「今度は、手を繋いで桜を見たい・・・」
この言葉が、
「この後も一緒にいたい・・・・」
「この後も一緒にいてください」
告白の言葉だった。
受け入れられて、
お互いに気持ちを受け入れて、「ふたり」の日々が始まった。
一度、身体を重ねた後だ。
お互いの気持ちを強く確認した後だ。
「愛してる」
もう気持ちを全く隠さなかった。
毎日毎日・・・・
何度も何度も、
「愛してる」
メールが行き来した。
「手を繋いで桜を見たい・・・・」
初めて会ったのが、4月。
すでに、桜は咲いていた。
約束通り、一緒に桜を見るのであれば、すぐにでも会わなければならなかった。
・・・・しかし、会えない。
日程が決められないのだった。
・・・確かに、
「会う」
そうなれば大変だ。
日常生活。
なかなか、「1日空ける」というのは大変なことだ。
まず、
最も大変だったのは、
「旦那さんが休み」
日にちのことだった。
彼女の旦那さんは、休みが不定期だった。
週休二日とはなっていたけど、
「土日」と決まっているわけじゃない。
むしろ、土日は休めない。
だから、平日のどこか、「水曜日」と、「金曜日」とか、
任意の2日間を休日にする、そんな感じだった。
だから、
毎週、曜日が決まっていない。
・・・・不定期ってことは、
直前に決まるってことが多かった。
「今週は、水曜日と金曜日休みだから」
・・・・この情報が、なかなか出てこなかった。
まさか、
旦那さんの休みの日に、
1日家を空けるってわけにはいかない。
・・・・彼女は専業主婦だったしな。
・・・・これ、
たぶん、
旦那さんは、
「怪しんでた」
すでに、会う前、
ブログで出会ったときから、
旦那さんは、
「怪しんでた」
当時は・・・・
ラインは当然として、
メールアドレスの交換もしていなかった。
連絡手段は、
ブログのメッセージ機能だった。
そして、
何より、
一番多かったのは、
ピグのチャット機能だったんだよな。
「チャット」だから、リアルタイムで会話ができる。
電話できないふたりにとって、一番のツールだったんだよな。
出会って・・・
毎日、夢中になって「チャット」で話していたんだよな・・・
1時間・・・・多ければ3時間とか・・・
・・・・ということは、
ボクもそうだったけど、
彼女は、PCの前に座りっぱなしってことが増えていた。
旦那さんも、彼女がブログをやっていることは知っている・・・・・子供さんは当然として、旦那さん自身もブログに登場していたしな。
・・・・だけど、
あまりに、夢中になりすぎている。
それで、彼女自身も色々言われたらしいし、
旦那さんは、彼女のお兄さんにも言ってるんだよな。
「ブログばっかりやってる」
それで、お兄ちゃんにも注意されていた。
旦那さんのスケジュールがなかなか出ない。
休みの日が、なかなかわからない。
ワザとだと思った。
・・・・前はさ、
以前はさ、
けっこー、先んじて休みを伝えてたらしいんだよな。
そりゃ、そうだよ。
旦那さんは、事務方の人だったけど、
言ってみれば、
「シフト」みたいなものだから、
1ヶ月前。
スケジュールを組むんだと思うもんな。
「来月はさ・・・・ぜんぶ、水・金曜日が休みね・・・・いつも通りだな」
ってな感じだった。
それが、
全然、教えてくれなくなった。
・・・・あきらかに、
わざとだと思った。
明らかに、旦那さんは気づいていたんだろうな・・・・・
旦那さんの休みは、なかなか決まらない。
・・・・だからといって聞くわけにもいかない。
「休みいつなの??」
「なぜ?今まで聞いてきたことなかったよな?」
「まだ決まらないの・・・・もう少し待って・・・・」
メールの度に彼女が言った。
・・・・そうかぁ・・・
とは思う。
・・・けど、
じつは、
ボクと会うのを避けてるんじゃないか・・・・
そうも思うようになっていく。
あまりに、
「もう少し待って・・・・」
言われ続ければ、疑心暗鬼になっていく。
会ってしまった。
一緒にいたいと言った。
・・・しかし、
冷静に考えてみれば、
やっぱりいけないことだ・・・・・
止めたほうがいい・・・・
・・・・そう考えても不思議はない。
彼女は、
地元名士、御曹司の「奥様」だしな・・・・
冷静に考えれば、
「止めなければ・・・」
そう、思ったところで無理はない。
「もう少し待って・・・」
会う日程は、なかなか決まらない。
ボクは、少し強引に日程を決めた。
旦那さんの休みが決まらない・・・・
しかし、
それは、
「最終的に」ってことで、
だいたいは、毎月、同じ曜日になっていた。
だから、その曜日を避けて、
彼女に会いに行く日程を決めた。
・・・・もし、
もし、
万いち、
その日が、旦那さんの休みに当たってしまったなら・・・・ボクは、旦那さんがその手を打ってくることも考えていた。
・・・・その時は、会えなくてかまわない。
そう言って、
新幹線の予約、
ホテルを予約してしまったんだった。
・・・・「会いたい」
それは、ボクだけじゃないのか・・・
そんな風に思うようになっていた。
アルファポリス。
「崩壊の街」ボクは不倫に落ちた。