天井を見上げながら優しく微笑むと蓮は、さっきまで腕の中にいたキョーコの温もりを思い出していた。
いままで女性を抱きしめてこれほど胸が苦しくなったことがあっただろうか・・・・
宙を掴んで自分の手を見つめながら、手放してしまったキョーコを思い再び優しい笑顔をつくる。
・・このままこの腕の中に閉じ込めてしまいたい。
ズキリと痛む心は、彼女の温もりが離れてしまった痛みであると気が付くと蓮は苦笑した。
「・・・・そうか・・今までの」
今まで付き合っていた女性の気持ちが今頃になってわかるなんて・・
『蓮、あなたが近くにいないと息を吸うのさえつらいわ』
俺はその意味を頭では理解していたが、いざ現実に自分に降りかかると本当に息を吸うのさえ辛かった。
彼女に会いたくて仕方ない・・・・
たった5分前まで一緒にいたのに、すでに彼女が恋しいなんて
『蓮・・このまま時が止まればいいのに・・』
何度も言われたこのセリフも、やはり実際に経験するのと頭で考えるのではその言葉の重みが全く違っていた。
「恋とは・・なんて恐ろしい病気なんだ・・」
俺は彼女なしでやっていかれるのか・・
いや、それよりも・・彼女に恋人が出来てしまったら・・
そんなことを考えた瞬間恐ろしいほどの痛みが胸に走った。
「クッ・・・・恋は本当に胸が痛むんだな・・・・」
冷静に自分を分析しながらも、その片隅でキョーコを思い浮かべていると不思議と優しい眠りが訪れた。
『お休み蓮・・・・愛しているわ』
今までの彼女たちがそう言ってくれたように、彼女もいつか言ってくれるだろうか?
そんなことを夢見心地に蓮はスヤスヤと眠りに落ちた。