チャリンコちょーっとだけおいておいただけなのに。
帰ってきたら、チャリがない。
うわー!!やられた。
というか、無断駐輪だから、持ってかれた。
5000円だよ。身代金。
もう時間外だけど、チャリに一目会えるかと思って、トコトコ歩いて着いた。
薄暗く、人通りのない場所。
10mくらい高さあるおっきなコンクリートのような壁に囲まれている。
窓の無い、無機質な場所、錠がかかっている。
檻のような黒い鉄の入り口はどっしりして、動きそうもない。
なんと!マイ チャリ。
こんな恐ろしいところに入れられてしまったなんて!!!
圧倒された。その恐ろしい存在に。まるで監獄だ。
そしてチャリへの申し訳なさで胸がいっぱい。
毎日毎日、乗ってきたマイチャリ。
可哀想すぎて、申し訳なくなる。
私のせいで、こんな場所に・・・。ごめんね、ごめんね、早く迎えにいくからね。。。
檻の受付の小屋の窓ガラスは、割られていた。
たくさんの人が石でも投げたんじゃないかな。
だって5000円、ママチャリだったら、取りになんかいかないかもね。
チャリ通勤できなくて、電車通勤。
2日後、ようやく仕事が定時に上がれたので取りにいく。
あの恐ろしい場所。。。。
今日は重い扉が開いている。
中に入る。
おっちゃん3人。
いつ運ばれたの?と聞かれる。
おととい。と答える。
「こんないいスポーツカーだね!」
「・・・・」
「どんぐらい乗ったの?もう色んなところ行ったの?」
「・・・・」
「鍵壊れている?」
「・・・・」
「壊れてるね、引き取るよ」
「いやいいです。」
雇われ人だから、ただ自転車取りにきたら返してあげて、なんてしか言われてないんだろうな。
どんな気持ちで引き取りにきているのか、わかってないんだろうな。
ここで働いているおっちゃんは、ただ仕事してるだけだから、責めたりはしないけど。
そこまで優しくないよ、私は。
他の場所で聞かれたなら、このチャリはね~こんなとこあんなとこ行って、こんなこともあって~って楽しく話すけど。
なんで、たった数時間放置して、持ってかれて、鍵ぶっ壊されて、はるばる迎えに来て、身代金5000円払うってのに、そんな会話しなきゃならんのだ。
悔しさと悲しさでいっぱいだ。5000円払うのが悔しいんじゃない。
人間への悔しさだよ。
「数時間しか停めてないんですけど」
「法律で決まってますから」
「いい商売ですね」
「・・・・」
無表情で言ったら、おじさん顔が強ばっていた。
法律が何より大事と思って生きる人間なんて、面白みのない人間ばかり。
応用の利かないマニュアル人間か、ジョークも通じない超真面目人間。
他に頼るものがない弱い人間もいるけど。
ここにいるおっちゃん3人は、普通の人だったけど、ただハイハイと決まり事に沿ってやるだけ。
冷たい態度とっちゃったけど、おっちゃんの気持ちに配慮して対応するほどの気力はなかった。
無断駐輪。法律違反。金。
何が残る?
法律、金。サヨナラ・・・・対立、憎しみ、戦い。
もっとユーモアのある策は考えられなかったのでしょうか???
無断駐輪が減らないからとどんどん身代金の値段を上げていく。
つまらない人間だと思う。
ユーモアがあれば、お互いにとっていい関係なのに。
たとえ身代金要求されたって、「あちゃーやられたぁ~(笑)」でハッピーエンド。
人間味のない人間。
人間味って、ユーモア、そして優しさかなと思う。
自分で本質を考えなかったり、他人の気持ちを考えられなくする。
それが法律なんじゃないかな。
麻薬より怖いね。
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5000円と引き換えに、マイチャリが帰ってきた。
思わず涙が出る。
ごめんね、ごめんね、あんな怖いところに、私のせいで2晩も居させてしまった。
チャリに頬ずりしたくなる。
そんなにチャリに想いはなかったはずだけど、
一番毎日一緒に過ごしてるモノ。
もう4年目、毎日毎日、家から仕事場まで私の足になってくれてる。
つらくて毎日泣きながらチャリ漕いだこともあったし、
チャリ乗りながらいつも人生について考えている。
いつの間にか私の一部になってるんだって気づいた。
色んな想いが込み上げる。チャリは泣けるからいいよ。
電車だとみんな心配するし、恥ずかしいけど。
涙流れても、風にのっていつの間にか、こころもすっきりしちゃうんだからね。
家に帰っていつもの定位置。
おかえり。戻ってきてくれてありがとう。