当ブログ開始前の過去記事です
オリジナル日記
さようなら、ポストカード✉︎アメリカ空想旅行
2017-08-19
このブログ記事は昔の絵葉書をもとに再構成した壮大な(笑)200%フィクション・架空の日記です。登場人物等はいっさい関係ありません。あなたが主人公であっても関係ありません(^_^;)。夏のひと休みに、ぜひお楽しみください
さようなら、ラブレター
ハンフリーは好きさ、ボガードがさ、だったか、ボガードは好きさ、ハンフリーがさ、だったか、あるいはそのどちらでもなかったかは忘れたが、
ラブは好きさ、レターがさ、そのラブレターのことは良く覚えていた
ラブレター、それが彼女の名前だった
♣︎♣︎♣︎♣︎
オフィスのOAルームでのこと
オフィスのOAルームでコピーをとってオリジナルを取り出すと、なぜか関係ない手紙が一枚残っていた
ちぎれたピースを糊でつなぎ合わせた、まるでジグソーパズルのような手紙だった
そこへ男性が慌てて入ってきた
先輩のYさんだった
手にした書類を指差し
見た?
いいえ、これですか?
Yさんは苦笑いして
しょうがないな、昔のことだよ
と言って手紙を受け取り、OAルームを出た
それはだいぶ昔の、1987年夏の、女性からの古びた手紙だった
それからオフィスを出て地下鉄に乗った
ホームに出ると、ブォォーッと電車の熱風が凄まじかった
改札から地上へ、額にハンカチをあてながら地下階段を上る
長いなあ
こんなに長かったかなあ
いつもより果てしなく長く感じた階段を上り詰め、やっと出口に近づくと
こんなに長いと、これは異次元への階段?
まさか
あり得ないことを考えているうちに、やっと地上に出た
地上に出ると、そこは、、、あの1987年の夏だった
♣︎♣︎♣︎♣︎
ラブレターの絵葉書
それは1987年の夏から届いた
ラブレターの数枚の絵葉書
それらが偶然出てきたのは古い写真を整理していた数か月前のことだった
彼女の写真は一枚もない
写真も含めて全て処分したはずだった
今ならスマホにラインかな
そんなことをつぶやきながら見ていると絵葉書に混じって便箋に書かれた手紙が出てきた
そこには「U.S.A. 旅行予定表」と書かれていた
それは彼女が大学生最後の夏、両親と一緒に行ったアメリカ旅行のとても細かい予定表だった
1987年夏、西海岸ロサンゼルスから東部中央のサウスベンドへ、そして折り返すようにサンフランシスコまで
予定表を見ながら、大陸横断の旅行を想像した
よしっ!
とは言わなかったが、
彼女のコースを辿ってみたい
と思った
手もとに残った予定表と絵葉書と、それからかすかな記憶をもとに、あの夏のラブレターの旅を追ってみた
♣︎♣︎♣︎♣︎
夏のエンブレイス
アメリカ出発前のことだった
ねえ、海に行こうよ
夜は海浜公園の花火大会ね
海に行って、花火をみて、夜を過ごした
その前は
海に行きたいね
水着を買うからお店に付き合って
夏の始まりだった
その前は
アメリカは行きたくないよぉ〜
だった
その前は、、、思い出せなかった
そして当日、
ラブレターを乗せた飛行機が成田の空に溶け込んで何も見えなくなり、そっと抱きしめた腕の中の温もりと唇の優しさ、その感覚と夏の思い出だけが残った
1987年、夏
7月25日(土) 成田 → ロサンゼルス
19:30 成田発のPANAM 2便/13:10 ロサンゼルス国際空港着/Clark Hotelにチェックイン
7月26日(日) ロサンゼルス/CA
この日は一日中ディズニーランド
7月27日(月) ロサンゼルスからサウスベンドへ移動
8:30 LA発のウエスタン航空362便/デンバーでUA598便に乗り継ぎ/19:59 サウスベンド国際空港に到着/Hickory Inn Motel にチェックイン。飛行機にばかり乗っていた
7月28日(火) サウスベンド/IN
ノーターデイム大学 University of Notre Dame 訪問
7月29日(水) サウスベンド
ミシガン湖へ行って気温が25℃もないのに少し遊泳
7月30日(木) ロチェスター/MN
7月31日(金) ミッチェル/SD
気温85℉(30℃)。とうもろこし畑と牧場がずーっと続く。Mitchellでは"Motel 6"という安いけどなかなか綺麗なホテルに泊まった
8月1日(土) ラピッドシティ/SD
8月2日(日) グレービル/WY
Wyoming州に入ってすぐの所にある"Davil's Tower National Monument"に寄ってきた。映画「未知との遭遇」の中で宇宙船が到着する岩山にそっくり
8月3日(月) リビングストン/MT
Yellowstoneではクマさんに会ってクッキーをあげるのを楽しみにしたが、クマさんにはお目にかかれず、残念
8月4日(火) グレートフォールズ/MT
8月5日(水) ミズーラ/MT
Gracier National Parkの雪にふたりの名前を書いて残した
8月6日(木) ツインフォールズ/ID
町の入口にその名のとおり、ふたつの滝が川に流れ込んでいる。アメリカに来て一番の暑さ
8月7日(金) バトルマウンテン/NV
Nevada州は砂漠だらけの不毛の土地で、たぶんギャンブルだけでやっているのではないかと思うほどどの町にもCasinoがあった。そこで3回やった。一喜一憂一分だった
8月8日(土) リノ/NV
8月9日(日) リノからサンフランシスコへ移動
16:35 Reno発/UA 935便/17:26 San Francisco着/Beverly Plaza Hotel にチェックイン
8月10日(月) サンフランシスコ/CA
市内観光
8月11日(火) サンフランシスコ → 成田
14:15 San Francisco発/PANAM 11便
8月12日(水) 16:55 成田空港着
ラブレターが帰ってきた
到着ゲートから彼女が出てくると、出発のときのように腕の中に彼女を抱きしめ、そしてまた夏の続きが始まった
♣︎♣︎♣︎♣︎
さようなら、ラブレター
数日後のこと、オフィスのOAルームでコピーをとってドリンクコーナーに寄ると、先輩のYさんが近づいてきた
あの手紙、捨てたよ
と片目を閉じて、手紙を破る仕草をした
ですよね、素敵な思い出です
えっ?やっぱり、だよな…
日焼けしたYさんがまた苦笑いした
あっ?手紙!
手もとのコピーを確認するまでもなかった
急いでOAルームに戻った
こんなに長かったかなあ
いつもより果てしなく長く感じた通路を急ぎ、
これは異次元への通路?
そんなあり得ないことを考えながら、やっと入口に着いた
ドアが開いて慌てて中へ入ると、
そこは、
そこには、あの夏のラブレターが、、、
いや、
いいえ、これですか?
コピー機の前に立つ女性は、ラブレターではなくて、アシスタントのSさんだった
Sさんから手紙を受け取るとき、
素敵なポストカードですね
いたずらっぽい目がウインクした
ラブレターとの思い出は全て無くなったが、記憶の中の思い出は夏の陽射しのようにいつも眩しい
素敵な夏と思い出に、感謝を込めて
さようなら、
ラブは好きさ、レターがさ
■ さようなら、ラブレター
by ixprime 2017
Information
冒頭の「ハンフリーは好きさ…」は「さようなら、ギャングたち」高橋源一郎(1982)より
PANAM(パンナム)はパンアメリカン航空(1927~1991)
Clark Hotel, LAは現在は Dazzler The Clark Hotel
Hickory Inn Motel, South Bendは現在は Hickory Inn Budget Motel
Beverly Plaza Hotel, San Franciscoは現在は Hotel Triton
USA旅行は全行程19日間、飛行機とレンタカーで横断、総走行距離・移動距離不明
一部の画像はネットから拝借しました
改題:「さようなら、ポストカード」を「さようなら、ラブレター」に。2020/9/24