓮だったが、師とも父とも、尊敬し崇めているクーと最愛の恋人の蓮を蔑まれキョーコの怒りは留まることを知らなかった。

『あなたの親がナンボの物か知らないけど、貴方を見てると大した人物じゃなさそうね』


カッと頭に血が上ったリチャードが『パパの悪口を言うな!ジャッポの癖に!!お前たちなんかパパに頼めば、ショービズ界から抹殺することなんて簡単なんだぞ!』

『はん。やれるもんならやってみなさいよ!パパにお強請りしなきゃ何にもできないあんたなんかに、誰が負けるもんですか!!、いい年してバカじゃないの!!』先程の恐怖も何処へやら。本来の負けん気が戻ってきたのか、キョーコはいつもの調子でポンポン言葉を吐き出した。


リチャードは信じられないモノを見るような目でキョーコを見ていた。

なぜなら、いつもはこう言えば、誰もが保身に走って、自分に歯向かってなど来なかった。いや、むしろ自分のバックに控えている父親を恐れて、みなリチャードを腫れ物のように扱ってきたのだ。


なのに、この少女はどうだ。真っ直ぐ自分を見据えてくる。リチャードの言葉なんて、恐るるに足らないというように。いや、実際、恐れていないのだろう。


生まれて初めて、リチャードは人が怖くなった。

《続く》


リチャードは、蓮(久遠)を「魔物」と呼んで蔑んでいた「名無しの権兵衛くん」のイメージです。


文中の「ジャッポ」は、Japanese(日本人)を差別した言い方です。



こうなったキョーコを止めるのは至難の業なので、蓮は傍観することにした。