真冬。

 

気温4度の夜。

 

 

 

愛車、アクアから「不可解」なインキ―で、

 

 

ボクは、

 

うっすいシャツ1枚で放り出された・笑。

 

 

 

アクアを一周する。

 

 

やっぱり、

全てのドアはロックが掛かっている。

 

 

 

・・・・・さて、どうする????

 

 

 

とりあえず、

 

家に向かって歩き出した。

 

 

・・・・いや、「その場を去った」ってのが正しい。

 

 

ここにいても埒はあかない。

 

 

 

気温4度の冬空の下。

 

 

うっすいボタンダウンのシャツ1枚。

 

 

ここにいても北風に晒されるだけ。

 

 

すぐに体温を奪われる。

 

 

止まってる時間はない。

 

 

とりあえず、家に向かって歩き出し、

 

 

歩きながら、

 

 

「どーーーすりゃいい??」

 

 

対策を考えるしかない。

 

 

 

・・・・・ちなみに、こっから家までは17kmくらいの距離だ。

 

ちょっと歩いて帰るってのには距離がありすぎる。

 

 

 

・・・・いや、

 

とりあえずは、

 

いざとなったら歩き続ければいいと考えていた。

 

 

 

・・・・・その昔、

 

東京に出てきてすぐの頃。

 

 

都心の都心で財布を盗まれたことがある。

 

今と同じように「無一文」にさらされたボクは、

 

30kmの道のりを歩いて帰ったことがある。

 

 

深夜に都心を出発して、

 

アパートにたどり着いた時は、すっかり朝・・・・どころか、昼近くになっていた。

 

 

あの経験から、

 

まぁ、

 

 

「無理ではない」

 

 

そう考えていた。

 

 

 

 

真っ暗な、

 

ほっそい道。

 

 

車が1台も通らない道を歩く。

 

 

 

・・・・・さっみぃーーーーーー・・・・

 

 

 

皮ジャンを羽織っていれば気にならないくらいの風。

 

うっすいシャツ1枚では、モロに北風を受けた。

 

 

 

スマホは車の中だ。

 

・・・・で、財布も車の中。

 

 

小銭の100円すらポケットにはない。文字通りの「一文無し」・・・・公衆電話すらかけられない。

 

 

・・・・まぁ

 

けども、

 

 

かけるにしても、

 

 

「電話番号」ってのが、頭に1件もなかった・笑。

 

 

 

携帯電話が普及してから、

 

 

電話番号を覚えるって作業がなくなった。・・・・・むっかしは、覚えるしかないから、頭の中には電話番号が100件くらいはあったもんだ・笑。

 

 

今は、

 

かろうじて憶えているのは、

 

田舎の実家の電話番号だけだった・笑。

 

 

あとは、

 

なーーーーーんも憶えていない・笑。

 

 

奥さんの携帯電話番号すら憶えてなかった・笑。

 

 

今さらながら、

 

 

「スマホがないと何もできない」ってことに気づく。

 

 

・・・・で、

 

おまけに「無一文」

 

 

タクシーに乗ることすらできない。

 

 

 

タクシーに乗る。

 

 

家に着く。

 

 

家の鍵もない・笑。

 

 

ってことは、家に入れないってことだ・笑。

 

 

 

まったく、

 

運の悪いときは悪いもんで、

 

 

今日は、奥さんが会社関係の飲み会があるってことだった。

 

今、

タクシーで帰っても、

 

まだ帰って来てない可能性大だ。

 

 

・・・・ってことは、

 

タクシーで家まで帰っても支払いができないってことで、

 

こりゃ、タクシーに乗るわけにはいかない・・・・

 

 

 

 

・・・・どーしたもんか・・・・

 

 

 

って思っても、

 

まぁ、

 

ここには、タクシーが1台も走っていない・・・・ってか、車も、人っこひとり歩いていない・笑。

 

タクシーに乗りたくたって、通りががってもくれない。

 

助けを呼ぶ「人間」ってのすら歩いていない・笑。

 

 

 

・・・・こりゃ、困ったぞ・・・・

 

 

 

まぁ、

・・・・まずは、交番に行ってみよう。

 

 

そう思っていた。

 

 

いつも倉庫に来る途中に交番があった。

 

 

 

「交番に行って何て言う???」

 

 

 

・・・・そーーーーなんだけど・・・・

 

 

でも、

 

とりあえず交番に行くしかない。

 

 

 

テクテク・・・・トボトボ・・・・

 

 

北風の吹く中。

 

うっすいシャツに冷たい風が突き刺さる。

 

 

霧雨が漂う中。

 

すぐにシャツは冷たい湿気を帯びていく。

 

 

闇夜の中だ。

 

そこかしこに何かが蠢いてるような感覚に襲われる。

 

 

とりあえずで、

 

交番目指して歩いた。

 

 

 

交番はすぐだと思った。

 

 

車で走ってる時はワンブロックもないと思っていた。

 

 

事実、

 

おそらく、

 

距離としてはいくらもないんだと思う。

 

 

とっころが、

 

 

・・・・いやぁ、

 

これが、歩くとなると結構な距離、時間だった。

 

 

 

一本道だ。

 

すぐに、交番の赤い灯が見えてきた。・・・・なんせ、周りが真っ暗だ。よーーく見える。

 

 

・・・・どれくらいだろう、

 

 

10分は歩いたと思う。

 

 

交番にたどり着いた・・・・

 

 

が、

 

 

誰もいない。

 

 

少しの逡巡。

 

入っていいものか、どうなのか・・・・・

 

 

引き戸を開けて中に入る。

 

 

北風から守られる・・・・暖かい・・・・

 

 

さて、どうしたもんか・・・・

 

 

 

机の上に電話があって、

 

 

「御用の方はこちらへ」

 

 

ってな感じの張り紙。

 

 

 

・・・・・電話をして何と言えばいいんだろう・・・

 

 

そもそも、交番に言っていいのか・・・???

 

 

でも、

 

冬空の下。

 

無一文で放り出されて困っている。

 

 

困ってる国民を助けてくれるのが警察だ。

 

 

 

意を決して受話器をとった。

 

 

 

「どうされましたか?」

 

 

女性警察官の声がした。