「業務提携」
相手先社長との打ち合わせの最中。
相手の役員との顔合わせの当日。
その日に、3度目の交通事故にあった。
すぐにタクシーが止まる。
運転手が降りていった。
相手運転手と話をしている姿が後部の窓から見えた。
タクシーが左折。
後ろにいた車が、それを避けようと車線を変えたときにぶつかったって事故だった。
え?
って事故だ。
前に見えてるものにぶつかる。
免許持ってるのかって事故だ。
そうなんだ・・・・
ボクにふりかかってくる事故。
全てが、
相手が「免許持ってるのか?」って事故だった。
それは、
この時の3回の事故。
そして、去年起こった3回の事故も同じだ。
・・・・この時。
ここへきて、
全ての出来事に、「意思がある」・・・・そう確証した。
1回目は、「出資」の重要会議の当日。
2回目は、銀行との重要会議の当日。
そして、
3回目は、
「業務提携」
その相手役員との重要な顔合わせの当日だった。
なんとしてでも、阻止してやる。
貴様の人生に、「成功」の二文字は与えない。
絶対に叩き潰してやる。
お前ら一族を、ことごとく地獄に叩き落してやる。
亡き者にしてやる!!
悪魔か死神かはわからないが、
そんな意思・・・・「怨念」のようなものを感じた。
この「3回」で、
ボク自身に、
何者かの「悪意」が憑りついてるのを、はっきりと悟った。
「今、警察を呼びましたので・・・お忙しいところを申し訳ありませんが・・・・」
警察を呼んだので、しばらく待ってほしいと、運転手から告げられた。
・・・・ここから、現場検証とかが始まるのか・・・・
また、2時間・・・3時間か・・・
まぁ、怪我がなかったのが幸いか・・・・
「身体、大丈夫?」
隣に座る社長が言った。
・・・・ええ・・・はい、大丈夫ですけど・・・
事故は、派手な音がした。
しかし、
後ろの車が、車線を変えようとして、
変えきれずに、
車体を擦り付けるようにぶつかっていった、そんな事故だった。
車はキズ、へこんでいるだろうけど、
乗ってる人間には、それほどの衝撃はなかった。
少なくとも、
首が大きく振られるとか、
そういったことはなかった。
社長が降りていく。
タクシーの運転手と話をしている。
ドアが開く。
「行くよ」
怪我がない以上、
この事故で、ボクたちの方から、「何ら」補償を求めることはしない。
だから、
立ち去らせてもらう。
社長がそう決着をつけたんだった。
ボクたちは、
通りがかったタクシーに乗り込んだ。
無事に、
役員たちとの顔合わせには間に合った。
冒頭で、事故の件が、
絶妙な「掴み」という話題になった。
顔合わせは問題なく終了した。
こうして、
ウチは、この会社に助けられたんだった。
ひとまずの落としどころが決まったんだった。
・・・・しかし、「根本」の問題は何も解決していない。
根本の借金問題は、
解決の糸口さえ見えていなかった。