・・・まさか蓮の奴が、そんなことを言うとは・・
ま、気持ちも分からないでもないな・・
キョーコちゃん本当に良い娘だもんな・・


社はクスクスと笑いながら、営業部のキョーコの元へ向かった。
1時間前に社長室の椅子でぐったりとした蓮は、数分前に目を覚まし何とか自力で部屋まで上がると言って別れてきた。
今頃部屋で寝ているはずなんだが、またソファーで寝ているかもしれない。


何か作ってもらうように依頼をしようとキョーコの元に向かっているが、そこでふと社は我に返った。


あれ?
・・契約内容的にこの時間帯は蓮の面倒みる必要ないよな・・・・
会社と契約しているんだから・・
別料金か?


そんなことを考えているとあっという間に営業部に着いてしまった。


「・・さん・・社さん?・・何か考え事ですか?」


「うわぁ・・キョーコちゃん・・いや・・ちょっといまキョーコちゃんに用事があったんだけど・・時間外な上に・・依頼内容が・・」
そう言って思ったことを慌てて話す社は困った顔をしてキョーコを見つめた。
そうするとキョーコが悪戯な笑みを見せてクスリと笑ったかと思うと、表情が一変してナツの顔になった。


「クス、・・ユキヒトさんのお願いだったら・・私・・叶えてあげられると思うわ?」
そういってキョーコは人差し指を唇に当て、小首を傾げて妖艶に微笑む。
小声で囁かれてさらに新密な雰囲気に社はドキリとした。


「えっ、あぁああ・・えぇっと・・そ、そ、それじゃ無理じゃなかったらお願いしても良いかな?」


「もちろんよ?」
その色気たっぷりの表情で話さないで欲しいと思いながら、何とか要件を言った。


「実は、蓮が熱を出してね・・薬を飲ませたいんだけど、何か食べさせないといけないと思って・・今から部屋に行って簡単に何か作ってもらえないかな?」


「・・その・・他の人じゃダメなんでしょうか?」


「えっ?」
まさかそんな答えが返ってくるとは思わず社は声を上げた。


誰もが喜んで行きたいと切望する蓮の部屋なのに
それをあっさりと断っただけでなく、なぜそんな困った表情をするのだろう




『社さんの彼女じゃないんですね・・・・よかった・・』


せっかく恋を自覚した蓮に、新たな課題ができたことに社は苦笑した。