鈴の音の様な心地よい声が俺の名前を呼んでいる気がして瞳を開こうとした。それなのにやけに瞼が重く、それだけではなく思うように身体を動かすこともできなかった。


早く起きないと、そう思うのになぜこんなにも自由がきかないのだろう。


やっとの思いで開いた瞳の先には、怪訝な表情をつくっている彼女がじっと見つめていた。夢くらい俺に微笑んでくれても良いのに・・・・


そんなことを思っていると彼女が口を開き、俺はそれをボーっと見ていた。


「ここで眠ると風邪をひきますので・・起きてください」
彼女に見つめられ、心に喜びが広がる。
夢だと思って手を伸ばしたいのに、その手は自分のものではないようにまったく動かすことが出来なかった。


夢でなければ良いのに・・
そう思って発した声は、ひどく枯れていて自分自身で笑いそうになった。


「・・ぅん?・・・・あれ?・・・・なぜ君が・・ここに?」


彼女が何かを話しているのに、その声が届かない。
いつの間にかかけられた毛布の温もりが彼女の温もりのようで、自然と微笑んでいた。


・・あぁ・・彼女に触れたい・・
何もしないから・・


ただ彼女を抱きしめてこの腕の中に閉じこめてしまいたかった。


立ち上がろうと身体を動かすのにまるでひどい筋肉痛のようにぎくしゃくとした動きになる。彼女が手を差し伸べてくれたことに迷うことなくその手を取った。


ただ、一言言いたいのに言葉を発するのも億劫だった。


あぁ、どうしたら伝わるだろう・・
でもその前にこの夢の中の彼女にお礼を言わなければならない


「・・ありがとう・・迷惑かけたね・・」


夢なら・・・どうか・・覚めないでほしい・・