あれ?・・私寝ているのかしら?
ふわふわと揺れて気持ちがいい・・身体に力が入らない・・。
あ・・・この香・・・
クス・・・敦賀さんの香りだ・・・。
夢見心地にキョーコは力の入らない身体で蓮によりかかった。
どこに行くんだろう?
あぁ~このまま眠っていたい・・。
「キョーコ?・・朝だよ・・起きて・・。」
ふふ、私・・この声大好き・・・。
「ん?」
キョーコは目を覚ますとあたりを見回した。自分の部屋だった・・。
「私・・・今・・なんかとんでもない夢を見ていた気がするわ!」
そう言ってキョーコは頭を振り払って時計を見た。
「いやぁ!!!!今日は終業式!!!」
もうダッシュで着替えをすませると、ごはんも食べずにだるまやから出て行った。
「行ってきます!」
テスト勉強の疲れが出たのか、ぐっすりと眠ってしまい起きられなかった。
「ふぅ~まさか今学期最後の日を遅刻するなんて・・・。」
自転車であわてて、校門を通り過ぎる。
何とか終業式には間に合った。だが、まさか曲がったその先に人がいるとは思わず、キョーコは急ブレーキとともに自転車を投げ出した。
「いったぁ~~~」
人にぶつかるよりは良いと思ってとった行動は、かなりの捨て身の態勢だった。自分は右側に倒れるように自転車から飛び降り、その自転車は左へ放り投げた。
間一髪のところで、目の前にいた人にぶつからずに済んだが・・・。
「ご、ごめんなさい・・・その・・大丈夫でした?」
どう見てもキョーコの方が大きな怪我をしていた。膝から下が擦り剥け痛々しい。
「ご、ごめん・・俺の方がぼっとしていたのに・・まさか・女の子に助けられるなんて・・。大丈夫?」そう言って少年は手を差し伸べた。
「本当にごめんなさい・・・その・・ありがとう・・」
「いや、俺の方こそ・・あれ?京子・・・さん?」
少年は少し驚いた顔でそんなことを言った。
「あ、はい・・・。」
「はじめまして、俺、普通科の五十嵐って言います。」
「はぁ~・・・」
普通科の人と話をするのはこれが初めてだった。
「その・・・すごい運動神経だね・・びっくりしたよ・・実は兄貴がスタントマンの仕事をしていて・・確か・・京子さんの出ているDark moonのカースタントをするって言ってたいから、一度くらいは会っているかもね・・その兄を思い出したよ。」
そう言ってクスクス笑いながら五十嵐と名乗った少年はキョーコの運動神経を評価し、自分の兄の話をした。
「あ・・えぇ~と・・五十嵐さん。あ・・お会いしました。その方の弟さんなんですね?初めまして、京子です。じゃなかった・・最上キョーコと申します。」
「あ・・本名もキョーコって言うんだ・・。これからもよろしくね、キョーコちゃん・・」
「え・・あ、はい。」
人懐っこい犬の様な笑顔にキョーコもつられて笑っていた。
「俺2年A組にいるから・・キョーコちゃんは・・芸能クラスだよね?」
「あ・・はい・・・」
「とりあえず、保健室に行こうか?・・せっかく終業式に間に合ったのに、保健室行になちゃったけど・・・」
敦賀さんを見慣れているせいか、彼も背が高いけど、そう感じなかった。それに年の近い男の人と話をする機会がなかったからか、なぜか少しドキドキした。