妖艶なキョーコの雰囲気に焦り、まくしたてるように説明をすると、困った顔をしたキョーコが他の人ではダメなのかと訊きかえしたことに社はさらにパニックに近い状況になった。
そんなセリフを言われるとは思わず、何を答えればよいのか慌てふためいているとキョーコが眉間に皺をよせ、さらに困った顔をした。
「社さん・・その・・私が嫌なんじゃなくて、敦賀さんが嫌だと思うんです。・・ですから・・もし他の方がいらっしゃるようだったら・・」
キョーコの言ったことは理解できたはずなのだが・・。
どうしてそんな答えが出てきたのかわからず、社は動揺しすぎて自分でも何を説明したらよいのか、何を聞いたら良いのかわからず頭に思いついた順に言葉にした。
「えっと・・それって蓮が言ったの?・・キョーコちゃんに?・・なんで?・・どうしてそう思ったの?」
「あぁあの・・社さん?・・・・」
急に落ち着きなく慌てだした社にキョーコは落ち着くように社の肩に手を置いた。
「ご、ごめん・・ちょっと驚いて・・蓮がキョーコちゃんを嫌いなんてことはないよ・・」
むしろその反対なんだけど・・
心の中でそんなことをつぶやきながら社はチラリとキョーコに視線を向ける。
「そ、そうですか?・・でも先日お会いした時に私でもナツでも敦賀さんは『私』が苦手ですよね?とお伝えしたところ、とても驚いた顔をした後に無表情になって・・・・」
しょんぼりとした顔をしたキョーコが上目づかいに社を見つめた。
その可愛らしい表情に社はゴクリと喉を鳴らした。
・・まったくキョーコちゃんは色々な顔をもっているな
何回ドキッとさせられるのか・・・・
蓮じゃなくても惚れそうだよ・・
「そっか・・でも、それはキョーコちゃんの言ったことに驚いただけで、嫌いなわけじゃないと思うよ?キョーコちゃんの仕事に対する姿勢も褒めていたし・・」
「・・でもそれは事務処理をしているときの私で・・・家政婦の様なこの仕事にはご理解いただけないみたいで・・その一度口論に・・・・いえ、口論と言うほどではないのですが・・・・」
何を言っても裏目になりそうなこの状況に社は小さなため息をついた。
いまどき小学生の男の子だってもう少しまともにアピールするんじゃないのか?
まったく・・
先が思いやられると思いながら、社は何とかキョーコを蓮の部屋に向かわせた。