世の中の「閉塞感」にウンザリしていた。
何も決められない政治。
一向に良くならない世の中。
世襲議員のジジイたちがふんぞり返り、
大企業のジジイたちがふんぞり返りっていた。
何も変えられない。
世の中、
日本の病根がわかっているにもかかわらず、
何も変えられない。
何も決められない。
意味のない国会。
意味のない会議。
会議のための会議、会議、会議、会議・・・・
何も決められない。
何も進まない。
・・・・だが、
ボクたちは違う。
全ては「スピード」だ。
ダイナミズムだ。
良いと思ったものは、グダグダ言わずに実行する。
トライアンドエラー。
走りながら考えろ。
軌道修正を恐れるな。
考えるだけ、
答えを出さない会議なんぞ時間の無駄でしかない。
そもそも、
会議室で考えても・・・・無限のリスクを論ったところで意味はない。
やってみれば答えは出る。
出てきた答えに合わせて、軌道修正すればいい。
この日本をダメにしたジジイたちのようにはなるな!!!
走れ!
全ては走りながら考えろ!!!
そうやって、会社を、組織を動かしてきた。
先輩企業からの出資。
部下に、契約の細部を任せ、
自分がやるべき、
地方営業所の立ち上げに走り回っていた。
ところが、
すで、
プロジェクトが走り出して3ヵ月。
未だ、契約が締結していなかった。
契約。
ウチの事務方、弁護士。
先輩の会社の事務方、弁護士。
・・・・そこに成海も入っている。
そいつらが会議を重ねていた。
ボクと先輩は、完全に部下に、それぞれの担当者に任せていた。
先輩からの出資。
先輩、成海、そしてボク。
意思は確認している。
趣旨も確認している。
あとは、
「法的」に、
問題のない「契約書」という書式に落とし込むだけだ。
これから、「株式公開」が待っている。
万が一にも法的不備があってはならない。
ボクの感覚では・・・・おそらく、先輩にとってもだろうけど、
「法的」に完璧な、
契約書という「清書」を任せた。
その程度の認識だったと思う。
だから、
互いに会議の現場に出ることはなかった。
全てを成海に任せていた。
そもそもの「絵」を描いた張本人は成海だ。
下手に、ボクたちが介入したほうが、いろいろ弊害がでるだろうという判断でもあった。
ウチの弁護士。
知り合ったのは、
なんだかの、ベンチャー企業の勉強会だった。
そこで、スピーカー、壇上の人となっていたのが、その弁護士だった。
世の中は、大企業主体だ。
ベンチャーは立場が弱い。
ベンチャーが大企業を向こうに回しての戦い方。
弱者が強者と伍しての戦い方。
そんなテーマだった。
徹底的に、弱者に、弱小ベンチャーに寄り添っての闘う姿勢に感銘を受けた。
ウチには、顧問弁護士がいなかった。
何より、
これまで、「トラブル」というものを抱えたことがなかった。
しかし、
どんどん会社の規模は大きくなっていく。
顧問弁護士の必要性を感じていた。
・・・・ってことから、顧問になっていただいた。
「親子上場プロジェクト」
「親会社からの出資」
ボクは、日本各地の営業所の立ち上げがひと段落した。
すでに、部下に後のことを任せた。
走り出してから4ヵ月が経っていた。
「どうなってるんだ?」
ウチの担当事務方に聞いた。
「双方の弁護士が、権利を主張して平行線となっています」
・・・・・はぁ????
ボクはポッカ~~~~ンと口を開けてフリーズしてしまった・・・
腹を据えて、詳細を聞く。
そもそもの問題点。
ウチが先輩の会社を出た経緯が尾を引いていた。
ウチが先輩の会社を出たのは・・・・
ボク、先輩の心情はともかくとして、
傍から見れば、
成海たち、ファンドのやりかたに反旗を翻したボクたちが、
会社を出た。
そんなふうな見え方になっていた。
双方の社員にとっては、
特に末端の社員にとっては、
喧嘩別れのようになっていた。
物事には「盛った」エピソードがつきまとう。
・・・・・にもかかわらず、
出て行った子会社が、親会社に「出資」を求めた。
つまりは、
「助けてくれ」と泣きついてきた。
・・・・これが、先輩の会社の担当者の心情だった。・・・・らしい。
で、
ウチの担当者は、「真逆」の解釈をしていた。
ウチが出て行ったことで、困った親会社が、
なんとか、戻ってほしいと懇願してきた。・・・・その意味の「出資」だ。
その隠れた意図は、
・・・・今度は、「資本」をガッチリ抑え、経営権をガッチリ握ってやる!!
二度と逆らえないようにしてやる!!
「ボタンの掛け違い」
とはこのことだった。
お互いが、
「懇願された」
そう思っているために、
双方が「強気」の条件を提示していた。
お互いが、
「懇願している」
「求めている」
のは相手だと思っているために、譲歩する気はなかった。
・・・・そりゃ、
話は「平行線」をたどるはずだった。
違う。
話は、
趣旨は、
単なる、
「法的に問題のない契約書の作成」だ。
・・・・・こりゃ、どうしたもんか・・・
それでも、
まぁ、笑ってすんではいた。
楽観視はしていた。
まずは、
先輩とボク、成海とで意思確認はできている。
ボクは、顧問弁護士に話の趣旨は伝えている・・・そのうえで依頼はしている。
くどいが、
ボクは、
顧問弁護士には、話の「趣旨」はちゃんと伝えていた。
・・・それに、
会議の席上には成海が居る。
話の先頭に立っているのは、双方ともに弁護士だ。
双方が、
我々、観客に見せるための、
弁護士としての「鍔迫り合い」を演じているんだろうと思った。
よっ!!
流石、弁護士!
そういう知恵があるのか・・・・感服仕った。
そう感嘆させるための、
「見せ場」を演じているんだろうと思った。
とりあえずの「鍔迫り合い」が終われば、
落ち着くところに落ち着くだろうとは思っていた。
・・・・いいから、
「会議は踊る」じゃねーんだ。
よけーな仕事してねーで、
さっさと「契約書」進めろ!!